魔物テイマー強い魔物がほしいけど癒しも必要だよね

夜風甚助

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激闘後の休息

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馬車に乗り込みすぐ様クロとオウカを魔玉から出した。シルバーに見せると指輪型のマジックアイテムから中級ポーションを取り出しクロとオウカに少しづつ飲ませていった。意識こそ無いもののそこには懸命に命を繋ぐ二匹が居た。

「俺が弱いせいで二人ともこんなになってしまってテイマー失格ですね……」

俯きながら零れた言葉に反応する者は居なかったが、馬車の隣を併走するカイザーだけはルシウスの受けた心のダメージに黙ってる事が出来なかった。

『なぁ?お前はコイツらの事大事にしてんだろ?そうじゃなきゃこんなんなるまでコイツらは闘わなかったと思うぜ?そんなに落ち込まなくても良いじゃねぇか
今は生きてるって事だけで良いだろ生きてりゃ次があんだからよ』

「カイザー貴方らしくないですねどんな風の吹き回しですか?」

『うるせぇ!昔のお前に重ねただけだ!』

軽く弄られたカイザーだったがそれ以降言葉を発する事は無かった。

(ごめんよ……ごめん……クロ、オウカ)

心の中で謝罪と感謝の気持ちを重ねた。クロとオウカを撫でる、胸が上下に動いているのを見て安堵の気持ちが広がり、緊張が徐々に薄れ、生きていられた事に感謝した。生きている実感を噛みしめると瞳から涙が溢れた。怖かった。ただ、ただ怖かった。家族を失うかもしれない現実と、自分の命と仲間の命がこの時失ってしまうかもしれないという現実に。

止めよう、止めようと思っていても勝手に溢れ出す雫は自分にも、誰にも止められなかった。周りの者は弱々しいルシウスを見ないように気を遣い外の景色を眺める、時間が経つにつれて覚悟を決めたルシウスはいつまでも泣く事を止め外を見て心を落ち着かせた。

しばらく馬車を進めると手を振りながら走ってくる
セラとテラの姿が見えた。馬車に近づく二人はルシウスとライズが生きてた事を知ると荒くなった呼吸をゆっくりと沈め馬車に乗り込んだ。

「シルバーさんありがとうございます。二人とも生きていて良かった……クロちゃんとオウカちゃんは……ねぇ……嘘よね!クロちゃんっ!オウカちゃんっ!」

疲労感を浮かべていた二人であったが、命に別状が無い事を確認するとルシウスの周りで意識を失っている二匹が目に入った。テラは沈痛な面持ちで端に座ると黙り込んでしまう、セラはというと気が動転してしまっているのかクロとオウカを懸命に揺さぶった。涙が零れ、こんな事は現実じゃないと叫びながら必死に揺さぶるセラであったがルシウスがそれを止めた。

「セラ!セラ!大丈夫だから!二人ともなんとか生きてるんだそんなに揺さぶらないでくれ!」

「ほんとに?全然動かないわよ?本当に大丈夫なの?」

「あぁ、シルバーさんのお陰で皆なんとか生きて生還出来た取り敢えず落ち着いて!」

「すみませんっ!僕もセラも途中で抜け出してしまって……」

「いや、誰もセラとテラを責める様な気持ちを持ってないよ!二人が助けを呼んでくれたからこうして生きてられるんだ……ありがとう。そういえばなんでシルバーさんはここに?」

重苦しい空気に耐えられなかったルシウスはこの話はこれでお終いとでも言う様にここに至るまでの経緯を尋ねた。シルバーがここに居たのはただの気まぐれだった。珍しい魔物が子をなしたと話があった為昔から馴染みのある店主の手伝いに来ていた。その際必要な物が無くなった為街に買い出しに向かう、そこでテイマー協会で必要な物の購入を済ませ帰路に立とうとした時冒険者ギルドが騒がしい事に気づき耳を傾けると

何やら物騒な話を聞いてしまう、未確認生物は雪男だったとランク違いの依頼を出してしまったとギルドマスターは頭を抱えていた。その際新人テイマーも同行していたと話があった為レッドホースを走らせた。

カイザーを先行させレッドホースを走らせると最初にセラに会った。事情を軽く聞くと街に戻る様に言って走り去る、後ろを振り返ると走りながら着いて来て居たので、従魔を気付かない様にセラの側に控えさせ先を急ぐ、暫く走ると今度はテラと出会いセラをここで待つ様に伝えると森へと急いだ。

雷鳴が轟くと森の入り口まで来ていたシルバーはレッドホースから飛び降り地を駆けた。それがこれまでの経緯だった。

本当に運が良かった事に感謝しながらシルバー達にお礼を伝えた。一人だけ相手にされないライズだけが不貞腐れていた。

「なぁ……気のせいかもしれないけどよ!俺の事忘れてないか?」

「忘れてないわよ!アンタは頑丈だけが取り柄なんだから良いでしょほっといても!クロちゃんとオウカちゃんが心配なの私はっ!」

「あぁそうかいっ!頑丈だけが取り柄の俺は疲れたから寝かせてもらうよ!」

ルシウス達に背を向けて横になるライズを見て腹を抱えて笑うルシウス達を見てシルバーは若かりし頃の自分と重ねていた。そんなシルバーを見てカイザーも思いに更けて居たがシルバーにだけ聞こえる様に念話を飛ばす。

『なぁ?あの玉はあの時のやつじゃないか?どうすんだ?俺はもう関わらない方が良いと思うぜ』

「まぁ実際どうだかは分かりません取り敢えずその話は後にしましょう、彼等を早く休ませてあげなければ」

会話を打ち切ると魔物牧場迄の道を急いだ。
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