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第8章(2)アカリside
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持ってきたビニールシートの上に、作ってきたお弁当を広げる。
作りすぎかな?って思ったけど、マオさんが来てくれたから、念の為に全部持って来て良かった。
「わぁ~い!いただきまーす!」
食いしん坊のヒナタはパァッと表情を輝かせながら、一目散におむすびに手を伸ばし頬張る。
ヒカルは私がおしぼりで手を拭いてあげると、小さく「いただきます」を言ってもそもそと控え目に食べ始めた。
そして、マオさんはかと言うと……。
「?……マオさん。
どうぞ、遠慮しないで食べて下さいね?」
「!……あ、はいっ」
ビニールシートの上で正座して、じっと私の作ったお弁当を見つめていた。
渡したフォークを手に持ったまま、じっと。
「……もしかして、お腹空いてませんか?
それとも、嫌いな物がありましたか?」
以前の彼彼ならば、好き嫌いなく何でも美味しそうに食べてくれた。
しかし、もしかしたら今の彼には食べられない物があるのかも知れない。
だったら、私は知りたいと思った。
マオさんの事を、もっともっと知りたい。
そんな気持ちで見つめていると、彼は予想外の言葉を口にする。
「……ずっと、思ってたんです」
「え?」
「貴女の、手料理……。
また、食べたいなって、思ってました」
!……っ~~~。
マオさんの嬉しい言葉に不意を突かれて、私の胸はキュンキュンと締め付けられた。
しかもしかも、そういう事を天然というか、素直に言っちゃう純粋さ。
ーーいや。
彼が可愛いのは、前からだ。
意地悪そうに見えても、可愛かった。
……やっぱり、変わらないね。
込み上げる愛おしさで、堪らなく泣きたくなる。
突然会いに来てくれたり、素敵な言葉でこんなに幸せにしてくれる。
愛してる、って叫びたいよ。
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