僕は女神に溶けていく。~ダンジョンの最奥で追放された予言士、身長100メートルの巨大女神に変身する~

やまだしんじ

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第18話 オケアノスの葛藤

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「ふむ。こんなところか」

 男は呟いた。
 彼が振り返ると、そこに立っていたのは白髪に赤いメッシュを入れた少女であった。

「いったい何なんだ、お前。さっきからついてきて」

「やぎくんがたくさん人をたべていたのをみた。私がやぎくんをたべればこうりつがいい」

「なるほど……てめえがピクミーか」

 目の前の少女の正体に気づいた男は身構える。
 瞬間、男の姿が変化する。そこにいたのは人間大のヤギであった。しかし、ヤギになったのは顔面だけであり、それ以外は人のままである。

「じゃあ、殺してやるよ」

 その一言と共に人型のヤギはピクミーと呼ばれた少女に向かって殴りかかっていった。



 突然の人間軍の来訪に、ギルドハウスはちょっとした騒ぎになっていた。
 結局のところ、ギルドハウスからフレイたちは追い出されるようにして、調査へ出ることになった。なんとかして腕輪のことを聞き出そうとアスラに近づくフレイだったが、彼はフレイからわざと離れるようにして、どこかへ一人で去ってしまった。

 結局、彼はエデンやレイアと共に行動することになった。
 
 エデンはレイアに何か耳打ちをしていた。
 その内容をフレイは気になり、どうしたの?と声をかけると、彼女は大げさにいやいや何でもないと、手を振って答える。

 そこでフレイの脳内にテミスのため息が響く。

「ちょっと、鈍感ですね……」

(な、何がだよ……)

「しりませーん」

(テミスも前より口が回るようになったと思う)

 最初こそ、挙動不審で何を言い出すのか、何をするのかもわからなかった。

(ただ、鈍感って……?)

 首をかしげるフレイを見て、レイアはため息をついた。
 そんなレイアに同じ調子でエデンは耳打ちをしてくる。

「ど、どうしよう」

「どうしようって、何が?」

「こうフレイ君ってさ、なんか今までの人たちとはまるで違うっていうか。その。凄い良い人だなぁって。どう近づけばいいかなぁ」

 本人に聞かれないよう小声で話しながらも頬を赤く染めるエデンにレイアは一言。

「……好きなの?」

「いや、その、えっと。そうかも……」

 普段、弱気になる彼女をレイアは見たことがないので、少し新鮮であった。生活にしても何ごとにしても助かっている面もあるため、助けることにした。

「エデンは大丈夫だよ、こう恵まれた体格なんだし……」

 自分で言って、若干自分が傷ついてしまう。ただ、こう何か頑張っている彼女を見ると応援したくもなる。レイアは微笑むが、そこでフレイが何かを目にしたまま止まっていることが分かった。

 そこにあったのは修繕途中のコロシアム。その前で軍の人間に引き留められている一人の少女がいた。その少女を見るなり、フレイは彼女の下へ駆け出していく。

「ちょ、ちょっと、どこへ行くんですか?」

 彼はエデンの制止も通じず、向かって行った。
 彼はそのまま少女へ話しかける。そこでレイアはハッとすると隣を見るが、エデンは泣きそうになっていた。

「だ、大丈夫だよ。多分、恋人とかじゃないから」

「そ、そうなのかな」

 フレイの視線の先にいたのはセリナであった。

「勝手に出るなとあれほど……」

 フレイは頭に血が上るのを感じ取りつつ、彼女の下へと向かって行った。
 セリナはどうやら人間軍の軍人ともめているようであった。

「ねぇ」

 彼女の肩を押さえると、こちらを振り返ったが、彼女は青い顔をしていた。

「いや、ソノ。そ、そのなんだけど。そのじゃないみたいな」

「勝手に外に出ちゃだめだよね」

「……はい。いや、でも通してくれないんだよ。この奥にいろいろあるっていうのに」

 彼女の言葉に目の前の軍人の眉がピクリと動くが、冷静に呟く。

「そんなものはありません。去ってください。改修中です」

「はい、申し訳ございません」

 フレイは平謝りをし、「さ、行くよ」とセリナの手を引いていった。

「ちょ、テ、手をつなぐのはな、無し!」

 彼女が頬を紅潮させ、慌てたところで、セリナの視線が涙目となっている少女とその彼女をなだめる少女に注がれる。

「ん、あの子たちフレイ、どういう関係?」

「あー。あいつらは新しいパーティメンバー」

 フレイもようやくその光景の異様さに気づいた。
 涙目のエデンと何か面倒くさそうな顔のレイア。そして、意味ありげにふっと笑ったセリナ。
 そのままセリナはフレイの腕に抱き着いてきた。

 それにはフレイも柄にもなく照れてしまう。
 いろいろな体の感触が……。

「ね、今から私たちの家まで送っていってもらえない?」

 セリナはそんなことを続けて言ってくる。
 そしてついにエデンは爆発した。

「ど、どんな関係なんですか!?その女の子は!」

「え、えと、か…」

「彼女です」

 言いかけたフレイを制止して、セリナはそんなことを言う。
 それにエデンは激高する。

「そ、そうなんですか!?フレイさん?こんな危なそうな人が!?」

「セリナは彼女じゃなくて家族!」

「あ、危なそうな人ってなにさぁ!?」

 そんな一触即発の彼らを眺めているものが一人。
 また、コロシアムの崩壊しなかった天井部分から。

「モテますねぇ。フレイさん」

 それはアスラであったが、どこか寂しそうな顔をしていた。フレイの朝の視線からしてみれば、とっくに自身の正体について感づいているのだろう。彼と共にいては彼のことを自身は知ってしまう。

(深い関係になれば……)

「ためらうことになる」

 ハッとして振り向いたときには、刃こぼれした大鎌の刃を手首に添えられる。
 そこにいたのはデロとリラであった。

「なんで、ここに。いや……」

「言ったはずだが。考えていることは分かると。まぁ俺の能力ではなくてムネモシュネの能力だが」

 デロはリラの頭をなでようとするも、リラは睨みつけつつ雑にその手を振り払う。

「頭をなでるのはやめてください。イライラするので。セットするのにも時間がかかるんです」

「ご、ごめん……と言うわけだ」

(何が?)

 そう思ってしまったアスラの手首にデロはさび付いた鎌の刃を寄せる。

「奴の正体がテミスなのだろう?」

「そうです……」

「殺せ」

 顔を寄せ、彼は答える。その表情は笑顔であったが、口元を閉じたまま笑うと、不気味でしかなかった。この不良っぽい男がする表情ではない。

「私が……」

「それ以外にあるか?」

 デロの表情が一瞬真顔に戻ったとき、何か轟音が街に響き渡った。
 近くからと思ったとき、コロシアムから離れた街の通りで爆発音が響き渡っていた。

「ちっ」

 デロは舌打ちすると、そのまま消え去る。リラの姿もなくなっていた。
 アスラはその場でただ膝をつく。





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