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五章 アスカとルミ③
四 そして、私達は ─二〇一九年 五月十一日─ 四
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私はいつ眠ったのだろう。
本当に眠ったのだろうか。
たっぷりぐっすり眠った感じはするけど、
一睡もできなかった時みたいに頭が重い。
「……何時?」
半分寝ている頭が、違和感を抱く。
私の朝に何かが足りない。
そんな気がする。
何だっけ。
何か、もっと寒かったような。
でも、五月だから有り得ないよね。
気温もポカポカで、冷房もいらない。
じゃあ、なんで寒かったんだろう。
冷房じゃないなら、
水に濡れるくらいしか──
「──ルミ?」
隣にルミがいなかった。
いつも私の中で啜り泣いていたルミが、
今朝は隣にいない。
あるのは、濡れた枕だけだ。
「あ、起きた?」
呆然とする私を呼んだのは、
クスクスと笑うルミの温かい声だった。
朝日がルミを照らしている。
晴れ渡る空を泳ぐ、白い雲。
彼女の悪戯っ子のような笑みが
太陽に負けないくらい輝いていた。
「アスカ、今までありがとう。
私はもう……大丈夫」
「ルミ……」
「アッくんを探す。もう逃げない」
ルミが、私の手を取った。
今日まで続けてきた
依頼の終わりを示す彼女の決意。
その瞬間、粉々に握り潰される
私が私にかけていた魔法。
私は、ルミの笑顔が見たかった。
彼氏さんを諦めて、
彼氏さんのいない日常を生きる。
そんなルミを見たくなかった。
穴の開いた空っぽの心で
笑ってほしくなかった。
それなのに、私は……
どうして、気付かなかったんだろう。
私が取り戻したと思っていたルミの笑顔は、
私が見たくなかったはずの笑顔だったんだ。
そうだよ。
今のルミは、まだ元通りじゃない。
私が元に戻すんだ。
ルミの本当の笑顔を取り戻すんだ。
「だから、アスカ。
また私に力を貸してくれないかな?」
私は答えた。
「今日から動くよ」
私は道を踏み外した。
本来の使命を忘れて、
越えてはいけない一線を越えた。
けど、ルミはずっと一緒にいてくれた。
私と一緒にいてくれた。
そんな彼女が、前を向いた。
歩き出した。
でも、私を置いていこうとはしない。
追い付くのを待ってくれている。
追い付いたら、私はどこに立てばいい?
考えるまでもない。
私が立つべきは、ルミの隣だ。
私達はもう見詰め合うことはないだろう。
同じゴールを見据えているのだから。
本当に眠ったのだろうか。
たっぷりぐっすり眠った感じはするけど、
一睡もできなかった時みたいに頭が重い。
「……何時?」
半分寝ている頭が、違和感を抱く。
私の朝に何かが足りない。
そんな気がする。
何だっけ。
何か、もっと寒かったような。
でも、五月だから有り得ないよね。
気温もポカポカで、冷房もいらない。
じゃあ、なんで寒かったんだろう。
冷房じゃないなら、
水に濡れるくらいしか──
「──ルミ?」
隣にルミがいなかった。
いつも私の中で啜り泣いていたルミが、
今朝は隣にいない。
あるのは、濡れた枕だけだ。
「あ、起きた?」
呆然とする私を呼んだのは、
クスクスと笑うルミの温かい声だった。
朝日がルミを照らしている。
晴れ渡る空を泳ぐ、白い雲。
彼女の悪戯っ子のような笑みが
太陽に負けないくらい輝いていた。
「アスカ、今までありがとう。
私はもう……大丈夫」
「ルミ……」
「アッくんを探す。もう逃げない」
ルミが、私の手を取った。
今日まで続けてきた
依頼の終わりを示す彼女の決意。
その瞬間、粉々に握り潰される
私が私にかけていた魔法。
私は、ルミの笑顔が見たかった。
彼氏さんを諦めて、
彼氏さんのいない日常を生きる。
そんなルミを見たくなかった。
穴の開いた空っぽの心で
笑ってほしくなかった。
それなのに、私は……
どうして、気付かなかったんだろう。
私が取り戻したと思っていたルミの笑顔は、
私が見たくなかったはずの笑顔だったんだ。
そうだよ。
今のルミは、まだ元通りじゃない。
私が元に戻すんだ。
ルミの本当の笑顔を取り戻すんだ。
「だから、アスカ。
また私に力を貸してくれないかな?」
私は答えた。
「今日から動くよ」
私は道を踏み外した。
本来の使命を忘れて、
越えてはいけない一線を越えた。
けど、ルミはずっと一緒にいてくれた。
私と一緒にいてくれた。
そんな彼女が、前を向いた。
歩き出した。
でも、私を置いていこうとはしない。
追い付くのを待ってくれている。
追い付いたら、私はどこに立てばいい?
考えるまでもない。
私が立つべきは、ルミの隣だ。
私達はもう見詰め合うことはないだろう。
同じゴールを見据えているのだから。
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