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一章 アスカとルミ①
四 ルミさんからの依頼 四(改)
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店に戻った私達は、
カウンター席に隣り合って座った。
空っぽのカウンターを見て、
私は不思議な感覚を覚えた。
透明人間が店主を務めているかのような、
そんな感覚だった。
カウンターに誰もいないのなら、
いくら待っても
飲み物が出てくることはない。
ホットココアでも作ろうかな。
リラックス効果も期待できるし。
「どこ行くの?」
「ココア淹れてきます。
……と言っても、
市販のやつをチンするだけですけど」
「……手抜き」
「なにか言いました?」
「なにも」
本当なら鍋で作りたいところだけど、
今の精神状態だと高確率で焦がしてしまう。
今回は手抜きで我慢してくれ。
市販のココアも美味しいのだから。
静寂に響き渡る少し間の抜けたレンジの音。
もうもうと湯気を立ち上らせるココアを、
ガトーショコラと一緒に
ルミさんに差し出す。
「……ケーキ?」
「まだあったんで、ついでに」
「ありがと……」
私は自分の分のココアとショコラを手に、
改めてルミさんの隣に戻った。甘くて
優しいココアの香りが立ち込める中、
ショコラを寸断するフォークと
皿がぶつかる音が小さく轟く。
「……美味しい」
一口、また一口と、
ガトーショコラは
ルミさんの口に消えていく。
半分ほど食べ終えた頃、
彼女の目から再び涙が零れ落ちた。
「懐かしいな……」
「懐かしい?」
ルミさんの言葉の意味が理解できず、
私は彼女の言葉をそのまま繰り返した。
すると、ルミさんは涙を拭い、
半身が欠けたガトーショコラを
大切そうに目の高さに掲げた。
「実は私ね、
ガトーショコラの練習してるんだ。
恥ずかしいから
アスカには内緒にしてたんだけど……」
「そうだったんですか」
「うん。去年のクリスマスに
アッくんにサプライズで焼いたんだけど、
見事に失敗しちゃって……」
「あらら……」
「でも、アッくんは美味しい美味しいって
言ってくれて……本当、嬉しかった。
ただ、それはそれとして、やっぱり
成功したのを食べてもらいたいじゃない?」
「まぁ、そうですね」
「だから、交際記念日にリベンジしようと
思って頑張ってたのに……」
二人の交際記念日。それは四月十九日。
当日まで、もう一ヶ月もなかった。
「それなのに、
急にいなくなるなんて聞いてないよ……」
色々な言葉が頭の中に浮かぶ。
全部、ルミさんにかけようとした言葉だ。
でも全部、声にはならずに消えていく。
きっと帰ってきますよ。
絶対に見付かりますから。
きっと、大掛かりな
サプライズでも計画してるんですよ。
思い浮かぶのは、
どうしようもなく無責任な台詞ばかり。
気休めにもならない。
行方不明──失踪。
大人の失踪は、
子供の失踪と違って捜されないと言う。
大人は自分一人でも生きられるからだ。
しかも、大人は自身の失踪が
周囲を心配させることを知っているから、
自分の意思で失踪するという旨の
書き置きを残す。本人の意思が尊重され、
一人で生きていける能力があるため、
捜されることはない。
けれど、
ルミさんの彼氏さんは探されている。
それも、かなり大々的に。
それの意味するところは、
子供の失踪並に周囲が危機感を
抱いているということ。
家出とか、旅に出るとか、破局とか、
そんな生易しいものじゃない。
何かの事件事故に巻き込まれたと、
周囲はそう考えている。
そんな状況で無責任なことは
言うべきじゃない。でも──
それなら、私は何を言えばいいんだろう?
「……アスカ」
ルミさんが、
何も言えずに固まる私のことを呼ぶ。
「アッくんのこと、黙っててごめん」
「どうし──」
どうして話してくれなかったんですか?
また、不躾な言葉が口を突きそうになった。
こんな問い、私が自分で気付けなかった
ことを棚に上げているだけだ。
それに、ルミさんだって──
「今日、話すつもりだったんですよね?
それで家に来た……」
ルミさんは、弱々しく首を横に振った。
「アスカが気付かなければ、
ずっと話さないつもりだった」
「……どうして」
「アスカには……
いつものアスカでいてほしかったから」
「いつもの私?」
そう聞くと、
ルミさんはとうとう話してくれた。
私にだけ、彼氏さんの
行方不明を隠していたその理由を。
「アッくんの報道が始まって、同僚とか
友達とか色々な人が連絡をくれたの。
みんな本当に私を心配してくれて、
特に兄なんか、週一で家に様子を
見に来てくれるようになって……。
でね、みんな言うの。
『なんでも言ってね』『力になるからね』
って。けどその度に、アッくんが
いなくなったんだってことを
思い出して、それが本当に辛くて……」
それらの言葉、今と状況が異なれば、
私も口走っていたに違いない。
寄り添えていると本気で思い込んで、
無自覚にルミさんを苦しませていた
かもしれないのか。
いや、すでに彼女は苦しんでいる最中だ。
「しかも、みんなそう言ってくれるのは
最初だけで、次の日には笑ってるの。
笑って、自分の日常に戻ってる。
『探すの手伝うよ』
って言ってくれた友達なんてさ、
自分の彼氏とデートしてたんだよ?
そりゃあ自分の生活も
あるんだろうけどさ……
そっちがメインなら、
最初から『力になる』とか
無責任なこと言わないでくれって……」
無責任とルミさんはそう言った。
それは違うと、私は言いかけた。
周囲の人々は、ルミさんのことを
本気で心配してくれていたに違いない。
そしてそれは、今だって同じはずだ。
ただ、ルミさんが思い描く『力になる』の
理想形とはかけ離れた形をしていただけで、
責めるに値する人はどこにもいない。
むしろ、責められるべきは私だ。
ニュースを見ても、全く気付かずに
スルーしていたのだから。
「でも、アスカだけは違った。アスカだけが、
なんの連絡もしてこなかった」
彼女の言葉がグサリと心に突き刺さる。
思わず「ごめんなさい」と謝ると、
ルミさんは言った。「最後まで聞いて」と。
「アスカはさ、
アッくんに興味なかったでしょ?
だから思ったんだ。もしかしたら、
アスカは気付いてないんじゃないかって。
もし本当にそうなら、
そのまま何も知らないアスカのままで
いてほしいって。そうすれば、
アッくんがいなくなったことを
忘れさせてくれるって……」
彼氏さんの失踪が三月一日で、
今日が二十八日。一ヶ月近くもの間、
彼女は周囲の人達の悪気のない
──むしろ善意から来る無責任に
苦しんできた。
その苦痛からの解放を求めて、
彼氏さんが存在する今まで通りの
日常を求めて、ルミさんはここに来たんだ。
それが『アスカには話したくない』理由。
けど、そういう理由なら──
「ルミさんの気持ち
──私にどうあってほしかったのか、
それは理解しました。
でも、今の話を聞いた以上は、
もう知らない振りはできません。
今のルミさんをこれ以上放っておくことも」
「アスカ……」
「協力させてください。何から何まで
っていうのはさすがに無理だけど……
それでも、他の人達よりもよっぽど
力になれるはずです。
だって私、何でも屋ですよ?」
「何でも屋……」
「そうです。だから、依頼してください。
その人達とは違って、私は仕事で
彼氏さんの捜索に協力する。
だから、ちゃんと責任を持ちます。
チラシ配ったり、
話を聞くくらいしかできないけど、
S市から来る人も結構いるので
期待できると思います」
T県S市。そこは、彼氏さんの地元。
これもまた、ルミさんから聞かされた
惚気話で刻み込まれた記憶の一つだ。
隙あらば、この人は惚けまくるのだ。
「それに、お望みとあらば、
ルミさんがいるときは
彼氏さんの話は一切しません。
有力な情報が得られた時だけ伝えますから」
彼氏さんがいなくなったことを忘れる。
果たして
それが正しいのかどうかわからない。
いや、多分正しくないと、私は思う。
同棲していたからには、部屋にはたくさんの
彼氏さんとの思い出が転がっていて、
その一つ一つが楽しかった記憶を
呼び覚ますトリガーだ。
そして、その度に行方不明という現実を
突き付けられる。繰り返されるのは、
地獄のようないたちごっこ。
けれど、それでもルミさんが望むのならば、
私は精一杯その望みに応えるつもりだ。
重なる互いの手。ルミさんの小さな震えが、
私の方にも伝わってくる。
「協力させてください」
ルミさんの目を真正面から見据えながら、
私は改めて協力を申し出た。
すると、
今までずっと険しかったルミさんの顔が、
不意に破顔した。重なっていた手をほどき、
すっきりとした表情で涙を目元を拭い、
初めてフフッと笑い声を漏らした。
「こんなに真剣なアスカ見たの、初めてかも」
「そりゃあ、真剣にもなりますよ」
このタイミングで投下された
思わぬ茶化しに、私は少し口を尖らせた。
「でも、ありがとう。
アスカに話して、本当によかった」
「私の方こそ、
話してくれてありがとうございます」
「……依頼、だっけ。お願いしてもいい?」
遠慮がちに聞くルミさん。
私の答えは、一つに決まっていた。
「はい。お任せください」
「ありがとう」
その後、私達は今後の流れを相談した。
彼氏さんの基本情報を教えてもらい、
情報提供を求めるチラシを
後で送ってもらう約束をし、
今日のところはそれで解散となった。
「それじゃ、アスカ。また連絡するね」
「はい。また、いつでも来てくださいね」
「うん。また来る」
私に見送られながら
T駅に向かうルミさんの足取りは、
先程までとはうって変わって
力強いものに変わっていた。
カウンター席に隣り合って座った。
空っぽのカウンターを見て、
私は不思議な感覚を覚えた。
透明人間が店主を務めているかのような、
そんな感覚だった。
カウンターに誰もいないのなら、
いくら待っても
飲み物が出てくることはない。
ホットココアでも作ろうかな。
リラックス効果も期待できるし。
「どこ行くの?」
「ココア淹れてきます。
……と言っても、
市販のやつをチンするだけですけど」
「……手抜き」
「なにか言いました?」
「なにも」
本当なら鍋で作りたいところだけど、
今の精神状態だと高確率で焦がしてしまう。
今回は手抜きで我慢してくれ。
市販のココアも美味しいのだから。
静寂に響き渡る少し間の抜けたレンジの音。
もうもうと湯気を立ち上らせるココアを、
ガトーショコラと一緒に
ルミさんに差し出す。
「……ケーキ?」
「まだあったんで、ついでに」
「ありがと……」
私は自分の分のココアとショコラを手に、
改めてルミさんの隣に戻った。甘くて
優しいココアの香りが立ち込める中、
ショコラを寸断するフォークと
皿がぶつかる音が小さく轟く。
「……美味しい」
一口、また一口と、
ガトーショコラは
ルミさんの口に消えていく。
半分ほど食べ終えた頃、
彼女の目から再び涙が零れ落ちた。
「懐かしいな……」
「懐かしい?」
ルミさんの言葉の意味が理解できず、
私は彼女の言葉をそのまま繰り返した。
すると、ルミさんは涙を拭い、
半身が欠けたガトーショコラを
大切そうに目の高さに掲げた。
「実は私ね、
ガトーショコラの練習してるんだ。
恥ずかしいから
アスカには内緒にしてたんだけど……」
「そうだったんですか」
「うん。去年のクリスマスに
アッくんにサプライズで焼いたんだけど、
見事に失敗しちゃって……」
「あらら……」
「でも、アッくんは美味しい美味しいって
言ってくれて……本当、嬉しかった。
ただ、それはそれとして、やっぱり
成功したのを食べてもらいたいじゃない?」
「まぁ、そうですね」
「だから、交際記念日にリベンジしようと
思って頑張ってたのに……」
二人の交際記念日。それは四月十九日。
当日まで、もう一ヶ月もなかった。
「それなのに、
急にいなくなるなんて聞いてないよ……」
色々な言葉が頭の中に浮かぶ。
全部、ルミさんにかけようとした言葉だ。
でも全部、声にはならずに消えていく。
きっと帰ってきますよ。
絶対に見付かりますから。
きっと、大掛かりな
サプライズでも計画してるんですよ。
思い浮かぶのは、
どうしようもなく無責任な台詞ばかり。
気休めにもならない。
行方不明──失踪。
大人の失踪は、
子供の失踪と違って捜されないと言う。
大人は自分一人でも生きられるからだ。
しかも、大人は自身の失踪が
周囲を心配させることを知っているから、
自分の意思で失踪するという旨の
書き置きを残す。本人の意思が尊重され、
一人で生きていける能力があるため、
捜されることはない。
けれど、
ルミさんの彼氏さんは探されている。
それも、かなり大々的に。
それの意味するところは、
子供の失踪並に周囲が危機感を
抱いているということ。
家出とか、旅に出るとか、破局とか、
そんな生易しいものじゃない。
何かの事件事故に巻き込まれたと、
周囲はそう考えている。
そんな状況で無責任なことは
言うべきじゃない。でも──
それなら、私は何を言えばいいんだろう?
「……アスカ」
ルミさんが、
何も言えずに固まる私のことを呼ぶ。
「アッくんのこと、黙っててごめん」
「どうし──」
どうして話してくれなかったんですか?
また、不躾な言葉が口を突きそうになった。
こんな問い、私が自分で気付けなかった
ことを棚に上げているだけだ。
それに、ルミさんだって──
「今日、話すつもりだったんですよね?
それで家に来た……」
ルミさんは、弱々しく首を横に振った。
「アスカが気付かなければ、
ずっと話さないつもりだった」
「……どうして」
「アスカには……
いつものアスカでいてほしかったから」
「いつもの私?」
そう聞くと、
ルミさんはとうとう話してくれた。
私にだけ、彼氏さんの
行方不明を隠していたその理由を。
「アッくんの報道が始まって、同僚とか
友達とか色々な人が連絡をくれたの。
みんな本当に私を心配してくれて、
特に兄なんか、週一で家に様子を
見に来てくれるようになって……。
でね、みんな言うの。
『なんでも言ってね』『力になるからね』
って。けどその度に、アッくんが
いなくなったんだってことを
思い出して、それが本当に辛くて……」
それらの言葉、今と状況が異なれば、
私も口走っていたに違いない。
寄り添えていると本気で思い込んで、
無自覚にルミさんを苦しませていた
かもしれないのか。
いや、すでに彼女は苦しんでいる最中だ。
「しかも、みんなそう言ってくれるのは
最初だけで、次の日には笑ってるの。
笑って、自分の日常に戻ってる。
『探すの手伝うよ』
って言ってくれた友達なんてさ、
自分の彼氏とデートしてたんだよ?
そりゃあ自分の生活も
あるんだろうけどさ……
そっちがメインなら、
最初から『力になる』とか
無責任なこと言わないでくれって……」
無責任とルミさんはそう言った。
それは違うと、私は言いかけた。
周囲の人々は、ルミさんのことを
本気で心配してくれていたに違いない。
そしてそれは、今だって同じはずだ。
ただ、ルミさんが思い描く『力になる』の
理想形とはかけ離れた形をしていただけで、
責めるに値する人はどこにもいない。
むしろ、責められるべきは私だ。
ニュースを見ても、全く気付かずに
スルーしていたのだから。
「でも、アスカだけは違った。アスカだけが、
なんの連絡もしてこなかった」
彼女の言葉がグサリと心に突き刺さる。
思わず「ごめんなさい」と謝ると、
ルミさんは言った。「最後まで聞いて」と。
「アスカはさ、
アッくんに興味なかったでしょ?
だから思ったんだ。もしかしたら、
アスカは気付いてないんじゃないかって。
もし本当にそうなら、
そのまま何も知らないアスカのままで
いてほしいって。そうすれば、
アッくんがいなくなったことを
忘れさせてくれるって……」
彼氏さんの失踪が三月一日で、
今日が二十八日。一ヶ月近くもの間、
彼女は周囲の人達の悪気のない
──むしろ善意から来る無責任に
苦しんできた。
その苦痛からの解放を求めて、
彼氏さんが存在する今まで通りの
日常を求めて、ルミさんはここに来たんだ。
それが『アスカには話したくない』理由。
けど、そういう理由なら──
「ルミさんの気持ち
──私にどうあってほしかったのか、
それは理解しました。
でも、今の話を聞いた以上は、
もう知らない振りはできません。
今のルミさんをこれ以上放っておくことも」
「アスカ……」
「協力させてください。何から何まで
っていうのはさすがに無理だけど……
それでも、他の人達よりもよっぽど
力になれるはずです。
だって私、何でも屋ですよ?」
「何でも屋……」
「そうです。だから、依頼してください。
その人達とは違って、私は仕事で
彼氏さんの捜索に協力する。
だから、ちゃんと責任を持ちます。
チラシ配ったり、
話を聞くくらいしかできないけど、
S市から来る人も結構いるので
期待できると思います」
T県S市。そこは、彼氏さんの地元。
これもまた、ルミさんから聞かされた
惚気話で刻み込まれた記憶の一つだ。
隙あらば、この人は惚けまくるのだ。
「それに、お望みとあらば、
ルミさんがいるときは
彼氏さんの話は一切しません。
有力な情報が得られた時だけ伝えますから」
彼氏さんがいなくなったことを忘れる。
果たして
それが正しいのかどうかわからない。
いや、多分正しくないと、私は思う。
同棲していたからには、部屋にはたくさんの
彼氏さんとの思い出が転がっていて、
その一つ一つが楽しかった記憶を
呼び覚ますトリガーだ。
そして、その度に行方不明という現実を
突き付けられる。繰り返されるのは、
地獄のようないたちごっこ。
けれど、それでもルミさんが望むのならば、
私は精一杯その望みに応えるつもりだ。
重なる互いの手。ルミさんの小さな震えが、
私の方にも伝わってくる。
「協力させてください」
ルミさんの目を真正面から見据えながら、
私は改めて協力を申し出た。
すると、
今までずっと険しかったルミさんの顔が、
不意に破顔した。重なっていた手をほどき、
すっきりとした表情で涙を目元を拭い、
初めてフフッと笑い声を漏らした。
「こんなに真剣なアスカ見たの、初めてかも」
「そりゃあ、真剣にもなりますよ」
このタイミングで投下された
思わぬ茶化しに、私は少し口を尖らせた。
「でも、ありがとう。
アスカに話して、本当によかった」
「私の方こそ、
話してくれてありがとうございます」
「……依頼、だっけ。お願いしてもいい?」
遠慮がちに聞くルミさん。
私の答えは、一つに決まっていた。
「はい。お任せください」
「ありがとう」
その後、私達は今後の流れを相談した。
彼氏さんの基本情報を教えてもらい、
情報提供を求めるチラシを
後で送ってもらう約束をし、
今日のところはそれで解散となった。
「それじゃ、アスカ。また連絡するね」
「はい。また、いつでも来てくださいね」
「うん。また来る」
私に見送られながら
T駅に向かうルミさんの足取りは、
先程までとはうって変わって
力強いものに変わっていた。
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