183 / 185
番外編 ミネアside
1-3
しおりを挟む「迷惑かけたく、ないの……」
「うん」
「日の当たる明るい賑やかな場所よりも、夜の闇を静かに生きたいと、望む人だったから……」
「うん」
「……。でも、貴方からしたら巻き込まれて散々だったわよね?」
「うん?」
妊娠が発覚した時、本当の父親ではないのに婚約者という立場だった為に「逆玉だ」とか「上手くやった男」って言いたいように言われて……。それなのに『家族になろう』って、ずっと寄り添ってくれた。
今思い出しても、彼の良心を自分の良いように利用していただけだ。
「本当に、ごめ……」
「ーー散々だった、なんて思った事。一度もねぇよ」
「っ、え……?」
「あの時の俺は俺なりに、自分で人生を選んで生きてた。その人生を散々だった、なんて思わないし、思いたくもない」
「っ……」
「大変だったか?って言われたら、そりゃ大変な時もあったけどさ。……レノアーノに会う為だったんだ、って思えたら、全部帳消しだ!」
謝ろうとした言葉を遮って、ヴァロンはそう言うと微笑った。
何よ、意地悪。せっかく素直に謝ってお礼を言おうと思ったのに、何も言えなくなっちゃうじゃない……。
彼の言動にそう思いながらも、本当は分かっている。これがヴァロンの優しさなんだって。
その彼の優しさに救われて、わたくしはいつだってわたくしで居られるの。
「何よ、本当の父親みたいな口調で言っちゃって……。
言っとくけど、貴方の息子の嫁にはあげないわよ?」
「そりゃ残念!」
わたくしの皮肉っぽい口調に微笑って、楽しく返してくれる姿が眩しい。
本当に、本当に……。
わたくしは貴方が大好きだったわーー。
「……そうね。
でも、貴方にそっくりな男の子になら……嫁にあげてもいいわ」
心の底からそう思った。
これだけ自分に似ている娘。きっと性格も似ていて、意地っ張りで勝ち気な女の子へと成長するであろう。
そんな娘の相手がヴァロンのような男の子だったら、嫉妬してしまう程に羨ましくて……。でも、とても幸せで嬉しい未来だと感じた。
「アカリさんにも伝えて?
『ヴァロンにそっくりな男の子を産みなさい。わたくしが、娘の婿にもらうから』って」
「ははっ、了解~。
……あ、でもさ。それはせっかくなら直接お前からアカリに言えよ」
「え?」
「アカリも迷惑じゃなかったら今度お前に会いたいって言ってたし、ヒナタとヒカルも赤ちゃん見たいって騒いでんだよな」
……驚いた。
だって私は、以前アカリさんに酷い態度を取った。"マオ様はわたくしのものよ"と言わんばかりに、戦線布告の態度を取って、彼女を悲しませて、苦しませて……。
わたくしの顔なんて、もう見たくないだろうと思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる