夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

☆リサーナ☆

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第22章(3)スズカside

3-2

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「あ、スズカ。いたいた~!」

「お、奥様!お呼びでしたでしょうかっ?気が付かず、申し訳ありませんっ!」

私に手を振る奥様の姿に、サーッと血の気が引く。慌ててすぐさま奥様の元へ駆け寄ると、深々と頭を下げた。

しまったーー。
お部屋に設置されている使用人を呼ぶ際に使用する呼び鈴の説明を、私は怠ってしまっていたのだ。

奥様自ら自分の事などを捜させてせてしまうなんて、何と言う事だろう。
本当に勤めている年数が過ぎていくだけで、自分は初歩的なミスばかりだ。

そう心の中で焦って反省をする私は、見えていなかった。私を見付けた奥様が、とても嬉しそうな笑顔をしている事に……。

「あ、違う違う!
あのね、お茶の時間にしないかな~?って思って降りて来たの」

「!……お、お茶でございますね!すぐにご用意致しますので、どうぞお部屋でお待ち下さい!」

「あ、そうじゃなくて!
コレをね、みんなで食べたいなって思ったの」

そして奥様は、俯く私の目の前に四角いタッパーを差し出して……。パカッと蓋を開ける。

ふわっと香る甘い匂い。
中に入っていたのは、可愛らしい猫の形をしたクッキー。


「みんなに食べてほしくて作ってきたんだ!みんなで、一緒にお茶しよ~!」

「っ……」

顔を上げた私の瞳に映るのは、そのお言葉が嘘偽りないと感じる笑顔。
私達を味方に付けようという下心など全く感じない。ただ純粋に仲良くなりたいと思って下さっているのだ、と感じた。

しかし、使用人長は当然まだ奥様の真意を疑っている。なんとか納得して頂こうと、やんわりと対応し始めた。

「奥様、申し訳ありませんがこのお邸では我々にお茶の時間などはございません」

「!……え?そう、なんですか?」

「はい、我々はご主人様が組まれたスケジュール通り動く事が使命。どうぞお分かり下さい」

残念だけど、確かに使用人長の言う通りなのだ。
アラン様の留守中とは言え、1日のスケジュールを乱しそれが伝わってしまえば我々は罰を受け、最悪の場合解雇。
奥様の気持ちはとても嬉しいけれど、主人がアラン様である以上あの方が決めたルールに従わなければ。

奥様だって初対面でないのだから、アラン様がどんな方なのかご存知の筈。きっと納得して下さると思っていた。けれど……。
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