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番外編 想い出の宝箱〜ヴァロンside〜

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〈回想〉
【ヴァロン18歳/港街の繁華街】

白金バッジの夢の配達人として忙しく世界中を飛び回る俺は、アジトである港街の隠れ家に滞在する事は滅多になくなっていた。
大体一つの仕事を終えたらマスターやシュウに報告して、次の仕事を引き受けてすぐに飛び出す。

そんな生活が続くうちに、同僚達とはすっかりすれ違い。
元々あまり絡む事もなかったが、挨拶すら交わす事も少なくなっていった。

……。

ある日。
繁華街のある店のショーウィンドウ越しに見慣れた姿を発見。前屈みになって、真剣にある品物を眺めていた。


「おい、ギル。何やってんだよ?」

「!!っ……わぁッ?!」

店の中に入り俺が背後から声を掛けると、ギルバートは期待を裏切らない大きなリアクションで驚き声を上げる。


「びっ、びっくりした~。
……って!ヴァ、ヴァロン君?!ヴァロン君じゃないか!久し振りだな~!」

驚いて胸に手を当てていたと思ったら声を掛けたのが俺だと気付き、ギルは嬉しそうに微笑んで肩をバンバン叩いてくる。


コロコロと変わる表情と態度。
見ていて飽きない。
不思議と、ギルといる空間は心地良い。

多分俺はこの店で見掛けたのがギルではなくただの同僚ならば、声を掛けなかっただろう。
そう確信する自分の感情から、俺は自分がギルに好感をもっていると気付きながらも、当時は生意気でそれを素直に出すような人間じゃなかった。


「いてぇ、うぜぇ……。
てか、お前声でけぇんだよ」

この時俺は帽子とサングラスを掛けて、知り合いにしか分からない程度に変装していたが、ギルに名前を呼ばれたせいで他の客の視線がちらほら。
咄嗟にギルの腕を掴んで身体の方向を変えたから良かったものの、危うく正体がバレそうだった。


「あ!ご、ごめんね」

ギルはハッとして口を押さえると、小声で謝りながら申し訳なさそうに頭をかく。

いつもそう。こっちから声を掛けておきながらも不機嫌そうな俺の態度にもギルは怒らず、むしろ自らが謝るんだ。
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