夢の言葉と約束の翼(上)【続編⑤】

☆リサーナ☆

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第6章(1)アカリside

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「よかったら、預かりましょうか?」……。
そう尋ねると彼は驚いた表情をして、「本当ですか?!」って言って、私が頷くとホッとした表情を浮かべた。

優しい彼が、理由もなく子猫を放置したりするとは到底思えない。
何か理由が……。
例えば、まだこの後に仕事先に向かわなくてはいけないとか。何か理由があるのだと思った。

……。

そんな訳で、私は彼を自宅に招き入れた。
少し躊躇した様子だったが、彼は私に促されて玄関の扉を潜ると、控えめに「お邪魔します」と言った。

”お邪魔します”……。
その言葉が、また私を悲しくさせる。
この三年、”ただいま”と言う彼からの言葉を待っていた私には、辛い言葉だった。


胸の痛みを抑えながら私も玄関に入ると、待ってましたとばかりに「にゃ~っ」と鳴きながら、奥の部屋から猫リディアが廊下を駆けてきた。
その姿に、私は何とか癒されて微笑む。


「……猫ちゃん、飼ってらしたんですね」

屈んで猫リディアの頭を撫でる私に、背後に立っている彼が言った。
猫リディアは私に撫でられながらも、視線は彼を見上げている。

その様子を……。
警戒していない猫リディアを見て、思った。
彼が”ヴァロン”だと、分かっているんだって。

そして本当に賢いのか、警戒はしてないもののすり寄ってはいかない。
以前の様に、抱っこを強請って跳び付いたりはしない。
今の彼を、猫リディアは冷静に見ているように思えた。

だから私も、冷静になれた。


「リディア、ただいま~。
今日はね、新しいお友達を連れてきたの。仲良くしてくれる?」

そう声を掛けて立ち上がり、彼の持つダンボール箱の中から黒い子猫を取り出すと、猫リディアの近くの床にそっと降ろした。

新しい場所で不安なのか、「みぃ~みぃ~」鳴く子猫。

大丈夫かな?と、ドキドキしながら見守っていると……。
猫リディアはゆっくり歩み寄って行って、子猫の匂いを嗅いだ後。優しくその頭を舐め始めた。
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