BOX・FORCE

hime

文字の大きさ
14 / 85
第1章 NAMELESS編-序編-

[第14話:Lantana]

しおりを挟む
ジャッキーが、真剣な表情で話し始めた。

「各部隊の、それぞれの戦闘データを見て、統計的なそれぞれの戦闘パターンを割り出しタ。まずは…"リコリス"かラ。」

「は、はいっ…」

ジャッキーがそう言うと、樫間が返事をした。

「"リコリス"は、やっぱ他の隊に比べて特殊だよネ。基本的に、樫間、白峰、迅雷寺の順番で攻撃する事が多イ。ヒロキ。君のやり方、ボクは好きヨ。隊長自ら率先して攻撃すル。最近の風潮にしては珍しいやり方ダ。ヒロキの力なら、1人で1体消す事も可能なはズ。けど、あえてそこを部下の2人に仕留めさせル。いいんだけどサ。それじゃ2人が成長しなイ。実際、ヒロキがいない時の2人は、無駄な動きが多イ。それは多分、初期戦闘の経験が少ないから、どこから攻めるべきかまだわからないんじゃないカ?」

ジャッキーは、冷静に第1部隊の戦闘パターンを解説した。

「そこで、うちの戦闘隊長、チャンからアドバイスだヨ。正直、ボクは最適な戦術を瞬時に判断する能力は低イ。だからボクは、それに長けているチャンに、戦術の全てを委ねていル。だから、そこんとこ詳しい事はチャンが教えてくれるヨ♪」

ジャッキーは、そう言うと急に笑顔でチャンを見た。
チャンは、少し引き気味な表情を見せて話し始めた。

「…リ、"リコリス"。君らの能力を最大限発揮する為に、フォーメーション"リコリス"を伝授する。」

そう言うと、チャンは鋭い目付きで第1部隊を見た。

「…フォーメーション…"リコリス"…」

チャンの気迫に圧倒されながら、白峰が呟いた。

「君らの場合、接近戦有利な2人が突っ込む方が効率がいい。相手が近距離でも長距離でも、それは言える。樫間。君は銃だろ?中距離、長距離も可能なんだから、それを活かせばいい。君は、隊員の事を1番に思ってるかもしれないが、君の戦術は、自分が1番と思ってるようにしか見えない。仲間を知り、仲間を生かす事が君には必要だ。」

チャンは、真っ直ぐ樫間を見ながら言った。

「…仲間を…知る…」

樫間は、思っても見なかった言葉に、不安な表情を見せた。

「そうだ。そして、BOX・FORCEをもっと知る必要がある。 樫間、お前は何の為に戦う?仲間達は、何の為に戦っている?それが分かれば、お前は今よりも強くなる。」

チャンがそう言うと、樫間は、すこし考えて言った。

「…俺は…もう仲間を傷つけたくない。仲間を、人類を守る為に…」

樫間は白峰を見てそう言った。
続けて何かを言いかけたが、チャンがそれに割り込むように言った。

「そうか。仲間を守る。仲間を守りたければ仲間を知る事だ。仲間を知らずして、生かす事はできない。まあ、それは君らで話せ。…ん、じゃあ次は"リリィ"だ。」

「お、おす。」

チャンがそう言うと、蒼松は何を言われる覚悟をした表情で、反応した。

「…まあ、さすがと言ったところか。各自の状況判断能力と適応力は高い。」

チャンがそう言うと、蒼松は褒められると思ってなかったのか、少し照れた表情を見せた。
が、次のチャンの言葉により、それは一変した。

「それでも、まだ甘いな。蒼松、君の戦術は仲間を庇う事が主になりすぎている。もっと仲間を信じろ。君らは、全員で動く事によって成り立つ。ポジションは今まで通りでいい。しかし、それに拘るな。蒼松、君の武器はそういうもんだろ?ポジションに拘らず、3人で連携して動く事こそ、敵を1番惑わす事ができる。それを生かすんだ。」

「ポジションに拘らず、連携…」

チャンの言葉に、沫梨はそう呟いた。

「…確かに、今までの私たちは、各々の武器に対してどう来るか、冷静に考えれば予想できる戦術だったかも。私たちがそれに拘らなければ、敵に読まれる事もない…相手が人型なら尚更ね。」

咲波は冷静にそう言った。

「後は自分たちでできるはずだ。行き詰まったら言ってくれ。…次は、"ローズ"。」

チャンは第3部隊を見てそう言った。

「「はい。」」

蓮田と菊野が返事をした。獅蘭はどこか不満そうにチャンを見た。

「君たちは…一言で言うなら"自由"。しかし、"リリィ"と一緒だ。獅蘭、菊野の両名が近距離、蓮田が中距離支援。これも読まれやすい。実際、以前の戦闘で蓮田に白峰を守らせ、獅蘭と菊野で戦った。その結果、両名とも負傷。あの時、白峰を守らせた獅蘭の指示は、部隊の垣根を越えてちゃんとその場のメンバーを考えた判断だと思う。しかし、そこまでするなら、樫間と迅雷寺の事ももっと把握する必要がある。」

「…チッ、悪いかよ…。」

チャンの冷静な分析に、獅蘭は舌打ちした。

「別にあれは間違った事じゃない。むしろ当然の事をしたまでだ。あれが彩科院だったら、そこまでしなかったと思う。」

チャンに突然名前を出され、彩科院が反応した。

「なんだと貴様。喧嘩売ってるのか?」

彩科院は、イラつきながらチャンを見た。

「まあいい。それは後で話す。獅蘭、君は状況判断能力と適応能力、そして指示力がかなりある。後は伝え方だ。君は、自分自身の良さに気付いているはずだ。それを、ちゃんと生かせ。君の伝え方は、蓮田と菊野だから分かってもらえていたかもしれない。しかし、これからはそうはいかない。敵があれだけの実力以上、君はこの"BOX・FORCE"全体を有効的に動かす存在であるべきだ。そこを生かせ。」

チャンがそう言うと、獅蘭は褒められたのが意外だったのか、素直に喜べず少し恥ずかしそうに視線を逸らした。

「さすが、よく見てんすね。俺はそこまで考えられなかった。」

蓮田は、感心したように言った。

「"四神"と我々は、いつか激突する。その時、鍵になるのは、君たち"ローズ"だと俺は思っている。期待してる。」

チャンはそう言うと、第4部隊のいる方を見た。すると、彩科院がチャンに対して詰め寄った。

「貴様、散々偉そうな事を言ってくれたな。我々にも言いたい事があるのだろう?しかし、我々にそれは必要ない。悪いが今は、奴らをいち早く殲滅する為に、奴らを見つけ出し、叩きのめす準備をしなければならない。我々はここで失礼す…」

彩科院はチャンを睨みつけながらそう言い、退出しようとしたが、矢島がそれを止めた。

「まあまあ、いいじゃないの。それに、彼の言ってることは間違っちゃいない。隊長、俺らに足りないものを知らなきゃ、俺ら強くなれないっすよ?」

矢島は彩科院の肩に腕を回し、そう言った。
しかし、彩科院はその腕を払い除けて矢島を突き飛ばした。

「ちょ…隊長…!」

桂は倒れかけた矢島を支え、彩科院に向かって言った。

「我々に足りないもの?そんなの、貴様らが付いてこれていない事だろう?反論してる暇があるなら、もっと強くなれ!我々は、伊達に長くやっているわけじゃない。貴様らが弱いから、いつまで経っても"第4"なんだよ!」

彩科院は矢島と桂にそう怒鳴りつけ、部屋から出て行った。

「…"ガーベラ"は…言わなくてもいいかもしれないが…あの"傲り"が問題だ。彩科院は、先代からの経験値もある。実際、現状の中では戦闘能力値は飛び抜けてある。それに続いて、あなた達2人も戦闘能力値は高い。しかし、"ガーベラ"の欠点は、あの隊長の絶対支配の状況だ。"四神"は、先代の大戦より遥かに最悪の事態が予想される。彼があのままじゃ…最悪の状況になりかねない…」

チャンは去って行った彩科院の方を見ながら、そう言った。

「…だよな。俺も、同意見だ。…ってぇ…あの鬼隊長、脳みそがあの時から止まったままだ。あの古い考え方じゃ、これから先の未知の敵に勝てねぇ…」

矢島は腰を押さえながら、ゆっくり立ち上がりそう言った。

「ああなってしまったのも、元はと言えば私たちにも責任がある。…先代の菊野隊長の死は、私たち2人が弱かったせいだ。そして、隊長はそれを目の当たりにしている。自分も、菊野隊長と同じ末路になるかもしれないと思ったら、ああなってしまうのも無理はない…」

桂がそう言うと、菊野が近づいて言った。

「…あの…菊野隊長…いや、の末路って、どう言うことですか…?」

菊野は、不安そうな顔で、2人を見た。

「里海ちゃん…謙、あの事を彼女は知らないのか?」

矢島は、少し焦りながら、桂に聞いた。

「里海くん。お父様…華路はなみちさんの事は、いずれ君に全て話すべきだと思っている。しかし、それは今ではない。すまないが、時間をもらえないか…」

桂は、物悲しそうに、そして申し訳なさそうに聞くのに言った。

「わかりました…」

菊野は、少し悲しそうにそう答えた。


『…皆…さん!!…大…変です…!!』

すると、一同のいる特別訓練室に、けたましいサイレン音と共に、ノイズの酷い通信が入った。

「こちら"デイジー"のジャック。ほぼ全員揃っていル。どうしタ!?」

ジャッキーは、落ち着いてその通信に答えた。

『…ほ…ん…本部がっ!!…襲撃…されています…っ!!』

その通信に、一同に緊張が走った。

「どう言う事だ!」

獅蘭は、通信に向かって叫んだ。

『…人…型NAME…LESS…数は…3人…!…現在…とてつもない…銃撃を…受けて…きゃぁっ!』

すると、通信が途絶えた。

「…おいおい、銃撃ってまさか!」

矢島が慌てた表情で言った。

「とにかく!全員、本部へ向かうぞ!」

蒼松は一同にそう叫んだ。



一同が本部に到着すると、そこは悲惨な姿になっていた。
BOX・FORCE本部の存在する、千代田区にあるビルの上階はほぼ壊滅。そして、周辺のビルから多数の火災が発生していた。

BOX・FORCEの本部階辺りの上空に、3人の人影があった。

「…BOX・FORCE。」

そのうちの1人、ウルセウスが一同を見下ろし、そう呟いた。

「おぉ?おぉ?ガン首揃ったんじゃねぇか。あぁん?」

すると、一緒にいたヴァリアルがそう言った。

「…やれやれ。待ちくたびれましたよ。」

2人の間にいる、少し長身の男。左右の髪が黒と白に分かれ、それに交差するように、左右の白と黒の目を光らせたその男が、そう言った。

すると、3人は地上に舞い降りた。

「初めましての方が多いですかね。私は"バキオラ"。以後、お見知り置きを…。」

その男が、そう言いかけた時、3人の人影に複数の銃弾が撃ち込まれ、3人は煙に包まれた。

「…おい、樫間っ!」

チャンは、樫間を見てそう叫んだ。

「水系の"箱装"の方は、消火活動支援っ!それ以外の方は、俺と奴らをっ!」

樫間は、鬼の形相で一同にそう叫んだ。
が、獅蘭がそれを止め、言った。

「…落ち着け紘紀っ!いいか?焦る気持ちは分かるが、焦ってもどうにもならねぇ。」

獅蘭はそう言うと、一同を向いて言った。

「蒼松、咲波、矢島各員は、消火支援!蓮田、菊野、桂各員は、桂さん先導の元、あのガキ、ヴァリアルを。白峰、沫梨両員は、俺とウルセウスを。樫間と支援部隊で、真ん中のやつをやる。いいな!」

獅蘭は、全員を見ながら指示を出した。

「いや待て。ヴァイオレットは桂さんのところ、俺は獅蘭のところにそれぞれ入る。隊長とリズで、樫間と真ん中を。」

チャンは、冷静に指示を修正した。

「…まあ、何でもいい!とにかく、これ以上被害を広げるな!」 

「「「了解!!」」」

獅蘭がそう言うと、全員はそれぞれの持ち場に移った。

「…彼、やるネ。さっきのチャンの言葉、少しは彼の後押しになったんじゃなイ?」

ジャッキーは、チャンに耳打ちした。

「…いや、まだだ。本番はこれから…どうなるかによって、彼が対応できるかどうか…」

チャンがそう答えると、2人も散った。


「ふぅん。仲良くヒーローごっこですね。丁度いい。ウルセウス、ヴァリアル。ここで彼らにとどめを刺しましょう。」

バキオラは、不気味な笑みを浮かべ、2人に言った。

「…元よりそのつもりです。」

ウルセウスは答えた。

「へっ!俺が全部殺してやるってんのによぉ?…まあいい。バキオラがそう言うなら、容赦なくいくぜ!」

ヴァリアルは言った。
すると、3人は瞬時に姿を消した。


「逃さねぇっ!」

獅蘭はそう言うと、ウルセウスを追った。
それに続いて、それぞれの相手を追って分散した。



「ほぉ?これはご丁寧に。刀が揃ったんじゃねぇか!」

ヴァリアルは、袖から伸びる刀の刃をチラつかせながら言った。

「これ以上やらせないっ!」

桂は"陽羊刀"を解放し、構えた。


「…今日は殺すよ。」

ウルセウスは、目の前に並ぶ獅蘭とチャンを見て言った。

「…4人で、絶えず攻撃を続ける。常に奴の周囲を囲う。フォーメーション"Yarrowイャロー"だ。」

チャンは、冷静にそう言った。

「…てめぇは俺が、殺すっ!」

獅蘭はそう言うと、ウルセウスに突っ込んだ。


「…やだなぁ、そんな怖い顔で見ないでくださいよ。第1部隊"リコリス"隊長の、樫間君。」

バキオラは、樫間をニヤニヤと見つめ、そう言った。

「…てめぇ、よくもっ…!」

樫間は鋭い目つきで、バキオラを睨み、氷龍の鎧を纏った。

「…落ち着ケ。相手の揺動に乗るナ。まずは様子を…」

ジャッキーがそう言いかけると、樫間はそれを無視して飛び出した。

「あーあ。行っちゃったよ。隊長。どーする?」

後ろから、リズが呆れた顔をしてジャッキーに言った。

「…ごめんだけド。リズ、彼をよろしク。」

ジャッキーも呆れてそう言うと、自身の"箱装"を構えた。

「OK。いつも通り後ろ、頼んだよ。」

そう言うと、リズは一瞬にして姿を消した。



本部地下の病室ー

(…あれ…私…運ばれて…。なんか…激しい音が…。)

複数の管が繋がれた状態で、迅雷寺はベッドに寝ていた。
迅雷寺は、ゆっくりと、薄っすら目を開けて、天井を見つめた。

「…あれ…私…。」

迅雷寺がそう呟くと、そばで慌ただしくしていた実村が迅雷寺に気付いた。

「し、しぃ!…よかったぁ…って、それどころじゃない!しぃ、逃げないと!ここは危ない!今輸送車を用意してるからちょっと待ってね!」

実村は、焦りながらそう言った。

「…危ない…危ないって!?…ったい…。」

迅雷寺は、慌てる実村を見てハッとした。
起き上がろうとするも、傷のある腹部を思わず押さえた。

「待って、しぃ。今は無理して動かないで。だいぶ良くなってきてるけど、まだ体は本調子じゃないから!」

実村は、迅雷寺を支えそう言った。

「今、本部がやられたの。それで、樫間さん達が到着して、今戦ってくれてるみたい。とりあえず、今のところ本部部員は負傷者はかなり多いけど、死者は確認されてない。だから、私達も避難しなきゃ…。」

実村がそう言うと、迅雷寺は、無理矢理立ち上がり、フラフラしながら言った。

「…私も…行かなきゃ…。」

「ダメ!しぃは今、戦うどころか動く事すらやっとなんだよ?今はみんなに任せて、しぃは私達とここから離れなきゃ!」

戦場に向かおうとする迅雷寺を、必死に食い止め、実村は行った。

(かっしー…みんな…。)

迅雷寺は、悔しい気持ちを抑え込みながら、実村と後から来た本部部員に抱えられて病室を後にした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

アラフォーリサの冒険 バズったSNSで退職からリスタート

MisakiNonagase
恋愛
堅実な会社員として働いてきた39歳のリサ。まだまだ現役の母親と二人暮らしで高望みしなければ生活に困ることはなく、それなりに好きなことを楽しんでいた。 周りが結婚したり子育てに追われる様子に焦りがあった時期もあるなか、交際中の彼氏と結婚の話しに発展した際は「この先、母を一人にできない」と心の中引っ掛かり、踏み込めないことが続いてきた。 ある日、うっかりモザイクをかけ忘れインスタグラムに写真を上げたとき、男性から反応が増え、下心と思える内容にも不快はなく、むしろ承認欲求が勝り、気に入った男性とは会い、複数の男性と同時に付き合うことも増え、今を楽しむことにした。 その行動がやがて、ネット界隈で噂となり、会社の同僚達にも伝わり… リサは退職後、塞ぎ込んでいたが、同じような悩みを抱えていたカナリア(仮名)と話すようになり立ち上がった。ハローワーク経由で職業訓練を受講したり、就活したり、その間知り合ったり仲間と励まし合ったり、生きる活力を取り戻していく… そして新たな就業先で、メール室に従事する生涯枠採用の翔太という男性と知り合い、リサの人生は変わる… 全20話を予定してます

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

処理中です...