僕は女神に溶けていく。~ダンジョンの最奥で追放された予言士、身長100メートルの巨大女神に変身する~

やまだしんじ

文字の大きさ
19 / 30

第19話 羊と兵器

しおりを挟む
 ヤギの男は目の前の少女に手も足も出なかった。

 彼女はその見た目とは裏腹に次々に能力を使用する。手をかざせば、竜巻や雷が起きる。さらに次々に生まれる槍をもって、攻撃してくる。ヤギの男も手で触れたものを腐敗させていくが、数が足りない。

 次々に放たれる能力はすべてが一級品。
 こんな体のどこにこの能力を隠しているのか。近距離戦、遠距離戦。まるでスキがない。

「クソ。俺も禁止級とか言われれて調子乗ってたけど。こんなバケモンが……」

 手も足りなくなる。
 どこからともなく強烈な光が襲い、目が見えなくなる。
さらに、何かが反応したのか強烈な爆発。回避しようと、その場を抜け出そうとするが、そこに目の前から槍の攻撃が迫っていた。

 だが。

 突如、目の前の少女の足場が一気に崩れていく。そして、彼女は重力のまま落ちていった。

 その光景を見て、ヤギ頭の男は呟く。

「なるほど」

 そこで、駆け抜けてくる音が聞こえてきた。
 爆発音の下へフレイたちは急行する。
 
 だが。
 エデンは何かセリナに対して喚いていた。
 フレイはセリナに呟く。

「ちょっと離れてて。ここからは僕たちがやるから」

「わかった。必ず生きて帰ってきてね」

 セリナの言葉にフレイは頷いた。
 フレイは剣を構える。

「アスラさんは来れないのかな?」

「大丈夫だ。俺はここにいる」

 その声が響いた瞬間、彼はフレイの隣にいた。

「ずっといたんですか?」

「爆発音を聞きつけた」

 爆発音の下に立っていたのはヤギ頭の男。彼を見て、アスラは眉を顰める。

「あれは、サテュロス。禁止級ダンジョンボスのうちの一体だ」

「あ、あの大きさで、ですか?」

「いや、あいつは」
 
 サテュロスは多くの人間を見て、一飛びで家の屋根に立つと、微笑んだ。

「なるほど、こんなに多くの人が来ると、こうなった方がいい」

 その瞬間、彼の体は一気にサイズが膨れ上がり、建造物を軽く押しつぶせる。
 50mほどのサイズと化していた。普段の怪物よりは小さいが、人間を押しつぶすには十分すぎる。

「ふはははははははははははは」

 さらに、彼の肉体はヤギの毛皮で覆われるようになった。その丸みを帯びた二本角のうち一本が緑色に輝いている。

「奴には形態がある。大きくなったり、姿性質まで変えてしまう。もっと厄介なのは……」

 その時である。背中側から何かがやってくる音が聞こえ、音の主は叫んでいた。

「ギルドメンバーの皆さんは下がっていなさい。あとは軍が引き受けます」

「承知しました」

 そう返事をしたレイアの顔を見るなり軍の一人は言った。

「レアの民族は隷属にでもなってろよ」

 その言葉に対し、エデンの耳がぴくついたが、彼女は冷静にレイアに呼びかける。

「ここはいったん撤退するぞ」

「え……あ、うん」

 レイアは目を見開いたまま、フレイを見た。今までのエデンであったら、叫んでただろうけど。

(へぇ……これは凄いな)

 彼女はフレイを見ながら、しみじみ思いつつ、持ち場を離れていく。



 最前線の軍部では作戦が練られていた。

「オーパーツはどうなっている?」

「準備は整っています」

 センシャ。
 それが彼らの前に数台並んでいた。これらは新たに現在の技術で再現したものである。古代の技術力は凄まじい。こんなものまで作り出しているとは思わなかった。

 フレイたちの前ではそのセンシャが動く様子があった。
 
「な、なんじゃあれ……」

「な、なんかすごそうっすね」

 フレイの呼びかけに対して、他のパーティの面々は頷いていたが、アスラの表情だけは険しかった。

 その表情にフレイは顔をしかめるが、すぐに意味が分かった。
 センシャから轟音で砲弾が放たれる。それらは次々に爆発し、サテュロスへの効果はと思ったが、まるで効いていない。

 サテュロスは構わず進撃を続け、そして、その手を地面にたたきつける。
 その瞬間、地面は一気に崩壊し、数十メートルにわたる大穴が開いてしまう。突如生まれた大穴は街を、センシャを呑み込み、最新兵器は何の成果もあげることなく全滅した。

「嘘だろ……まるで効いてない」

 センシャの活躍する姿を見に来ていたはずの人間軍たちから、そのような声があがる。
 このまま人間軍に任せていては、街の被害が拡大するばかりだ。

「……私たちがやりますよ」

 エデンが呟き、フレイたちは頷いていた。
 キメラの羽で作成された鎧は人に飛行能力を与える。この飛行能力を駆使して、これまで有利に立ち回ってきた。

 サテュロスは飛行する彼らを見て、何かを手に取った。
 それは破壊された建造物のがれきであり、それらをもったまま振りかぶる。

 そしてそれは一気に空中に放たれた。
 
 フレイたちはそれを寸でのところでかわすが、その風圧だけで体勢を崩されてしまう。
 当たってしまえばひとたまりもないだろう。

「おろ、外れかぁー」

 そんなことをサテュロスは呟く。さらにサテュロスは建造物に触れると、触れた場所から建造物が溶け出す。

「な、なにあれ」

「あれがサテュロスの能力だ。あの手で触れたものを腐敗させてしまう」

 よく見ると、先ほど投げたがれきも、次々に煙と共に地面を溶かしていっている。

「こんなのありか」

 近距離戦で戦うことはできない。かといって遠距離も。エデンとアスラが放った矢は素早く差し出されたサテュロスの掌によって防がれてしまう。掌に触れた弓矢は爆発する前に、溶けて行ってしまった。

「だとしたら……」

 フレイは飛行を辞め、地面へと着地する。
 そして、右腕を掲げると叫んだ。

「テミス!」

 その瞬間、彼の体は巨大褐色美女へと変貌していた。

「来た女神様!」

「レイア、あの巨人見るとテンション上がるのね」

 飛行しながらしみじみ呟いていたが、あの腐敗する能力があっては、レイアの盾も役割を成さない。かといって弓も。

 エデンは一度、降りるようにレイアに指示を出す。

「どうしたの?」

「スキを狙う……というかフレイさんとアスラさんは?」

 二人の姿はいつの間にかなくなっていた。この前もそう。いちいち心配させて、二人はどこに行ってしまったのだろうか。

「ごめん、テミス。どう攻撃しよう?」

 フレイは心の内でテミスに呼びかけていた。
 
「まぁ、いろいろこっちも投げ込んでみる?」

「そうするか」

 巨大褐色女神が立ちむかっている姿を、セリナは遠くの家から双眼鏡で眺めていた。この家の住人はすでに避難しているらしく、姿はなかった。

「あのがれき……投げる感じなのかな……サポートしたいな……でも私には……」

 不甲斐なさで彼女が壁をけってしまったとき、軽い音がした。

「え……?」

 覗き込むと、その壁の一部が一回転し、出てきたのは分厚い手記であった。
 それがめくりあがり、書かれていたのは。

「ティタン化……計画……?」

 そこでセリナは背中にいる気配に気づく。

 そこに立っていたのは、街に貼られていた指名手配犯のポスターの顔。

 ゴーレム、そのものであった。





【お知らせ】
 お世話になっております。やまだしんじです。
 読んでくださりありがとうございます。
 ぜひ、よろしければお気に入りや感想を書いていただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...