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二章 アスカとルミ②
二 ありがとう 二(改)
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二人暮らしともなると
日用品の消耗も早まる。
単純計算で二倍。
今日はルミが買い出しに
行ってくれるということなので、
私はお言葉に甘えることにした。
「……なんか、すごく静か」
久し振りに
私一人で店に立つ昼下がり。
ルミと過ごした一週間は、
私が静寂と過ごした二年間を
あっさりと塗り潰してしまった。
一人だった頃の私は、
どうやってこの時間を
過ごしていたのだろう。
外に出てみる?
それともテレビ?
どれもいまいち気が乗らない。
静けさを燃料に
思考は加速していく。
と言っても、全く前に進まず、
独楽のように
その場で回転しているだけだ。
ただただルミのことを考えて、
足踏みをひたすら繰り返す。
「ビラ、配ってこよう」
カウンターの片隅に
積まれている捜索願のビラの束。
それを半分程手に取り、
私は店の外に出た。
『東口でビラ配りをしています。
ご用件の方は電話か、
直接東口にお越しください』
と店の入り口に貼り紙をし、
いざ出発。
しかし、歩道に出たその瞬間、
靴の裏に固い感触。
足を上げると、
そこには鍵の束が落ちていた。
「あらー」
家と車と、その他諸々。
これは交番に
届けないといけない。
落とし主も相当
困っていることだろうし。
「熊田さん、いるかな」
非番……とか言うんだっけ、
休みじゃなければいるはずだ。
私は鍵を拾い上げ、
東口の駅前交番に向かった。
「……ん? あれ熊田さんかな」
交番の前に制服警官が立っていた。
誰かと話している。
まだいくらか距離があるから、
警官が誰なのかはわからない。
「こんにちはー」
「ああ穂波さん、
ちょうどよかった」
声をかけると、
向こうも私に気が付いた。
交番の前にいたのは、
やはり熊田さんだった。
彼は私の姿を認めると、
手招きで私を呼び寄せた。
「ちょうど店に
行こうと思ってたんだよ。
彼が来てくれたからさ」
「尊さん……来てたんですか」
「うん、こんにちは」
熊田さんと話していた人物は、
ルミのお兄さん──尊さんだった。
仕事の都合でT市に来たのだと、
熊田さんが教えてくれた。
なるほど、だから
事前に連絡がなかったのか。
「それ、秋文君のビラ?」
尊さんが私の小脇を指差した。
「はい。これから配ろうかと思って」
「そっか。すまないね、何枚も何枚も」
「いえ、そんな……」
ズキッと心に痛みが走る。
この人は、私の本性を知ったら
何て言うだろう。
「瑠美子のことも、ありがとう。
迷惑かけてないか?」
「迷惑なんて……むしろ、助かってます。
今日は買い出しに行ってくれてて」
「ああ、そう言えば
そんなこと言ってたな。
実はここに来る前に
スーパーに寄ったんだけど、
そこに偶然瑠美子がいてさ」
「会ったんですか?」
「ああ、会ったよ」
その言葉と同時に、
彼の顔から笑みがスッと消えた。
そして、視線がフッと青空に向かった。
「久し振りに、
瑠美子の笑った顔を見たよ。
それまではずっと……
ずっと落ち込んでて、でも俺達は
なにもしてやれなくて……
穂波さんがいなかったらあいつは今も……」
「そんな、私はなにも──」
尊さんの言葉を否定しようとする私を、
熊田さんが優しく制す。
熊田さんに首を横に振られ、
思わず私は苦々しい表情を浮かべた。
そんな私に、尊さんは深々と頭を下げた。
「貴方のお陰で、
瑠美子はまた笑うことができた。
本当にありがとう。
……それと、もうしばらく妹を頼む」
差し出された彼の言葉。
それに向かって手を伸ばす私を、
別の私が羽交い締めにする。
真っ直ぐな感謝の言葉を
素直に受け止められない。
私がどうにか「……はい」と絞り出すと、
尊さんは私と熊田さんに会釈をして、
そのまま帰っていった。
まだ仕事の用が終わっていないのだと、
そう言い残して。
「さて、穂波さん。
その鍵は落とし物かな?」
「──あ、はい。
店の前の歩道に落ちてて」
「じゃあこっちで預かるよ。
手続きするから、ほら」
すっかり忘れていた鍵の存在。
今の今まで、
この重さすら感じていなかった。
交番で始まった手続き。
はっきり言って、少し面倒だった。
渡して終わりじゃないんだと、
私は初めて知った。
「……ルミちゃんとなにかあった?」
書類を書いている最中、
熊田さんが急に問い掛けてきた。
投げ掛けられた問いに、
ボールペンを走らせる私の手が止まる。
「なんで……ですか?」
「少し、様子が変だったからさ。
気のせいならそれでいいんだけど、
もし本当になにかあったのなら、
話を聞くくらいならできると思ってね」
熊田さんが見透かすように
私のことを見ていた。
年の功か、それとも私がわかりやすいのか、
誤魔化すのは無理だと私は悟った。
「……私、今のままで……いいんでしょうか」
立ち止まったボールペンが、
紙にインクを滲ませていく。
「今のまま、というのは?」
「実は──」
私は、
最初は純粋に彼氏さんの身を案じていた。
いや、そう思い込んでいた。
あの日に剥がれた化けの皮。
私が本当に危惧していたのは、
失踪した彼氏さんの死亡ではなく、
それがもたらすルミの笑顔の喪失。
世間一般が考える最悪の結末は
彼氏さんの無言の帰宅なんだろうけど、
私にとってはルミが
笑えなくなることの方が一大事なんだ。
「だから、私は鮫島さんのことなんて
全然心配してないんです。
むしろ、どうでもいいって……」
彼氏さんが生きて帰ってくることが
ルミの笑顔を取り戻す特効薬だ。
けど、それ以外の方法でも
彼女の笑顔を取り戻せるとしたら、
私はこのビラの束をどうするだろう。
「ルミは、こんな私を受け入れてくれた。
側にいたいって言ってくれた。
でも、本当は心の奥底で
私のことを軽蔑してるんじゃないかって、
それが怖くて……。だから、
彼氏さんのことをちゃんと考えなきゃって、
そう思ってるのに……私は……」
こんな状況でも、
私の脳は冷静さを手放さなかった。
ルミの見ている不思議な夢については、
その全てを胸の奥底に閉じ込めた。
話しても信じてもらえないだろうから。
私達を取り囲む空気が、
重く濃密に張り詰める。
粘度の高い液体は私の全身を包み込み、
布団を圧縮するかのように密着してくる。
まるで、全身が心臓に
なったかのような心地で、
鼓動が私を酔わせにくる。
「……穂波さんは、尊くんが
話していたことを覚えてるかい?」
「尊さんが?」
私の脳は忘れていなかった。
尊さんからの「ありがとう」と、
その言葉が贈られた理由を。
「ルミちゃんがまた笑えるようになったのは、
少なくとも今の穂波さんが
いたからじゃないのかな」
「でも……」
ペンを握る手に力がこもる。
ペン先が滑り、
インクの滲んだ紙が音もなく破けた。
熊田さんの重いため息が頭上から降り注ぎ、
ギリリと歯軋りが響く。
「……こういう話は、
あまりしたくないんだけどね」
トントンと音がして、私の意識が
熊田さんの指先に向けられた。
上昇していく指先を目で追っていくと、
そこにあったのは熊田さんの両目だ。
「俺もね、鮫島秋文のことは
どうでもいいと思ってるんだよ」
「え……」
「生きていてほしいとは思ってる。
でもそれは、彼が死体で
見付かりでもすれば、
警察の評判に傷が付くからだ。
無能だの、怠慢だのってね。
だから、みんな必死になって
行方を捜してる。もちろん、
警官全員がそうってわけじゃない。
でもね、少なくないと俺は思うよ」
開いた口が塞がらなかった。
警察官ともあろう人がそんな考えを
抱いていることが信じられなくて、
でも自分と似た考えの人が
いることが救いでもあって、
相反する思考が私の体をざわつかせる。
わなわなと震える私の目を見詰めながら、
熊田さんはまた口を開いた。
「自分や組織の評判しか
考えてない俺と違って、穂波さんは
ルミちゃんのことを心から心配し、
彼女のために動いてる。
そんな君を、どうして彼女が軽蔑するんだ?
ルミちゃんは言ったんだろう?
穂波さんの側にいたいと」
「それはそうですけど……」
「もしあれなら、もう一度
ルミちゃんと話してみるといい。
お互い納得できるまで。
一人で悩んでいても、なにも変わらない。
変わるとしても、酷く遠回りの道になる」
話す、ルミともう一度。
簡単に言ってくれるけど、
それをするのにどれ程の勇気が必要なのか
この人はわかっているのかな。
黙りこくる私には目もくれず、
熊田さんは「そろそろ戻らきゃな」と
独り言のように呟きながら
交番の方に戻っていく。
「俺からの助言はここまでだ」
彼の背中が
そう語っているような気がした。
日用品の消耗も早まる。
単純計算で二倍。
今日はルミが買い出しに
行ってくれるということなので、
私はお言葉に甘えることにした。
「……なんか、すごく静か」
久し振りに
私一人で店に立つ昼下がり。
ルミと過ごした一週間は、
私が静寂と過ごした二年間を
あっさりと塗り潰してしまった。
一人だった頃の私は、
どうやってこの時間を
過ごしていたのだろう。
外に出てみる?
それともテレビ?
どれもいまいち気が乗らない。
静けさを燃料に
思考は加速していく。
と言っても、全く前に進まず、
独楽のように
その場で回転しているだけだ。
ただただルミのことを考えて、
足踏みをひたすら繰り返す。
「ビラ、配ってこよう」
カウンターの片隅に
積まれている捜索願のビラの束。
それを半分程手に取り、
私は店の外に出た。
『東口でビラ配りをしています。
ご用件の方は電話か、
直接東口にお越しください』
と店の入り口に貼り紙をし、
いざ出発。
しかし、歩道に出たその瞬間、
靴の裏に固い感触。
足を上げると、
そこには鍵の束が落ちていた。
「あらー」
家と車と、その他諸々。
これは交番に
届けないといけない。
落とし主も相当
困っていることだろうし。
「熊田さん、いるかな」
非番……とか言うんだっけ、
休みじゃなければいるはずだ。
私は鍵を拾い上げ、
東口の駅前交番に向かった。
「……ん? あれ熊田さんかな」
交番の前に制服警官が立っていた。
誰かと話している。
まだいくらか距離があるから、
警官が誰なのかはわからない。
「こんにちはー」
「ああ穂波さん、
ちょうどよかった」
声をかけると、
向こうも私に気が付いた。
交番の前にいたのは、
やはり熊田さんだった。
彼は私の姿を認めると、
手招きで私を呼び寄せた。
「ちょうど店に
行こうと思ってたんだよ。
彼が来てくれたからさ」
「尊さん……来てたんですか」
「うん、こんにちは」
熊田さんと話していた人物は、
ルミのお兄さん──尊さんだった。
仕事の都合でT市に来たのだと、
熊田さんが教えてくれた。
なるほど、だから
事前に連絡がなかったのか。
「それ、秋文君のビラ?」
尊さんが私の小脇を指差した。
「はい。これから配ろうかと思って」
「そっか。すまないね、何枚も何枚も」
「いえ、そんな……」
ズキッと心に痛みが走る。
この人は、私の本性を知ったら
何て言うだろう。
「瑠美子のことも、ありがとう。
迷惑かけてないか?」
「迷惑なんて……むしろ、助かってます。
今日は買い出しに行ってくれてて」
「ああ、そう言えば
そんなこと言ってたな。
実はここに来る前に
スーパーに寄ったんだけど、
そこに偶然瑠美子がいてさ」
「会ったんですか?」
「ああ、会ったよ」
その言葉と同時に、
彼の顔から笑みがスッと消えた。
そして、視線がフッと青空に向かった。
「久し振りに、
瑠美子の笑った顔を見たよ。
それまではずっと……
ずっと落ち込んでて、でも俺達は
なにもしてやれなくて……
穂波さんがいなかったらあいつは今も……」
「そんな、私はなにも──」
尊さんの言葉を否定しようとする私を、
熊田さんが優しく制す。
熊田さんに首を横に振られ、
思わず私は苦々しい表情を浮かべた。
そんな私に、尊さんは深々と頭を下げた。
「貴方のお陰で、
瑠美子はまた笑うことができた。
本当にありがとう。
……それと、もうしばらく妹を頼む」
差し出された彼の言葉。
それに向かって手を伸ばす私を、
別の私が羽交い締めにする。
真っ直ぐな感謝の言葉を
素直に受け止められない。
私がどうにか「……はい」と絞り出すと、
尊さんは私と熊田さんに会釈をして、
そのまま帰っていった。
まだ仕事の用が終わっていないのだと、
そう言い残して。
「さて、穂波さん。
その鍵は落とし物かな?」
「──あ、はい。
店の前の歩道に落ちてて」
「じゃあこっちで預かるよ。
手続きするから、ほら」
すっかり忘れていた鍵の存在。
今の今まで、
この重さすら感じていなかった。
交番で始まった手続き。
はっきり言って、少し面倒だった。
渡して終わりじゃないんだと、
私は初めて知った。
「……ルミちゃんとなにかあった?」
書類を書いている最中、
熊田さんが急に問い掛けてきた。
投げ掛けられた問いに、
ボールペンを走らせる私の手が止まる。
「なんで……ですか?」
「少し、様子が変だったからさ。
気のせいならそれでいいんだけど、
もし本当になにかあったのなら、
話を聞くくらいならできると思ってね」
熊田さんが見透かすように
私のことを見ていた。
年の功か、それとも私がわかりやすいのか、
誤魔化すのは無理だと私は悟った。
「……私、今のままで……いいんでしょうか」
立ち止まったボールペンが、
紙にインクを滲ませていく。
「今のまま、というのは?」
「実は──」
私は、
最初は純粋に彼氏さんの身を案じていた。
いや、そう思い込んでいた。
あの日に剥がれた化けの皮。
私が本当に危惧していたのは、
失踪した彼氏さんの死亡ではなく、
それがもたらすルミの笑顔の喪失。
世間一般が考える最悪の結末は
彼氏さんの無言の帰宅なんだろうけど、
私にとってはルミが
笑えなくなることの方が一大事なんだ。
「だから、私は鮫島さんのことなんて
全然心配してないんです。
むしろ、どうでもいいって……」
彼氏さんが生きて帰ってくることが
ルミの笑顔を取り戻す特効薬だ。
けど、それ以外の方法でも
彼女の笑顔を取り戻せるとしたら、
私はこのビラの束をどうするだろう。
「ルミは、こんな私を受け入れてくれた。
側にいたいって言ってくれた。
でも、本当は心の奥底で
私のことを軽蔑してるんじゃないかって、
それが怖くて……。だから、
彼氏さんのことをちゃんと考えなきゃって、
そう思ってるのに……私は……」
こんな状況でも、
私の脳は冷静さを手放さなかった。
ルミの見ている不思議な夢については、
その全てを胸の奥底に閉じ込めた。
話しても信じてもらえないだろうから。
私達を取り囲む空気が、
重く濃密に張り詰める。
粘度の高い液体は私の全身を包み込み、
布団を圧縮するかのように密着してくる。
まるで、全身が心臓に
なったかのような心地で、
鼓動が私を酔わせにくる。
「……穂波さんは、尊くんが
話していたことを覚えてるかい?」
「尊さんが?」
私の脳は忘れていなかった。
尊さんからの「ありがとう」と、
その言葉が贈られた理由を。
「ルミちゃんがまた笑えるようになったのは、
少なくとも今の穂波さんが
いたからじゃないのかな」
「でも……」
ペンを握る手に力がこもる。
ペン先が滑り、
インクの滲んだ紙が音もなく破けた。
熊田さんの重いため息が頭上から降り注ぎ、
ギリリと歯軋りが響く。
「……こういう話は、
あまりしたくないんだけどね」
トントンと音がして、私の意識が
熊田さんの指先に向けられた。
上昇していく指先を目で追っていくと、
そこにあったのは熊田さんの両目だ。
「俺もね、鮫島秋文のことは
どうでもいいと思ってるんだよ」
「え……」
「生きていてほしいとは思ってる。
でもそれは、彼が死体で
見付かりでもすれば、
警察の評判に傷が付くからだ。
無能だの、怠慢だのってね。
だから、みんな必死になって
行方を捜してる。もちろん、
警官全員がそうってわけじゃない。
でもね、少なくないと俺は思うよ」
開いた口が塞がらなかった。
警察官ともあろう人がそんな考えを
抱いていることが信じられなくて、
でも自分と似た考えの人が
いることが救いでもあって、
相反する思考が私の体をざわつかせる。
わなわなと震える私の目を見詰めながら、
熊田さんはまた口を開いた。
「自分や組織の評判しか
考えてない俺と違って、穂波さんは
ルミちゃんのことを心から心配し、
彼女のために動いてる。
そんな君を、どうして彼女が軽蔑するんだ?
ルミちゃんは言ったんだろう?
穂波さんの側にいたいと」
「それはそうですけど……」
「もしあれなら、もう一度
ルミちゃんと話してみるといい。
お互い納得できるまで。
一人で悩んでいても、なにも変わらない。
変わるとしても、酷く遠回りの道になる」
話す、ルミともう一度。
簡単に言ってくれるけど、
それをするのにどれ程の勇気が必要なのか
この人はわかっているのかな。
黙りこくる私には目もくれず、
熊田さんは「そろそろ戻らきゃな」と
独り言のように呟きながら
交番の方に戻っていく。
「俺からの助言はここまでだ」
彼の背中が
そう語っているような気がした。
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