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(1)アランside

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相手が初心者だろうが構わない。
オレはオレのしたいように女に触れながら深い口付けを繰り返す。
されるがままにされ、その中で頑張って俺に応えようとしているのか時折感じる些細で無駄な仕草。馬鹿らしく思うが、それ以上に可愛いと感じる自分がいた。

今すぐに抱きたいと欲情して、この仕事部屋から自室までは扉一枚の距離だが、ベッドまで待てず女の身体を誘導して仕事机に座らせる。

「良い思い出を求めるなら、今すぐ逃げろ」

そう最終警告をしながらも、今更逃す気はなかった。
ネクタイを片手で緩めながら顔を覗き込むと、緊張や恥ずかしさでガチガチだと思っていた女が首を横に振って微笑った。そして答える。

「私は、何処にも行きません」

この女、こんな表情をする女だったかーー?
おかしな例えだが、まるで昔母親が自分に向けてくれた優しい表情に似ていた。
何故だか分からないが、その表情と言葉に惹きつけられる。

「……生意気だな。
なら、証明してみろ……」

全く男を知らない身体に一つ一つ教え込むように触れていくと、女は甘い声を上げ、時折視線を合わせると、瞳を潤ませて恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも……。その言葉通り、逃げようとはしなかった。
それどころか、細い腕で、小さな身体で、オレを抱き締めるようにぎゅっと抱いてくる。


まるで、もっと近くに、と訴えるようにーー。

最早止める理由なんて1ミリもない。
オレは仕事机の引き出しから取り出した避妊具を装着すると、熱く固くなった自身を女の濡れた中に押し込む。

「っあ……!ん……ッ、あ……ーーーっ!!」

最深部まで行き着くと、女は辛そうに表情を歪めていた。が、口付け、触れながら刺激を与えていくと、その表情も声も、また徐々に甘いものへと変わっていき、互いに昇り詰めていくのだった。

……
………不思議なもので、一回で満たされた。
今までどんな女を抱いても、何度絶頂に達しても物足りなさを感じていたのに……、……。

何をしてくれる訳じゃない。
オレがする行為を受け入れてくれているだけなのに……。それが、何よりも嬉しかった。

……
…………。
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