夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
22 / 185
第20章(4)マオside

4-1

しおりを挟む

「ふぅ、これでひと段落だ。
マオ君、新年の気分も味わえないままずっと付き合わせてすまなかったね。疲れただろう?」

「いえ、これくらい平気です。
何か僕に出来る事があれば何でもお申し付け下さい」

1月の半ばーー。
いつの間にか、新しい年になっていた。
でも新年だからと言って浸っている暇なんて全くなくて、僕はずっとハンク様に付いて仕事に励んでいた。
婿として、暫く働けないミネアさんの代わりに少しでも早くなれるように……。
アランの下で働くのを辞めて、会社も住む場所も移った。去年の12月、ミネアさんの妊娠をきっかけに変わり始めた僕の生活は、これからますます変わっていく事だろう。

先方の都合で急遽今日契約の話をする事になったのはかなり焦ったけど、上手くいって本当に良かった。


「うんうん、頼もしいな。
まるで以前のマオ君に戻ったみたいで嬉しいよ。これからもよろしく頼むね」

「っ……はい」

片付けをしている僕の肩をポンポンッと叩くと、上機嫌のハンク様は応接間を出て行った。
扉がパタンッと閉まりようやく一人きりになれた空間にホッとして、僕はため息を吐きながら叩かれた肩に触れた。


「やっぱり、相手から触れられた瞬間の感情を読み取らないようにするのは難しいな……」

突如僕の中に目覚めた、不思議な能力ちから
触れ合った瞬間にその時の相手の感情が分かるのは、上手く使えば便利だったが同時に不便な面もたくさんあった。

僕の一族には変わった能力ちからを持って生まれる人が稀にいるんだって、ディアスから聞いた。
でもその能力ちからは人それぞれで、たくさん持つ人もいれば一つしかない人もいる。強い人もいれば弱い人もいる……。謎で未知数な能力ちから

目覚めた当初は、触れ合えばその人物の全てが僕の意志とは関係なしに流れ込んできてしまって……。つまり、聞きたくない、知りたくもない事まで分かってしまって辛かった。
今では何とか、自分から触れる時は制御出来るようになったけど、相手から触れられた際の感情を防ぐのは難しい。
だから、さっきも分かってしまった。

『やれやれ、ようやく使えるようになってきたな。
これくらい熟してもらわなければ婿として困るわ』

肩を叩かれた瞬間、表面上は笑顔だったハンク様はそう思っていた。


「……もっともっと、頑張らなきゃ」

人の表面からは分からない内面を知られる事は傷付く事や辛い事も多かったけど、僕はこの能力ちからのお陰で仕事が出来るようになった。
相手が思ってる事、望みや願望、不安や不満。それが分かるだけで、話し合いや取り引きがとてもスムーズに行える。

そして、僕はこの能力ちからがあったから……ミネアさんの命を救う事が出来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―

柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。 しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。 「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」 屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え―― 「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。 「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」 愛なき結婚、冷遇される王妃。 それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。 ――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

処理中です...