157 / 185
(1)アランside
1-5
しおりを挟む
***
しかし、翌朝ーー。
自室に付いている風呂でシャワー浴びながら、オレは昨晩の自分を思い返していた。
一晩経つと、何処を思い返しても昨夜は相当酔っていたとしか思えない。
寝ぼけてキスした事も、八つ当たりのような発言をした事も、身体を重ねた事も……。
今まで使用人に手を出した事がなかった訳じゃない。
だが、自分の醜態を曝け出して、しかもあんな処女を相手にしていまうなんて……とんだ失態だ。
女は抱いた後そのまま眠ってしまい、他の使用人達の目に付かぬよう仕方なく自分のベッドに運び寝かせた。今もまだ夢の中だろう。
目が覚めたら何か欲しい物でも聞き出して機嫌を取り、昨夜の事は内密に、無かった事にして穏便に済ませたい。
そんな風に思いながら、オレはシャワーを止めて風呂を出た。
バスタオルで簡単に髪と身体を拭いて、バスローブを着ると女が眠っているベッドへと足を運ぶ。
相当疲れているのか、女はまだ眠っていた。その寝顔を見ると、昨夜見せた母親のような表情はなく、ただのあどけない少女に映る。
やはり、気のせいかーー。
その表情を見てフッと苦笑いを溢した時、「んっ……」と小さい声を発した女が軽く寝返りを打ち、ゆっくりと目を開けた。
「やっと起きたか」
「!……っ、……え?……アラン、様?」
その表情はまさに鳩が豆鉄砲を食ったよう。
声をかけると、女は朧げにしていた視線をハッとしてオレに向け、驚いたように目を見開いて見つめる。
そんな様子から、オレはこの女も今この状況に"なんて事をしてしまったのだろう"と後悔しているに違いないと思った。
それならば好都合。
互いにひと時の夢を見たと思って、忘れられる。
ホッして今後の対処を口にしようと思った。
けれど、…………。
「ーー可愛い」
「!……は?」
「前髪、下ろしていらっしゃる姿。初めて拝見致しました」
「……」
「あ!申し訳ございませんっ……。男性の方に可愛い、というのは褒め言葉ではございませんよね?
……けれど、私は……とても良いと、思います」
「……」
ーーこの女は、いきなり何を言っているんだ?
目の前で微笑む女に、オレは呆気に取られる。
目を覚ましたと思ったら、オレを見て可愛い、だと?
確かに普段顔を合わせるのは仕事に行く前と帰宅した際だから髪はしっかりとセットして、下ろしている状態は風呂上がりから眠って目を覚ますまでの数時間。
この俺の今の姿を知るものはかなりレアだとは思う。
だが、今っ?!
注目する事はそこではないだろうっ?
前言撤回かも知れない。
この女は想像以上にクセ者かも知れないと、オレは内心焦った。
しかし、翌朝ーー。
自室に付いている風呂でシャワー浴びながら、オレは昨晩の自分を思い返していた。
一晩経つと、何処を思い返しても昨夜は相当酔っていたとしか思えない。
寝ぼけてキスした事も、八つ当たりのような発言をした事も、身体を重ねた事も……。
今まで使用人に手を出した事がなかった訳じゃない。
だが、自分の醜態を曝け出して、しかもあんな処女を相手にしていまうなんて……とんだ失態だ。
女は抱いた後そのまま眠ってしまい、他の使用人達の目に付かぬよう仕方なく自分のベッドに運び寝かせた。今もまだ夢の中だろう。
目が覚めたら何か欲しい物でも聞き出して機嫌を取り、昨夜の事は内密に、無かった事にして穏便に済ませたい。
そんな風に思いながら、オレはシャワーを止めて風呂を出た。
バスタオルで簡単に髪と身体を拭いて、バスローブを着ると女が眠っているベッドへと足を運ぶ。
相当疲れているのか、女はまだ眠っていた。その寝顔を見ると、昨夜見せた母親のような表情はなく、ただのあどけない少女に映る。
やはり、気のせいかーー。
その表情を見てフッと苦笑いを溢した時、「んっ……」と小さい声を発した女が軽く寝返りを打ち、ゆっくりと目を開けた。
「やっと起きたか」
「!……っ、……え?……アラン、様?」
その表情はまさに鳩が豆鉄砲を食ったよう。
声をかけると、女は朧げにしていた視線をハッとしてオレに向け、驚いたように目を見開いて見つめる。
そんな様子から、オレはこの女も今この状況に"なんて事をしてしまったのだろう"と後悔しているに違いないと思った。
それならば好都合。
互いにひと時の夢を見たと思って、忘れられる。
ホッして今後の対処を口にしようと思った。
けれど、…………。
「ーー可愛い」
「!……は?」
「前髪、下ろしていらっしゃる姿。初めて拝見致しました」
「……」
「あ!申し訳ございませんっ……。男性の方に可愛い、というのは褒め言葉ではございませんよね?
……けれど、私は……とても良いと、思います」
「……」
ーーこの女は、いきなり何を言っているんだ?
目の前で微笑む女に、オレは呆気に取られる。
目を覚ましたと思ったら、オレを見て可愛い、だと?
確かに普段顔を合わせるのは仕事に行く前と帰宅した際だから髪はしっかりとセットして、下ろしている状態は風呂上がりから眠って目を覚ますまでの数時間。
この俺の今の姿を知るものはかなりレアだとは思う。
だが、今っ?!
注目する事はそこではないだろうっ?
前言撤回かも知れない。
この女は想像以上にクセ者かも知れないと、オレは内心焦った。
0
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる