112 / 163
第6章(4)アカリside
4-3
しおりを挟む「ママ~!みてみて~!」
「きれいなの~!」
子供達の声にハッとして、二人が指差す空を見上げる。
するとそこには……。
七色に輝く虹が、私達を見下ろしていた。
「……リディア、さん」
空に架かる美しい光を瞳に映しながらその名を呟くと、私の中に蘇る想い出。
いや。
リディアさんが私に託した、想い。
彼女は、ヴァロンの傍に居たくても居られなかった。
”死”という自分ではどうしようも出来ない理由で別れ、彼を諦めたのだ。
”自分で出来ない事を、アカリちゃんに託しちゃってごめんなさい。
どうか、よろしくお願いします。”
リディアさんの願いを思い出して、自分は何をしているのだろう。と、目が醒める。
私も、ヴァロンも、まだ生きている。
この世界で、同じ空の下で、生きているのだ。
ほんの少し手を伸ばせば、手の届くところに彼はいる。
せっかく生きてまた会えたのに、私がここで諦めてしまったら全てが終わってしまう。
遅過ぎる事なんてない。
何も行動を起こしていないうちから恐れて、諦めていては駄目なんだ。と……。
子供達の事を考えれば、不安が拭いきれないのは事実。
でも、私は決して一人ではないのだと。
ヴァロンと過ごした時間の中で築きあげた絆が……。
ううん。
何よりも彼の人徳が、私の力になって助けてくれる。
「……あれ?」
「もしかして、アカリ……さん?」
私を呼ぶ、声。
懐かしい声に向ける視線の先には、紺色の制服に身を包んだ金髪の姉弟ーー。
「レナ……っ。レイッ……」
再会した瞬間。
小さな力でも、集まればどんな強大な壁にもぶつかっていけるのだと……。
奇跡を起こせるのだと思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる