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六章 アスカと不思議な夢
二 失敗ケーキ ─二〇一九年 五月十二日─ 二
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依頼人の場所に向かいながら、
私は時刻を確認する。
午前十一時を少し過ぎていた。
ルミの出発は午後一時。
見送りをしたかったけど、
その時間までに依頼を終わらせるのは
はっきり言って不可能だ。
彼氏さんを捜す。
そう決意したルミは、
一度C県の自宅に戻ると宣言した。
二人で日々を過ごした場所で、
夢に乗せられた思いに気付けた今なら、
夢に変化が現れるかもしれない。
そう考えての行動だ。
今日のところは、
向こうで昼寝だけして
こっちに戻るつもりらしいけど、
何時頃になるのかな。
この依頼が終わったら連絡してみよう。
依頼人の家に辿り着いた私は、
今日の予定を組み立てながら
インターホンをグッと押し込んだ。
応答があり、私が用件を伝えると、
『少々お待ちください』と通話が切れる。
玄関前に庭が広がる二階建ての一軒家。
駐車場には白い車が一台。
最近流行りのコンパクトカーだ。
その隣にはもう一台分の空きがある。
通勤用の車があるのかなと考えていると、
玄関が開いて依頼人の田中さんが
出迎えてくれた。
軽く挨拶を交わしてから
家の中にお邪魔すると、
他人の家の匂いが鼻をくすぐった。
「ごめんなさいねぇ、こんなこと頼んで」
「いえ、どんな依頼でも大歓迎です」
来客用のスリッパを並べながら、
田中さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「琴実、出てらっしゃい。
何でも屋さん来てくれたよ」
田中さんが
玄関脇の階段に向かって呼び掛けると、
扉を開ける音が小さく聞こえてきた。
そして、力のない足音が
ゆっくりと階段を下りてきた。
「ほら、ちゃんと挨拶して」
階段を下りてきたのは、
目元を腫らした女子高生くらいの女の子。
寝癖まみれのショートヘアに、
全身を包むグレーのスウェット。
そんな姿でも、
彼女の普段の愛らしさは顔を覗かせていた。
その女の子──琴実さんは
階段の三段目で足を止めると、
会釈だけして再び二階に戻っていった。
「ケーキ、できたら呼ぶからね」
「……うん」
琴実さんの返事は、
辛うじて聞こえてくるくらい小さかった。
「琴実さん、体調崩してるんですか?」
そう思った私だったけど、
田中さんは首を横に振る。
「落ち込んでるんです。先月、
仲の良かった友達を亡くしてしまって」
「友達を……ですか」
「隣の家の子だったんだけど、
家族だけでの密葬だったから
お別れも言えなかったのよね」
「密葬?」
「その子、事故に遭ってね。
損傷が激しかったみたいで」
「それは、とても辛いですね……」
「──って、ごめんなさいね。
玄関先でこんな話聞かせちゃって。
ほら、あがってあがって」
田中さんに促され、私は靴を脱いだ。
スニーカーに密着されていた足が、
今度はスリッパの空間を持て余す。
すっぽ抜けてしまわぬように
一歩を踏み出すと、
階段の向こうの二階を包む薄暗い闇が
私とことをじっと見ていた。
「ところで……」
事前に聞かされていた依頼は、
娘──琴実さんを元気付けるために
ケーキを作ってあげてほしい
というものだった。
「私はどんなケーキを作ればいいですか?」
自前のエプロンを身に付けて、
私は田中さんに尋ねた。
ケーキの材料は
田中さんの方で用意してくれている。
けど、作ってほしいケーキが何なのか、
私はまだ聞かされていないのだ。
仲の良かった友達を亡くし、
酷く落ち込んでいた琴実さん。
そんな彼女を元気付けるためのケーキ。
一応、一通りのケーキは作れるから
どんな注文でもどんと来いなんだけど──
「失敗したスフレパンケーキ、
というものなんですけど……」
そんな名前のケーキは
聞いたことがなかった。
スフレパンケーキではなく、
“失敗した”スフレパンケーキ。
名前からして
作るのに失敗しちゃったスフレパンケーキ
なんだろうけど。
「普通のじゃ駄目なんですか?」
「みたいです。
友達との思い出のケーキだからって
琴実は言ってました」
「なるほど、思い出の……」
一緒に作って、失敗して、
それはそれで良い思い出になった
ということかな。
亡くなった友達との思い出のケーキ。
何としてでも作ってあげたい。
けど、これはとても難しい依頼だ。
成功例は一つしか存在しないのに対し、
失敗例は無限に存在する。
田中さんも、失敗すればいいのかと
何度か作ってみたそうだけど、
琴実さんを納得させることは
遂にできなかったと言う。
「わかりました。
時間の許す限りやってみます」
「よろしくお願いします。
キッチン、好きに使ってください」
スフレパンケーキ自体は
何度か作ったことがある。
失敗だって何度も経験した。
材料と時間の許す限り、
何度だって挑戦してみよう。
腕を捲って気合いを入れ、
私は調理に取り掛かった。
「卵、卵……あったあった」
他人の家の冷蔵庫。
さすがに卵の位置はどこも同じらしい。
「……ん?」
卵を取り出して冷蔵庫を閉めようとした時、
あるものが私の目に留まった。
「田中さん、メープルシロップの
新しいやつってありますか?」
逆さまに置いておかなきゃ
使えなさそうなほどに少ないシロップ。
田中さんも何度かスフレパンケーキに
挑戦していたみたいだし、
それを全部食べたとなれば、
シロップが無くなるのも当然だ。
「あらぁ、私ったら見落としてたわ。
ちょっと今から買ってくるわね」
「わかりました。お気を付けて」
財布を片手に飛び出していく
田中さんを見送っていると、
二階から静かな足音が聞こえてきた。
「……お母さん、買い物?」
「メープルシロップを買いに行きました」
「ふうん……」
琴実さんは今度は部屋に戻らず、
キッチンに戻る私の後をついてきた。
リビングを見渡せるカウンターキッチン。
琴実さんはソファーに腰を下ろし、
両膝を胸元に抱き寄せていた。
私の作業を見学するでもなく、
テレビや漫画を見るでもなく、
その目は窓の向こうの空に向いている。
「……ねぇ」
元気のない声が私を呼んだ。
窓の外に向けられていた目が、
いつの間にか私を見ていた。
「なんでしょうか?」
「何でも屋って、
ほんとに何でもしてくれるの?」
「厳密には何でもじゃないかな。詳しいことは
SNSとかホームページに書いてあるけど、
受けられない依頼とかもありますよ」
「ふうん……」
「なにか、依頼したいことがあるんですか?」
そう聞くと、
琴実さんはまた窓の向こうに目を向けた。
スウェットの膝部分の布が、
彼女の手に握り潰されていく。
「麗花の死を……調べてほしい」
彼女が絞り出した依頼には、
聞いたことのない名前が入っていた。
でも、それが誰なのか、
私はすぐに察しがついた。
「麗花って、もしかしてお隣の?
先月に、事故で亡くなった──」
「麗花は事故じゃない!」
耳をつんざくような叫びとともに、
琴実さんの怒りの形相が私を貫いた。
驚きで固まる私は、
今にも泣きそうな琴実さんから
目を離すことができなかった。
玄関の扉が開くまでの数秒間、
私達の時間は確かに止まっていた。
「ただいま。あら、琴実こっちにいたの。
穂波さんとなに話してたの?
ちょっと、琴実! どこ行くの!」
琴実さんは泣き出しそうな顔のまま、
田中さんを押し退けて
リビングから出ていった。
残されたのはいまだ固まる私と、
状況が理解できない田中さん。
「──ご、ごめんなさいねぇ。
もう、どうしたのかしら」
ハンドバッグからメープルシロップを
取り出す田中さんの目が、
私とリビングの扉を行ったり来たり。
シロップのパッケージには
見慣れたコンビニのマーク。
どうやら、すぐそこのコンビニで
買ってきたらしい。
どうりで妙に早かったわけだ。
先の事態を処理しきれない脳が、
別のことを意識し始めた。
でも、それじゃ駄目だ。
「……田中さん。琴実さんのことで、
一つ聞いてもいいですか」
「琴実のことで?」
「さっき、琴実さんが言ってたんです。
麗花さんの死は事故じゃないって」
田中さんの目が見開かれた。
「あの子……まだそんなこと……」
頭を抱える田中さんは、
我が子の愚行を嘆いているようにも見えた。
これから学校に、
はたまた万引きをしたコンビニに
謝りに行くかのような。
「麗花ちゃんが亡くなった次の日からよ。
琴実がそう言い出したのは」
四月十一日からだと、田中さんは言う。
「実際は……どうなんですか?」
「あのね、私達はご両親から事故だと
聞かされてるの。ただ単に“事故”とだけ。
それをあなた、食い下がれる?」
私は何も答えられなかった。
麗花さんのご両親、
田中さん、琴実さん。
誰の思いも否定できなかった。
大切な人を亡くした痛みは想像を絶する。
その経験がない私でさえ、
その辛さは容易に理解できる。
麗花さんのご両親は、
そっとしておいてほしくて、
根掘り葉掘り聞かれたくなくて、
極めて簡潔に事実だけを伝えたのだろう。
でも、琴実さんは納得できなかった。
大切な友人の死が信じられなくて、
受け入れたくなくて、
だから『事故じゃない』と──
『麗花は事故じゃない!』
事故じゃないなら……なに?
「今は、そっとしといてあげるのが一番よ。
いずれ、時間が解決してくれるから」
そう言って、
田中さんはリビングを後にした。
一人残り、
話し相手のいなくなった私の脳に
琴実さんの言葉が反響していく。
一瞬たりとも気を逸らせぬまま、
私はケーキを作り続けた。
私は時刻を確認する。
午前十一時を少し過ぎていた。
ルミの出発は午後一時。
見送りをしたかったけど、
その時間までに依頼を終わらせるのは
はっきり言って不可能だ。
彼氏さんを捜す。
そう決意したルミは、
一度C県の自宅に戻ると宣言した。
二人で日々を過ごした場所で、
夢に乗せられた思いに気付けた今なら、
夢に変化が現れるかもしれない。
そう考えての行動だ。
今日のところは、
向こうで昼寝だけして
こっちに戻るつもりらしいけど、
何時頃になるのかな。
この依頼が終わったら連絡してみよう。
依頼人の家に辿り着いた私は、
今日の予定を組み立てながら
インターホンをグッと押し込んだ。
応答があり、私が用件を伝えると、
『少々お待ちください』と通話が切れる。
玄関前に庭が広がる二階建ての一軒家。
駐車場には白い車が一台。
最近流行りのコンパクトカーだ。
その隣にはもう一台分の空きがある。
通勤用の車があるのかなと考えていると、
玄関が開いて依頼人の田中さんが
出迎えてくれた。
軽く挨拶を交わしてから
家の中にお邪魔すると、
他人の家の匂いが鼻をくすぐった。
「ごめんなさいねぇ、こんなこと頼んで」
「いえ、どんな依頼でも大歓迎です」
来客用のスリッパを並べながら、
田中さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「琴実、出てらっしゃい。
何でも屋さん来てくれたよ」
田中さんが
玄関脇の階段に向かって呼び掛けると、
扉を開ける音が小さく聞こえてきた。
そして、力のない足音が
ゆっくりと階段を下りてきた。
「ほら、ちゃんと挨拶して」
階段を下りてきたのは、
目元を腫らした女子高生くらいの女の子。
寝癖まみれのショートヘアに、
全身を包むグレーのスウェット。
そんな姿でも、
彼女の普段の愛らしさは顔を覗かせていた。
その女の子──琴実さんは
階段の三段目で足を止めると、
会釈だけして再び二階に戻っていった。
「ケーキ、できたら呼ぶからね」
「……うん」
琴実さんの返事は、
辛うじて聞こえてくるくらい小さかった。
「琴実さん、体調崩してるんですか?」
そう思った私だったけど、
田中さんは首を横に振る。
「落ち込んでるんです。先月、
仲の良かった友達を亡くしてしまって」
「友達を……ですか」
「隣の家の子だったんだけど、
家族だけでの密葬だったから
お別れも言えなかったのよね」
「密葬?」
「その子、事故に遭ってね。
損傷が激しかったみたいで」
「それは、とても辛いですね……」
「──って、ごめんなさいね。
玄関先でこんな話聞かせちゃって。
ほら、あがってあがって」
田中さんに促され、私は靴を脱いだ。
スニーカーに密着されていた足が、
今度はスリッパの空間を持て余す。
すっぽ抜けてしまわぬように
一歩を踏み出すと、
階段の向こうの二階を包む薄暗い闇が
私とことをじっと見ていた。
「ところで……」
事前に聞かされていた依頼は、
娘──琴実さんを元気付けるために
ケーキを作ってあげてほしい
というものだった。
「私はどんなケーキを作ればいいですか?」
自前のエプロンを身に付けて、
私は田中さんに尋ねた。
ケーキの材料は
田中さんの方で用意してくれている。
けど、作ってほしいケーキが何なのか、
私はまだ聞かされていないのだ。
仲の良かった友達を亡くし、
酷く落ち込んでいた琴実さん。
そんな彼女を元気付けるためのケーキ。
一応、一通りのケーキは作れるから
どんな注文でもどんと来いなんだけど──
「失敗したスフレパンケーキ、
というものなんですけど……」
そんな名前のケーキは
聞いたことがなかった。
スフレパンケーキではなく、
“失敗した”スフレパンケーキ。
名前からして
作るのに失敗しちゃったスフレパンケーキ
なんだろうけど。
「普通のじゃ駄目なんですか?」
「みたいです。
友達との思い出のケーキだからって
琴実は言ってました」
「なるほど、思い出の……」
一緒に作って、失敗して、
それはそれで良い思い出になった
ということかな。
亡くなった友達との思い出のケーキ。
何としてでも作ってあげたい。
けど、これはとても難しい依頼だ。
成功例は一つしか存在しないのに対し、
失敗例は無限に存在する。
田中さんも、失敗すればいいのかと
何度か作ってみたそうだけど、
琴実さんを納得させることは
遂にできなかったと言う。
「わかりました。
時間の許す限りやってみます」
「よろしくお願いします。
キッチン、好きに使ってください」
スフレパンケーキ自体は
何度か作ったことがある。
失敗だって何度も経験した。
材料と時間の許す限り、
何度だって挑戦してみよう。
腕を捲って気合いを入れ、
私は調理に取り掛かった。
「卵、卵……あったあった」
他人の家の冷蔵庫。
さすがに卵の位置はどこも同じらしい。
「……ん?」
卵を取り出して冷蔵庫を閉めようとした時、
あるものが私の目に留まった。
「田中さん、メープルシロップの
新しいやつってありますか?」
逆さまに置いておかなきゃ
使えなさそうなほどに少ないシロップ。
田中さんも何度かスフレパンケーキに
挑戦していたみたいだし、
それを全部食べたとなれば、
シロップが無くなるのも当然だ。
「あらぁ、私ったら見落としてたわ。
ちょっと今から買ってくるわね」
「わかりました。お気を付けて」
財布を片手に飛び出していく
田中さんを見送っていると、
二階から静かな足音が聞こえてきた。
「……お母さん、買い物?」
「メープルシロップを買いに行きました」
「ふうん……」
琴実さんは今度は部屋に戻らず、
キッチンに戻る私の後をついてきた。
リビングを見渡せるカウンターキッチン。
琴実さんはソファーに腰を下ろし、
両膝を胸元に抱き寄せていた。
私の作業を見学するでもなく、
テレビや漫画を見るでもなく、
その目は窓の向こうの空に向いている。
「……ねぇ」
元気のない声が私を呼んだ。
窓の外に向けられていた目が、
いつの間にか私を見ていた。
「なんでしょうか?」
「何でも屋って、
ほんとに何でもしてくれるの?」
「厳密には何でもじゃないかな。詳しいことは
SNSとかホームページに書いてあるけど、
受けられない依頼とかもありますよ」
「ふうん……」
「なにか、依頼したいことがあるんですか?」
そう聞くと、
琴実さんはまた窓の向こうに目を向けた。
スウェットの膝部分の布が、
彼女の手に握り潰されていく。
「麗花の死を……調べてほしい」
彼女が絞り出した依頼には、
聞いたことのない名前が入っていた。
でも、それが誰なのか、
私はすぐに察しがついた。
「麗花って、もしかしてお隣の?
先月に、事故で亡くなった──」
「麗花は事故じゃない!」
耳をつんざくような叫びとともに、
琴実さんの怒りの形相が私を貫いた。
驚きで固まる私は、
今にも泣きそうな琴実さんから
目を離すことができなかった。
玄関の扉が開くまでの数秒間、
私達の時間は確かに止まっていた。
「ただいま。あら、琴実こっちにいたの。
穂波さんとなに話してたの?
ちょっと、琴実! どこ行くの!」
琴実さんは泣き出しそうな顔のまま、
田中さんを押し退けて
リビングから出ていった。
残されたのはいまだ固まる私と、
状況が理解できない田中さん。
「──ご、ごめんなさいねぇ。
もう、どうしたのかしら」
ハンドバッグからメープルシロップを
取り出す田中さんの目が、
私とリビングの扉を行ったり来たり。
シロップのパッケージには
見慣れたコンビニのマーク。
どうやら、すぐそこのコンビニで
買ってきたらしい。
どうりで妙に早かったわけだ。
先の事態を処理しきれない脳が、
別のことを意識し始めた。
でも、それじゃ駄目だ。
「……田中さん。琴実さんのことで、
一つ聞いてもいいですか」
「琴実のことで?」
「さっき、琴実さんが言ってたんです。
麗花さんの死は事故じゃないって」
田中さんの目が見開かれた。
「あの子……まだそんなこと……」
頭を抱える田中さんは、
我が子の愚行を嘆いているようにも見えた。
これから学校に、
はたまた万引きをしたコンビニに
謝りに行くかのような。
「麗花ちゃんが亡くなった次の日からよ。
琴実がそう言い出したのは」
四月十一日からだと、田中さんは言う。
「実際は……どうなんですか?」
「あのね、私達はご両親から事故だと
聞かされてるの。ただ単に“事故”とだけ。
それをあなた、食い下がれる?」
私は何も答えられなかった。
麗花さんのご両親、
田中さん、琴実さん。
誰の思いも否定できなかった。
大切な人を亡くした痛みは想像を絶する。
その経験がない私でさえ、
その辛さは容易に理解できる。
麗花さんのご両親は、
そっとしておいてほしくて、
根掘り葉掘り聞かれたくなくて、
極めて簡潔に事実だけを伝えたのだろう。
でも、琴実さんは納得できなかった。
大切な友人の死が信じられなくて、
受け入れたくなくて、
だから『事故じゃない』と──
『麗花は事故じゃない!』
事故じゃないなら……なに?
「今は、そっとしといてあげるのが一番よ。
いずれ、時間が解決してくれるから」
そう言って、
田中さんはリビングを後にした。
一人残り、
話し相手のいなくなった私の脳に
琴実さんの言葉が反響していく。
一瞬たりとも気を逸らせぬまま、
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