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番外編 想い出の宝箱〜ヴァロンside〜
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しおりを挟む全く、馬鹿が付く位お人好しなギル。
「……で、何見てたんだよ?」
俺はそう言葉を発しながら、ギルがさっきまで見ていたらしき物に視線を向ける。
そこにあったのは、小さな宝石箱。
綺麗な細工と装飾されていて、オルゴールにもなっているようだった。
「あ、サヤさん……。
ぼ、僕の奥さんがね!もうすぐ誕生日なんだ!」
俺の問い掛けに、ギルは顔を真っ赤にしながら答える。
幸せそうな笑顔。
そんなギルを見て、”また惚気か!”と思いつつも悪い気はしなかった。
俺は、きっとギルが羨ましかったんだと思う。
でも、そんな気持ちを悟られたくない俺はぶっきら棒な態度で接した。
「ふ~ん、ならさっさと買えよ。それに決めてんだろ?」
何気ない一言。
好きな女にプレゼントを選んだ事も、買った事もない。
夢の配達人白金バッジの俺は、欲しい物は何でも買えた。
だから、俺にはギルの気持ちや事情が分からなくて……。
俺の言葉に一瞬表情を曇らせ、苦笑いのような笑みを浮かべたギルに疑問を抱く。
「ん~……。
今日は、やめておくよ。持ち合わせがないからね!」
「!……っ」
”持ち合わせがないから”……。
そう言って宝石箱を切なそうにチラッと見て、その場を離れたギル。
その姿に……。
俺はなんて馬鹿な事を言ったのだろう、と。
酷い事を言ってしまったのだろう、と気付く。
ギルが見ていた宝石箱は、俺からしたらたった一回の報酬でも何十個と買える品物。
けれど、銀バッジでこれといって指名依頼のないギルには……とても高価な品物だったのだ。
自分が口にしてしまった失言に気付きながらも、謝れば余計にギルを傷付けてしまうと思った俺は、何も言えないままギルの後に続いて店を出た。
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