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第6章(1)アカリside
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しおりを挟む「そこまでご迷惑はかけられません!
いくらミネアさんのお友達でも、それはっ……」
”ミネアさん”。
そう言った彼に、何だか私はムッとした。
いつの間にか、寂しいとか悲しいとか辛いとか……。そう言うのが薄れてきて、気持ちが変わっていたのだ。
ただ、今は彼と居られるこの瞬間を大切にしたくて……。
少しでも長く一緒に居られるよう、必死だったんだと思う。
”召し使いのバロン”である彼を、あの時引き止めたように。
「僕はもう失礼しますから。
あの、子猫を……よろしくお願いしま」
「ダメです!」
「!っ……え?」
「子猫を預かってほしいなら、私の言う事を聞いて下さい」
私はダンボール箱を床に置いて彼の腕を掴むと、強引に玄関から上げて廊下を歩き出す。
その行動に呆気にとられた彼は、私が引っ張った勢いで脱げた靴を見るように振り返りながら「あ、あのっ」と戸惑っている様子だ。
そんな彼を奥へ連れて行くと、脱衣所に連れ込んだ所で腕を放す。
ゆっくり見上げると、彼はとても困った表情だった。
ーーああ、抱き付いてしまいたい。
このまま全部気持ちをぶちまけて、唇を重ねて、「大好き」って言ってしまいたい。
溢れ出してしまいそうな、言葉と行動。
私は抑えて、微笑んだ。
「……こんな姿で貴方を帰したら、私がミネアに怒られてしまいます。
貴方が風邪を引いたら、きっと悲しむ。
……だから、ね?」
ミネアさんの名前を出して、彼を説得する。
こんな事をしてまで”彼と居たい”と思う私は異常かも知れないと思いながらも、このまま離れてしまうのは嫌だった。
これを逃したら、もう会えないかも知れない。
神様がいるのなら、もう少しだけ……。
私に彼との時間を下さいと、願っていた。
……
…………。
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