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【第1章:飛翔】
第26話:Place to Aim for
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全国高等学校総合体育大会、通称インターハイ全国大会。
今年の舞台は、北信越。
陸上競技は、新潟県のデンカビッグスワンスタジアムで行われた。
日本選手権などの陸上競技において国内の大きな大会も行われる会場は、約4万人を収容する大きな会場であった。
全国大会という事もあり、全国各地の様々な学校の名前を背負った選手やその選手をサポートするチームメイトが会場に集まった。
_
「…さぁて、かましていきますか。」
この男も気合が入っていた。
その身に纏う紫色が、まさに高貴を表すかのように大きく輝いて見える。
高薙 宙一。
私立継聖学院高等学校陸上部、2年。
彼が気合を入れる中、そんな先輩の姿を他所にタブレット端末で過去の練習動画を見ながら、最後の最後まで自分の跳躍姿を確認していたのは…。
江國 途識。
私立継聖学院高等学校陸上部、1年。
「…っておい江國ぃ…いつまで見てんだ?そろそろ行くぜ?」
宙一にそう言われて、江國は漸くタブレット端末をカバンにしまった。
2人の姿を何処か嬉しそうに、そして何処か悔しそうに見ていたもう1人の選手が、2人に最後のエールを送った。
「…期待してるぜ、2人とも。」
宙一の弟、皇次であった。
継聖棒高組で唯一全国出場の切符を手にできなかった彼は、2人を見届けることしか出来なかった。
「ありがとう、皇次。お前の分も江國とかましてくるぜ。」
高薙兄弟はそう言って、互いの拳を突き合わせた。
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「…それじゃあ、俺もそろそろ行くとするか。」
「期待してるよ、輝。」
紺色に金縁の白地で"MEIHAKU"と書かれたTシャツを着た2人組は、そのような会話を交わしていた。
大ヶ樹 輝。
神奈川県立明伯高等学校、2年。
石橋 圭也。
神奈川県立明伯高等学校、2年。
全国出場を決めた大ヶ樹と、惜しくも南関東大会にて予選落ちとなった石橋。
チームメイトであり幼馴染でありライバルである2人だが、今回は石橋が大ヶ樹をサポートする形で全国大会に挑む。
「…任せろって、圭。だがな、これは単なる前哨戦でしかない。
来年、お前とこの舞台で勝負する。もちろん俺が勝つ。それが俺の目標だ。」
大ヶ樹はそう宣言した。大それたことを言う大ヶ樹を石橋は笑う事はなかった。彼もまた、真剣にその目標を達成しようと熱意に燃える表情をしている。
「…ああ、そうだな。俺がもっと輝に追いつかなくちゃいけない。今日と明日は、たっぷり勉強させてもらうよ。」
石橋も負けてはいなかった。
彼の内から溢れ出るような熱意は、必ず大ヶ樹は愚か他の選手を呑み込んでくるであろう殺気すら感じられた。
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そしてもう1組。
こちらはまるで軍隊のように統率の取れた深緑のTシャツを纏ったチームが、その最前に立つ指揮官とも見える男子部員を慕うように集まっていた。
「…俺は必ず、全国の上位に名を刻む。
都大会、南関での屈辱は全国で晴らす。皆、期待していてくれ。」
声高らかにそう宣言する彼は…。
六織 京次。
私立緑川学園高等学校、3年。
自らが部長を担う緑川学園陸上競技部の部員たちの前で、六織はそう言った。
地を鳴らすような、おおぉぉぉぉぉぉ!!!!!という掛け声で賛同する彼らは、もはや陸上部というよりはラグビー部のようであった。
「…しっかり見ておけよ…慎助ぇ。京さんの圧倒的カリスマ性、そして圧倒的強者の実力を…。」
田伏も例外ではなかった。
宗教じみたような彼の六織への信仰心とも言える信頼関係は、後輩をも驚かせた。
(…俺別に、そういうの要らないんだよなぁ…。今日は今後のライバルの偵察が目的だからな。来年は俺も、この舞台で…。)
その中でたった1人、周りに合わせながらも何処か今一歩賛同しきれてない男子部員がいた。
彼の名は、森 慎助。
今年から入部をした1年生であり、六織や田伏にとっての後輩となる棒高跳び選手である。
(…伍代 拝璃も出てるって事は、必ずあいつもいるはずだ…。)
森は先輩や同部員たちに愛想笑いを振り撒きながら、周囲を見渡してある人物を探していた。
(…若越…跳哉…。いるんだろ…?)
その森の視界に飛び込んできたのは…。
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桃木と若越と別れた伍代は、1人競技場内に向かった。
「…久しぶりやなぁ?去年は目も合わしてくれなんじゃけんなぁ。伍代 拝璃。」
ふと声を掛けられた伍代は、横目でその相手の姿を見た。
何やら険悪な雰囲気の中、伍代は黙ったまま睨むようにしてその相手を見ている。
「…あ?俺のことわっせたのか?わっせたとは言わせなぁ。」
そう言って、彼は伍代に寄ってくる。
黒字に金色の文字で"九皇院第一"と書かれたTシャツを着たその男子選手と、その後ろに同じ服を着た男子選手が3人いた。
「俺のことは無視しても、美鶴さんに挨拶せなは、大層な自信持ってきたんやないか?えぇ?」
その光景は最早、喧嘩寸前の様子であった。
彼の使う方言も相まって、まるで伍代が詰められている様子に見えていた。
周囲にいた人々も、怖い物を見るように恐る恐るその光景を見ていた事に気がついた伍代は、ため息をついた後に漸く口を開いた。
「…はぁ。これはこれは、九皇院第一の皆さん。お久しぶりです。江麻寺さんもどうも。
揃いも揃って、何ですか?俺にプレッシャーでも掛けにきたんですか?」
伍代もいつに無く強気の姿勢でそう言った。
あまり他者といがみ合う事が少ない彼が、珍しく強気で向かう相手…。
「…伍代、南関で5m跳んだそうやなぁ。高薙の奴も。…あまり調子に乗るなよ?お前たちはわしらの足元にも及ばん事、明日には全てわかるはずや。」
江麻寺 美鶴。
香川県立九皇院第一高等学校、3年。
「美鶴さんの言う通りや。中国四国上位総ねぶりの、我々九皇院は全国トップレベルや。5mで満足しとるお前たちに、勝ち目はない!」
桐暮 那津葉。
香川県立九皇院第一高等学校、2年。
桐暮が威勢よく伍代に突っかかり、それに対して江麻寺が、伍代の出る杭を打ち崩すかのような一言を言い放った。
「…うわぁ、おとろしいわぁ。りんりん、わしらは大人しゅうしてようなぁ。」
伍代に近寄る桐暮と江麻寺の後ろに、隠れるようにして残り2人の男子選手がそう会話していた。
桐暮と江麻寺の様子に恐れているのは…。
志木 聖。
香川県立九皇院第一高等学校、2年。
そして、彼が大人しくしてようと言った相手は…。
双葉川 麟。
香川県立九皇院第一高等学校、1年。
双葉川は大きなあくびをしており、全く目の前の様子に興味を示していなかった。
「…せんぱーい、もう行きましょ?練習の時間、始まってしまうよー。」
彼は呑気にそう言うと、まるで伍代には全く興味を示さないと言わんばかりに、そう先輩たちを促した。
「なんや?麟。もっとシャキッとせぇや!初の全国インハイや言うのに、気合いもなんちゃないのかお前は!」
気怠そうな双葉川に、桐暮が叱るように強い語気でそう言った。
しかし、彼はそれに全く動じている様子はない。眠そうな目を擦りながら、双葉川は既にグラウンドに向かって歩みを進めていた。それが余計に、双葉川という男の強さを物語っていた。
「…ふん、せいぜい気合い入れて挑むんやなぁ、伍代。決勝で、俺らに負かされるの心待ちにしとけっ!」
桐暮はそう言い残すと、先を行く双葉川の後を追って行ってしまった。
「…もちろん、気合は十分さ。やっとこの時が来たんだ…。
全中優勝を譲った貸しは、ここで返してもらうぜ…。」
伍代は、九皇院第一の4人の後ろ姿を見送りながらそう呟いた。
彼の言う通り、当時全中2位であった伍代の上に立ったのは、紛れもない桐暮であった。
伍代にとって因縁の相手。そして、六織以上に脅威となる江麻寺の存在に、伍代は武者震いを感じていた…。
全国高等学校総合体育大会、通称インターハイ全国大会。
今年の舞台は、北信越。
陸上競技は、新潟県のデンカビッグスワンスタジアムで行われた。
日本選手権などの陸上競技において国内の大きな大会も行われる会場は、約4万人を収容する大きな会場であった。
全国大会という事もあり、全国各地の様々な学校の名前を背負った選手やその選手をサポートするチームメイトが会場に集まった。
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「…さぁて、かましていきますか。」
この男も気合が入っていた。
その身に纏う紫色が、まさに高貴を表すかのように大きく輝いて見える。
高薙 宙一。
私立継聖学院高等学校陸上部、2年。
彼が気合を入れる中、そんな先輩の姿を他所にタブレット端末で過去の練習動画を見ながら、最後の最後まで自分の跳躍姿を確認していたのは…。
江國 途識。
私立継聖学院高等学校陸上部、1年。
「…っておい江國ぃ…いつまで見てんだ?そろそろ行くぜ?」
宙一にそう言われて、江國は漸くタブレット端末をカバンにしまった。
2人の姿を何処か嬉しそうに、そして何処か悔しそうに見ていたもう1人の選手が、2人に最後のエールを送った。
「…期待してるぜ、2人とも。」
宙一の弟、皇次であった。
継聖棒高組で唯一全国出場の切符を手にできなかった彼は、2人を見届けることしか出来なかった。
「ありがとう、皇次。お前の分も江國とかましてくるぜ。」
高薙兄弟はそう言って、互いの拳を突き合わせた。
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「…それじゃあ、俺もそろそろ行くとするか。」
「期待してるよ、輝。」
紺色に金縁の白地で"MEIHAKU"と書かれたTシャツを着た2人組は、そのような会話を交わしていた。
大ヶ樹 輝。
神奈川県立明伯高等学校、2年。
石橋 圭也。
神奈川県立明伯高等学校、2年。
全国出場を決めた大ヶ樹と、惜しくも南関東大会にて予選落ちとなった石橋。
チームメイトであり幼馴染でありライバルである2人だが、今回は石橋が大ヶ樹をサポートする形で全国大会に挑む。
「…任せろって、圭。だがな、これは単なる前哨戦でしかない。
来年、お前とこの舞台で勝負する。もちろん俺が勝つ。それが俺の目標だ。」
大ヶ樹はそう宣言した。大それたことを言う大ヶ樹を石橋は笑う事はなかった。彼もまた、真剣にその目標を達成しようと熱意に燃える表情をしている。
「…ああ、そうだな。俺がもっと輝に追いつかなくちゃいけない。今日と明日は、たっぷり勉強させてもらうよ。」
石橋も負けてはいなかった。
彼の内から溢れ出るような熱意は、必ず大ヶ樹は愚か他の選手を呑み込んでくるであろう殺気すら感じられた。
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そしてもう1組。
こちらはまるで軍隊のように統率の取れた深緑のTシャツを纏ったチームが、その最前に立つ指揮官とも見える男子部員を慕うように集まっていた。
「…俺は必ず、全国の上位に名を刻む。
都大会、南関での屈辱は全国で晴らす。皆、期待していてくれ。」
声高らかにそう宣言する彼は…。
六織 京次。
私立緑川学園高等学校、3年。
自らが部長を担う緑川学園陸上競技部の部員たちの前で、六織はそう言った。
地を鳴らすような、おおぉぉぉぉぉぉ!!!!!という掛け声で賛同する彼らは、もはや陸上部というよりはラグビー部のようであった。
「…しっかり見ておけよ…慎助ぇ。京さんの圧倒的カリスマ性、そして圧倒的強者の実力を…。」
田伏も例外ではなかった。
宗教じみたような彼の六織への信仰心とも言える信頼関係は、後輩をも驚かせた。
(…俺別に、そういうの要らないんだよなぁ…。今日は今後のライバルの偵察が目的だからな。来年は俺も、この舞台で…。)
その中でたった1人、周りに合わせながらも何処か今一歩賛同しきれてない男子部員がいた。
彼の名は、森 慎助。
今年から入部をした1年生であり、六織や田伏にとっての後輩となる棒高跳び選手である。
(…伍代 拝璃も出てるって事は、必ずあいつもいるはずだ…。)
森は先輩や同部員たちに愛想笑いを振り撒きながら、周囲を見渡してある人物を探していた。
(…若越…跳哉…。いるんだろ…?)
その森の視界に飛び込んできたのは…。
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桃木と若越と別れた伍代は、1人競技場内に向かった。
「…久しぶりやなぁ?去年は目も合わしてくれなんじゃけんなぁ。伍代 拝璃。」
ふと声を掛けられた伍代は、横目でその相手の姿を見た。
何やら険悪な雰囲気の中、伍代は黙ったまま睨むようにしてその相手を見ている。
「…あ?俺のことわっせたのか?わっせたとは言わせなぁ。」
そう言って、彼は伍代に寄ってくる。
黒字に金色の文字で"九皇院第一"と書かれたTシャツを着たその男子選手と、その後ろに同じ服を着た男子選手が3人いた。
「俺のことは無視しても、美鶴さんに挨拶せなは、大層な自信持ってきたんやないか?えぇ?」
その光景は最早、喧嘩寸前の様子であった。
彼の使う方言も相まって、まるで伍代が詰められている様子に見えていた。
周囲にいた人々も、怖い物を見るように恐る恐るその光景を見ていた事に気がついた伍代は、ため息をついた後に漸く口を開いた。
「…はぁ。これはこれは、九皇院第一の皆さん。お久しぶりです。江麻寺さんもどうも。
揃いも揃って、何ですか?俺にプレッシャーでも掛けにきたんですか?」
伍代もいつに無く強気の姿勢でそう言った。
あまり他者といがみ合う事が少ない彼が、珍しく強気で向かう相手…。
「…伍代、南関で5m跳んだそうやなぁ。高薙の奴も。…あまり調子に乗るなよ?お前たちはわしらの足元にも及ばん事、明日には全てわかるはずや。」
江麻寺 美鶴。
香川県立九皇院第一高等学校、3年。
「美鶴さんの言う通りや。中国四国上位総ねぶりの、我々九皇院は全国トップレベルや。5mで満足しとるお前たちに、勝ち目はない!」
桐暮 那津葉。
香川県立九皇院第一高等学校、2年。
桐暮が威勢よく伍代に突っかかり、それに対して江麻寺が、伍代の出る杭を打ち崩すかのような一言を言い放った。
「…うわぁ、おとろしいわぁ。りんりん、わしらは大人しゅうしてようなぁ。」
伍代に近寄る桐暮と江麻寺の後ろに、隠れるようにして残り2人の男子選手がそう会話していた。
桐暮と江麻寺の様子に恐れているのは…。
志木 聖。
香川県立九皇院第一高等学校、2年。
そして、彼が大人しくしてようと言った相手は…。
双葉川 麟。
香川県立九皇院第一高等学校、1年。
双葉川は大きなあくびをしており、全く目の前の様子に興味を示していなかった。
「…せんぱーい、もう行きましょ?練習の時間、始まってしまうよー。」
彼は呑気にそう言うと、まるで伍代には全く興味を示さないと言わんばかりに、そう先輩たちを促した。
「なんや?麟。もっとシャキッとせぇや!初の全国インハイや言うのに、気合いもなんちゃないのかお前は!」
気怠そうな双葉川に、桐暮が叱るように強い語気でそう言った。
しかし、彼はそれに全く動じている様子はない。眠そうな目を擦りながら、双葉川は既にグラウンドに向かって歩みを進めていた。それが余計に、双葉川という男の強さを物語っていた。
「…ふん、せいぜい気合い入れて挑むんやなぁ、伍代。決勝で、俺らに負かされるの心待ちにしとけっ!」
桐暮はそう言い残すと、先を行く双葉川の後を追って行ってしまった。
「…もちろん、気合は十分さ。やっとこの時が来たんだ…。
全中優勝を譲った貸しは、ここで返してもらうぜ…。」
伍代は、九皇院第一の4人の後ろ姿を見送りながらそう呟いた。
彼の言う通り、当時全中2位であった伍代の上に立ったのは、紛れもない桐暮であった。
伍代にとって因縁の相手。そして、六織以上に脅威となる江麻寺の存在に、伍代は武者震いを感じていた…。
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