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第5章(1)ホノカside
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しおりを挟むヴァロンさんの気持ちは痛い程分かる。
自覚症状が出てしまっても、手術をして例えその結果が良性であっても、その期間は仕事が出来ない。
ずっとずっと守ってきた、大切な白金バッジと夢の配達人としての地位。
今までの自分を支えてきた源と言っていい仕事。それを、失ってしまうのだ。
「それにさ。手術って、やるなら外国だよね?おまけに、俺って……。手術、難しいんじゃねぇかな?」
「!……それ、は。……」
私が詳しく口にする前に、察した様子のヴァロンさん。
そう。
手術をするなら、この地を離れて医療技術や施設の優れた外国で行う事が得策。
そして、1番問題なのは……手術に使う輸血。
ヴァロンさんの血液型は少し特殊で、親戚のいない彼にとって、全くの他人からそれを見つけ出すのはとても難題。
……でも。
だからと言って諦めてほしくないし、私自身も諦めたくない。
シュウさんや、アカリさんや、ヒナタちゃんの為だけじゃない。
私自身が、彼を心から救いたいと思った。
「大丈夫です。私も全力で力になります!
だから、一緒に頑張りましょう!」
この人を死なせたくない。と、私の心が強く叫んでいた。
私の言葉に、ヴァロンさんは返事をする代わりに視線を合わせて微笑んでくれると……。呟くように言った。
「……でもさ。俺で、良かったよ」
「!……え?」
その呟きに私が思わず聞き返すと、ヴァロンさんはとても優しい表情で話し続ける。
「ヒナが、最近掴まり立ちして歩くんだけどさ……。俺が反対側で待ってると、嬉しそうにこっちに来ようとして、手を放して歩こうとするのね?
でも、俺。”危ない!”って思って、ついつい自分から歩み寄って支えて、甘やかしちゃうんだ」
そう言ってヴァロンさんは、幸せそうに微笑っていた。
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