婚約破棄されたはずなのに、元婚約者が溺愛してくるのですが

ルイス

文字の大きさ
2 / 12

2話 厳しい精神状態

 アルヴィド・マーカス侯爵から婚約破棄を告げられてから数週間が経過した。私はその間、基本的な仕事をこなしつつも、心は晴れずに生活をしていた。何といえばいいのだろうか……心が自分の中にないような、心ここにあらずといった感じかしら。

 人生を懸けようと覚悟して臨んだアルヴィド様との婚約……それがまさかの事態で破棄になってしまったのだから。お父様やお母様、お兄様、使用人の人々、二人の妹は私を一切責めることはなかったけれど……それが逆に、私にはプレッシャーになっていた。気を使ってくれるのはとても嬉しいのだけれど……サントハイム伯爵家に汚点を残してしまったという罪悪感だ。


 あれから数週間……私はなるべく表には出さないでいたけれど、心の奥底では凄まじい悲しみ、葛藤があった。気を抜けばすぐに精神を病んでしまうのではないかと感じるくらいのものだ。でも、サントハイム伯爵家の長女と生まれたからにはこのくらいのことで、精神を病んではいられなかった。

 私は大丈夫だ……そう自分に言い聞かせて、書類仕事などに励んでいた。アルヴィド様のことを忘れる意味合いもあったりするけれど。




------------------------------------




「大丈夫か、シルヴィア……無理をしているように見えるが。今度の舞踏会も不参加で問題ないのだぞ?」

「ユグド兄さま、お気遣い本当にありがとうございます……でも、私は大丈夫ですので」

「そうか……ならば、俺から言うことは何もないが……本当に大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫でございます、兄さま」

「ならよいのだが……シルヴィア、無理だけはするなよ? 妹のルルアとアミナが心配するからな」


 やはりユグド兄さまには嘘を吐き通すことは難しいか……本音を言えば、私は舞踏会に出られるコンデイションではない。サントハイム伯爵家の評判を落とさない為に、必死で参加しているようなものだ。長女として生まれたからにはそのくらいの責務は当然、のしかかってくるだろうし。

 まだ、10歳と13歳の妹たちに無理をさせたくはないという思いも強い。13歳のルルアは、舞踏会で他の貴族達とのパイプラインを作ることに躍起になっていたけれど……年齢的に考えれば、まだ2年くらい早いと言えるだろうか。私も本格的に他の貴族達との関係性を深めていったのは15歳の時だったし……そういう意味でも妹たちに無理はさせたくなかった。


「大丈夫です、ユグド兄さま。これは根拠のないことなのですが……今回の舞踏会では運命的な出会いをしそうな、そんな予感がするのです。出席しない手はないですわ」

「シルヴィア……わかった、俺はお前の気持ちを最優先に考えよう。少しでも安心できるように、多めの護衛を付けてやるさ」

「兄さま……ありがとうございます」


 ユグド兄さまのこういうところは尊敬出来るし、とても好きなところだった。5歳くらいの時は、ユグド兄さまと本気で結婚したいと思っていたくらいだったし。その後、血の繋がった兄妹では結婚出来ないと分かり、がっかりしたのを覚えている。

 とにかく、今度の舞踏会には出席した方が良いだろう……気分転換にもなるだろうしね。ユグド兄さまからの許可も出たことだし。

 ただ、私はこの時は気付いていなかった……舞踏会の出席は私の今後を担う上で、運命的なものになるということを……。
感想 23

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので田舎で静かに暮らすはずが、なぜか王太子に溺愛されています

ほーみ
恋愛
婚約破棄されたその日、世界の色が少しだけ薄くなった気がした。 「……以上をもって、君との婚約は解消とする」 静まり返った広間でそう告げたのは、かつての婚約者――第二王子レオナルドだった。彼の隣には、いつの間にかぴたりと寄り添うようになっていた令嬢がいる。周囲の貴族たちはざわめき、同情とも興味ともつかない視線が私に集まっていた。

「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました

富士山麓
恋愛
「君は優秀だが、王妃としては冷たい。正直に言えば――飾りとしては十分だった」 そう言って婚約者である王太子に公然と切り捨てられた、公爵令嬢アデルフィーナ。 さらに王太子は宣言する。 「王家は外部信用に頼らない」「王家が条文だ」と。 履行履歴も整えず、契約も軽視し、 新たな婚約者と共に“強い王家”を演出する王太子。 ――ですが。 契約は宣言では動きません。 信用は履歴の上にしか立ちません。 王命が止まり、出荷が止まり、資材が止まり、 やがて止まったのは王太子の未来でした。 自ら押した承認印が、 自らの継承権を奪うことになるとも知らずに。 公然侮辱から始まる、徹底的な強ザマァ。 救済なし。 やり直しなし。 契約通りに処理しただけですのに―― なぜか王太子が廃嫡されました。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

『「君の役目は妹で足りる」と婚約破棄されたので辺境へ去りましたが、滅びかけた王国より先に私の領地が大陸最強になっていました』

常陸之介寛浩📚️書籍・本能寺から始める
恋愛
あらすじ 王太子アルベルトの婚約者として、王都の政務と社交を陰から支えてきた公爵令嬢レティシア。 だが華やかで愛らしい妹エミリアに心を奪われた王太子は、公衆の面前で婚約破棄を宣言する。 「君の役目は妹で足りる」 その言葉に、レティシアは微笑んでうなずいた。 婚約者も、地位も、名誉も、王都での役目も――すべて妹に譲って、王国最北の荒れ果てた辺境領へ去る。 誰もが彼女の没落を信じた。 辺境は痩せた土地、尽きかけた鉱脈、荒れる街道、魔物被害、疲弊した民。 とても令嬢ひとりに立て直せる土地ではない。 ……はずだった。 だが、王都で“地味な婚約者”と蔑まれていた彼女こそ、財務、兵站、外交、治水、徴税、流通、貴族調整まで一手に回していた真の実務者だった。 水路を引き、街道を繋ぎ、鉱山を再生し、魔物を退け、辺境諸族と盟約を結ぶ。 やがて小さな辺境領は、富も軍も人も集まる巨大勢力へと変貌していく。 一方、レティシアを失った王都では、妹と元婚約者による“華やかな政治”が破綻を始めていた。 崩れる財政、乱れる社交、反発する諸侯、迫る凶作、忍び寄る隣国の影。 今さら「戻ってきてほしい」と言われても、もう遅い。 これは、 すべてを奪われたはずの令嬢が辺境から国を超える力を築き、 やがて滅びかけた王国と大陸の秩序そのものを塗り替えていく、 婚約破棄から始まる超大作ファンタジー。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

親友の恋を応援するたび、私は少しずつ失恋していた

ちょこまろ
恋愛
一番近いのに、恋人じゃない。 紗奈は、親友の颯太にずっと片想いしていた。 けれど颯太が好きになるのは、いつも紗奈ではない誰かだった。 彼女ができた日も。 恋愛相談をされた日も。 別れた夜に頼られた時も。 紗奈はずっと笑って、颯太の恋を応援してきた。 でも本当は、そのたびに少しずつ失恋していた。 文化祭前、颯太からまた恋愛相談をされた紗奈は、ついに親友でいることに限界を迎える。 これは、好きな人の一番近くにいた女の子が、親友のふりをやめて、自分の恋を始めるまでの物語。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。