僕は女神に溶けていく。~ダンジョンの最奥で追放された予言士、身長100メートルの巨大女神に変身する~

やまだしんじ

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第17話 巨人の夢

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 夢を見た。
 ギルドの端に座っている予言士と呼ばれていた青年フレイ。
彼はこれまで十回にわたって、パーティから追放されてきたらしい。人間とレアのハーフである者の扱いとしては、よくあることであった。
しかし、どうしてか、彼のいなくなったパーティは後に全滅する。まるで運が尽きたように、あっさりと。
そのせいもあって、彼は他のハーフよりもスカウトされることが少なかった。
そして、そんな彼に別の少年の姿が重なる……そんな夢。

 そして、夢の最後に体は話しかける。

「よければ、うちのギルドに入らないか?」

目を覚ます。
アスラは布団の上であった。周囲には孤児院の子供たちが川の字で寝ている。
 安らかに眠る彼らを見て、アスラは微笑んだ。

 が、そこで妙な気配が体を貫いた。
 見ると、孤児院の窓の外に立っている若い男女の姿があった。それはよく見るとデロとリラの姿であり、アスラは慌てて外へと飛び出していく。

「よう。よくのんきに寝てたな」

 開口一番にそうデロ……クロノスは言った。

「申し訳ございません。クロノス様」

「まぁ、仕事してもらえればいいから、で。どう? テミスとピクミーは始末した?」

「いえ……申し訳ございません」

「ふーん」

 クロノスは下から覗き込むようにしてオケアノスの顔を伺う。だが、オケアノスは微動だにすることなかった。

「まぁ、いいや。嘘ついたらすぐ分かるから、気を付けてね」

 彼はそうつぶやくと、リラを連れて、どこかへ去っていった。

 正直なことを言えば。
 知ってしまったというのが真実である。
 この前の戦闘後、フレイの右腕には確かに腕輪がついていた。あの腕輪は紛れもないティタンの物である。そして、他のティタンとして該当するのはテミスしか存在しない。

「はぁ……」

 ため息をついたとき、隣に気配があった。

「お悩み事かい? 最近は特に悩んでいるように見えんかったのに」

 そこにいたのは孤児院の院長であった。今は早朝四時前だというのに早起きだな、と思う。ただ、今の院長の言葉には引っ掛かった。

「あ、いえ。何でもないですよ。でも、最近は……って、前に何か悩んでましたっけ?」

「ほら、プラス君のことだよ」

「プラス君は……」

 そう彼の名前を脳内で反芻した時、出てきた顔と言うのは。
 夢の中でフレイと重ねていたあの少年であった。



 ギルドハウス内にフレイが入ると、そこでは何か壁に紙を貼り付けている顔半分が岩でできたギルドマスター、ヒノがいた。

「なに貼り付けているんですか?」

「これから軍の奴らが検査しに来るとかでね。張り紙をした方が評価上がるんだよ」

 張り紙? 
 その内容と言うのは、指名手配と書かれているものであった。そして、その指名手配犯の顔にはゴーレムが載せられていた。このゴーレムは一週間前、コロシアムを襲ったものだろうか。それは倒したはずであるが……。

「この、ゴーレム生きているんですか?」

「あぁ、一週間前だけじゃない。昨日も出やがって、軍部の上層部を襲撃した。まだ生きているよ。前からあんな感じで一瞬で現れて、荒らして一瞬で消え去っていく」

「そ……そんな……」

「……苦手なのかい?」

 紙を貼り付けながら、背中を向け話しかけてくる。
 それに対し、フレイは答えた。

「昔、このゴーレムが家を襲いに来たことがありましてね。それで目の前にしてしまい……トラウマなんですよ」

「あら、よく対処できたね」

「奇跡的っすよ。化け物め……とか大声で叫んだら、どこか行きましたよ」

 今でも彼の脳裏にはこべりついている。
 玄関を開けた瞬間、立っていたあの化け物のことが。

「あれじゃない? 挨拶でも……しに来たんじゃない?」

 妙に真面目なトーンで言うギルドマスターだが、フレイは数秒たってそれが明らかな冗談だと気づく。

「なわけないでしょ!」

「ウィーっす」

 そんな声と共に入ってきたエデンとレイア。
 
 そして。

「おはよう」

 妙に硬い挨拶のアスラも来た。その手首には相も変わらずティタンの腕輪がついている。結局、これのことについて聞くことができていない。聞いてしまえば、自分も疑われるような気がして。でも、ティタンとして仲間だったのなら聞いていいような気がするような。いや、ティタン同士で争っていた話も聞くし……。

 そんな考えがフレイの脳内に響き渡った。
 
 それと同時におとといのセリナと話した出来事も思い浮かんできた。

「フレイはさ、こう変身できるじゃん」

「うん……まぁ、そうだけど」

 見当違いであるが、びしっと左腕をスラッシュするようなポーズをとる。

「そうだけど、何?」

「なんか慣れないなぁって」

 フレイはセリナに家で尋問されていた。彼女に変身できることがバレてから、よく聞かれている。体の研究をしてみたいという話は出ないが、いつ出てもおかしくないだろう。そんな中でフレイから質問したことがあった。

「セリナはさ、この腕輪見える?」

 右腕に着けている腕輪を指さしたのである。それに対し、彼女はこう答えた。

「見えることには見えるんだけど。そこに腕輪があるって認識してないと見えない、かな。現にずっと気づかなかったからさ」

 このことから普通の人間にはこの腕輪を見ることが不可能なのが確定した。
 そうすると、アスラからはこのフレイの腕輪が見えているのか。

 アスラと目が合い、フレイは慌てて逸らしてしまう。
 そんな中でギルドハウスの前に立つ男の姿があった。彼は黒いローブを羽織っていることからも人間軍の者であることが分かる。

「ありゃ、どーも。ギルドメンバーの諸君。ソノさんが検査しに来ましたよー」

 そこに立っていたのは、若い眼鏡をかけた男であった。男は左腕をケガしているようで、包帯とギブスで固定されていた。この男を見てエデンはフレイの背中に体を隠す。

 フレイは小声で話しかけた。

「どうしたの?」

「お父さん……」

「え」

 だとすれば、非常に見た目は若い。フレイと同じ年に見えなくもないだろう。真面目そうな男ではあるが、嫌味の含まれた笑顔を見せていた。

「あれ、エデン。まだ、働いているのかい? こんな隷属と同じ職業なんぞに」

 ここにいることはバレていたらしい。エデンは噛みつくように大声で返す。

「う、うるさい! 別にいいでしょ!」

「な……なんだ、そ、その口調は……」

 強気に返されると思いきや、彼はうろたえていた。この職業が気に食わないのなら、辞めさせて軍部に入れればいいのに、などとフレイは想像を広げてしまったが。
 エデンは再び小声で言う。

「お父さん、強く言われると言い返せないの。特に私とお母さんからは」

(弱みを握っているのは娘の方らしい)

 意外な関係性にフレイは思わず噴き出してしまった。





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