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8話 制裁の開始 その2

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「ランドール・イクサバ参りました」

「イリス・サブラビッチ、同じく参りました……」


「ようこそお出でくださいました」


 元婚約者のランドールと、昨日、派手な喧嘩を繰り広げた相手イリス……ランドールはともかく、イリスはとても怯えている。私の顔を見るなりしかめっ面をしていたけれど。


 ランドールとイリスなんかに丁寧な挨拶をしてほしくはないけど、ここは礼儀とばかりにお父様がお辞儀をしている。


「イグリオ殿、この度はどうされたのかな? この私を呼びつけるとは……」


 あれ? 王子殿下のことはランドールは知らないのかしら? そっか、表向きはお父様が呼んだことになっているのね。イリスは事情を把握しているから無口になっているけれど、事情を知らないランドールは横柄な態度を取っているし。

 ちなみに兄上は奥で待機している。まずは、ランドールから直接言葉で話させる狙いがあるみたい。


「本題がどういうものかはご存知のはず。我が娘、アリシアとの婚約破棄についてになります」

「やはりそのことか」

「書簡などでは既に連絡をもらっておりました。しかし、とても納得いく回答は受けておりませぬ」

「随分と上からの物言いだなイグリオ殿。たかが伯爵家系にしては思い上がりも甚だしいぞ?」

「……ふっ、たかが伯爵と来ましたか」


「……」


 うわ……既にランドールは無事に帰ることができないのが決定してしまったような……でも、これも兄上たちの作戦なので、私は黙って見守ることにした。イリスが先ほどから無口なことを、少しは変に思わないのかしら?

 まあ、ランドールとイリスは別々に呼ばれているから、ここまで彼女の様子は見てないし仕方ないか。

「ところで、こんな入り口で話をするつもりか? ん?」


 ランドールは悪びれる様子もなく私に視線を合わせながら話した。ニヤニヤと勝ち誇った表情が気に食わない。それからイリスに目を向ける。やはり彼女の変化には気づいていないわね。イリスの肩を持つ気なんてないけど、ある意味可哀想かも。

「失礼しました。それでは応接室にご案内いたします。どうぞ、お入りください」


「うむ」

「……」


 ここからは私が案内役になる。ランドールとイリスの二人をコムラータ家の屋敷の応接室に連れて行った。婚約破棄から、まだ大した日は経っていない。なのに、ランドールの態度はまるで別人みたいだった……人ってこんなに簡単に変わるもの? ううん、これがランドールの本性ってことよね。


 私は応接室に二人を案内し、客人用のソファに座らせた。そして、その対面に私とお父様が座る。婚約破棄の言い訳……ランドールはどんな失態を見せるのかしらね。
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