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第5章(1)アカリside
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しおりを挟む思わず顔を向けてしまった私を見て、ヴァロンは「あれ?」と首を傾げる。
そして、思い出したように言った。
「貴女は、確か……。
あ、……アカリ、さん?」
「!……っ」
”アカリ”……。
ヴァロンに名前を呼ばれたら、より一層早くなる私の心臓。
瞳が逸らせなくて、どんどん顔に熱が高まる。
「あ、の……覚えて、ませんか?
少し前に、ミネアさんとこの港街の広場で……」
動揺してしまいそうな私にそう言って、先に目を逸らしたのはヴァロン。
どうしようって思ってた感情が、少しだけ冷静になる。
良かった。
あのまま見つめられていたら、私は今にも自分の気持ちがバレてしまいそうで怖かった。
そして、彼が言った”ミネアさん”って言葉。
その名前とズキッと痛んだ胸のおかげで、私は逃げずにその場に止まると、レジに戻って姿勢を正した。
「……はい。ホットミルク、ございます。
店内でお召し上がりですか?それともお持ち帰りになさいますか?」
いつも通りに接客。
子供達の為にも、”二度と彼に関与しない”というミネアさんとの約束は絶対に破れない。
バッタリ彼と会うなんて偶然。そう何回も続く訳はないのだから、今のこの場を何としても乗り切ろうと思った。
……でも。
笑顔で耐える私に、ヴァロンが予想外の事を言う。
「少し……。
っ……少し、だけ……お話出来ませんか?」
「……。えっ……?」
「あ、貴女と……お話がしたいんです」
「……」
呆然とする私の目の前で、口元を手で隠しながらカアァッと赤面する彼。
それは……。
照れた時の、ヴァロンのクセだった。
以前と変わらないその仕草が、また私の胸をキュッと掴むのだ。
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