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第5章(3)マオside

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おかしい。
雨音はまだ聴こえるのに?

振り向いて見上げると……。
そこに居たのは、絵本で読んだ月の国のお姫様のように愛らしい女性。

背中まで伸びた見事な黒髪と、僕を見つめる潤んだ黒い瞳。
少女にも大人にも見えるその人は、僕のすぐ傍に居るのに遠く感じた。


絵本の、月のお姫様と一緒。
普通の人には、身も心も触れ合う事なんて出来ない。
雲の上の人のような、存在。

その人は、ミネアさんがお友達だと言っていたアカリさんという女性だった。


彼女は僕にとって、変わった人だ。

初めて会った時は、僕に何か言いたげだった。
それなのに、さっきパン屋さんで再会した時は拒絶するように突き放された。

そして今。
何故彼女は僕に歩み寄り、傘を差し伸べているんだろうか?


会う度に違う態度の彼女。
でも、変わらないものが一つだけあった。

僕を見つめる、瞳。
何故、そんな瞳で僕を見るの?

今にも泣き出しそうな瞳の奥に隠された、君の心の想い。
僕はまだ、知らない。

……
…………。
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