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(1)アランside
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しおりを挟むここはやはり当初の作戦通り。
一晩オレの相手を務めた褒美を取らせて、この場を収めよう。
「……何か、欲しい物はあるか?」
「えっ?」
「一晩俺の相手を務めた褒美だ。何がいい」
「っ、……」
「金か?宝石か?ブランド品か?」
「……」
しかし。オレが言葉を投げかける度に、嬉しそうだった女から笑顔が消えた。
その様子が気になりつつも、これは自分が今まで相手にした女性に当たり前のようにしてきた行動。時にはこちらが言わずとも、向こうからあれこれ請求させる事もあった。それがオレにとっての男女の付き合いであり、間違っているなんて思わなかった。
だからオレには、この後女が言う言葉の意味をこの時は理解出来なかった。
「……何も、いりません」
「!……は?」
「何も頂かなくて、大丈夫です。
私の欲しい物は……私の手には、入らないものだと存じておりますから」
先程の笑顔とは明らかに違う微笑みを浮かべて、女は言った。
理解不能だ。
この女の欲しい物が、オレには与えられない程の物だと言うのか?
ある意味舐めているのか?と、目の前の女を生意気だと感じた。
「気に入らんな」
オレは女に歩み寄ると、顎を持って自分を見上げさせる。
よく見ると、その瞳は潤んでいて……。気丈な事は言ってはいるが、何かを隠しているように見えた。
「……何かはあるだろう?言え。じゃなきゃ俺の気がすまん」
思い通りにならない女の受け答えが気に入らない。それに面倒な事を避けたかったオレは、女の処女を奪った代わりに何かを求めてもらう方が楽だった。
自分の事しか考えていなかった、酷い男のオレ。
眉間にシワを寄せながら見つめていると、暫くしてようやく女が口を開く。
「……では。一つ、お願いしてもよろしいですか?」
「何だ?」
「このお邸では、私以外をご所望しないで下さい」
「……なに?」
「このお邸内でアラン様の夜のお供をする使用人は、私だけにして下さい……!」
またさっきとは違う強い瞳でオレを真っ直ぐ見つめ返して、女はそう訴えた。
その馬鹿げた要望にオレは再び呆気に取られる。
……だが、少し考えてそれは悪くないと思った。
初心者は鬱陶しいと思っていたが、好き勝手やりたい時は変に経験値のある女より扱いやすい。それに、抱いた後のあの満たされた感覚。身体の相性が良いというのはまさにこの事だろうと思った。
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