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第一章
第115話 フルーツ会議
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妖魔二人が俺の部屋にやってきたのは、午後のティータイムになってからだった。
フェリシアからもらったブレンドティーと、レクスシェーナからもらったクッキーを出すと、さっそくアンバジャックが手を出す。
実はこのふたり、ドランケンフローラが辛党の酒飲みで、アンバジャックが甘党でまったく酒を飲まない。
普段の振る舞いを見ていると妙にしっくりとくるのだから不思議なものだ。
そして茶を飲みながら一通り挨拶代わりの雑談を交わしたあと。
俺は本題を切り出すことにした。
「ところで、二人はこの森にいたエルフたちについて何か詳しいことを知らないか?」
すると、妖魔二人は奇妙なことを聞いたとばかりにお互いの目を見合わせた。
よほど意外だったらしい。
「エルフかえ? まぁ、同じ森に住む者として知らないわけでは無いが、付き合いはなかったからのぉ」
「しかし、いまさらエルフですか?
トシキさんが関心を持つような相手とは思えませんが。
何かあったのですか?」
さすがに疑問に思ったのか、アンバジャックが疑問を口にする。
「実は……先代の森の神が生きているようなんだ」
俺の言葉に、妖魔二人は何かを言おうとして一度口をつぐんだ。
そんな二人に、俺は今日あった出来事について説明する。
すると、しばし台詞を選ぶそぶりを見せた後でようやく二人は言葉を口にした。
「なるほど、それでエルフというわけか。
確かに、連中は時々コソコソと何かしておったのぉ」
「年に何度か、死んだはずの神の祭礼をこっそり行っていましたしねぇ。
あの女神が生きていたというのならば納得です」
「……まぁ、そういう事で、二人にも森の女神を復活させる手伝いをしてほしいんだけど、どうかな?」
「我はかまわぬ。
かの女神とはそれなりに付き合いもあったし、何よりも今の森の神は気に食わぬからな」
その隣で、アンバジャックも頷く。
よし、思ったよりもいい感触だ。
「じゃあ、話を進めるけど……。
エルフたちと話をしたいんだ」
だが、その話題を切り出したとたん、妖魔たちの顔が曇る。
「それは難しいかもしれませんよ?
彼らはとても閉鎖的です」
「分かってる。
なので、食料を手土産にして交渉をしたい」
今のエルフたちは、確実に食料不足で困っている。
そこを抑えて交渉すれば、協力を得られる確率はぐっと大きくなるだろう。
「それは良い手じゃのぉ。
じゃが、くれぐれも連中の面子を潰したりせんようにな。
あ奴等は、とてもくだらない生き物じゃからして、自分の面子を潰されれば意固地になって話し合いにはならぬであろうよ。
いざとなったら、我かアンバジャックの名を出すがよい」
「前に私たちが祝福した枝があったでしょう?
アレを見せれば、エルフたちも手荒な事はしないはずです」
あぁ、そういえばそんな物もあったな。
大事にしすぎて、ずっと道具袋の中だったよ。
「ありがとう。 せっかくだから、あの枝は使わせてもらうよ。
……で、エルフたちの協力を取り付けるために食料を贈るのはいいけど、どんなものがいいと思う?
森の守護者だったフローラたちなら、何か知ってるんじゃないかとおもったんだけど」
俺がそう尋ねると、フローラはしばし何かを考えた後で掌を上にして俺の前に突き出した。
ん? 何かよこせということか?
だが、彼女は何かをたくらんでいるような不適な笑みを浮かべながらこう告げたのである。
「ふむ。 そうさな、果物がよいかもしれぬ」
その言葉と同時に、彼女の掌から次々に果実が生まれてテーブルの上に山を作る。
それでも収まりきれぬ果物が机からこぼれ、なだれのように床へと転がっていった。
「おいおい、こんなところで出すなよ。
せっかくの果物が、床にこぼれてもったいないだろ」
その前に何かするなら先にことわってからにしてほしい。
足元に転がってきたオレンジ色の果実を拾い上げ、俺はそれをテーブルに積みなおす。
すると、ドランケンフローラは口元だけを笑みの形にして俺に告げた。
「取引じゃ」
「取引?」
俺が問い返すと、彼女は笑みを深めながらずいと身を乗り出す。
うぉっ、なんだこの迫力は?
嫌な予感を覚えて、俺は少しのけぞる。
すると、彼女は口からヨダレが垂れそうなほど欲に取り付かれた顔で告げた。
「この果物一山につき、ニンニク一株を所望する」
「……本気かよ」
すっかり忘れていた。
こいつら、ニンニク中毒患者だっけ。
「取引はできない。
どれだけの量の果物が必要かわからないからな」
俺としては、できるだけあのニンニクモドキを作りたくない。
あれは、きっと良くないものだ。
それに……仮に彼女の言うとおりに契約をするとしよう。
俺ならば、エルフとの交渉をわざと裏で邪魔して必要な果物の量が多くなるように画策するだろうな。
そして、彼女もそのぐらいの腹黒さは持ち合わせている。
分かってるんだぞ?
俺を見くびるんじゃない。
そんな意味をこめて彼女の目を見つめ返す。
すると、ドランケンフローラは苦笑いをしながら体を引いた。
「ほんに、見た目の幼さと中身がかけ離れておるわ。
契約の内容を変えよう。
ニンニク十株で、今回の手伝いを引き受ける。
これならばどうじゃ?」
「なかなか交渉が上手いな。
だったら……」
そのまま俺たちは交渉を続け、俺はエルフを取り込む作戦に妖魔たちを巻き込むことに成功したのであった。
フェリシアからもらったブレンドティーと、レクスシェーナからもらったクッキーを出すと、さっそくアンバジャックが手を出す。
実はこのふたり、ドランケンフローラが辛党の酒飲みで、アンバジャックが甘党でまったく酒を飲まない。
普段の振る舞いを見ていると妙にしっくりとくるのだから不思議なものだ。
そして茶を飲みながら一通り挨拶代わりの雑談を交わしたあと。
俺は本題を切り出すことにした。
「ところで、二人はこの森にいたエルフたちについて何か詳しいことを知らないか?」
すると、妖魔二人は奇妙なことを聞いたとばかりにお互いの目を見合わせた。
よほど意外だったらしい。
「エルフかえ? まぁ、同じ森に住む者として知らないわけでは無いが、付き合いはなかったからのぉ」
「しかし、いまさらエルフですか?
トシキさんが関心を持つような相手とは思えませんが。
何かあったのですか?」
さすがに疑問に思ったのか、アンバジャックが疑問を口にする。
「実は……先代の森の神が生きているようなんだ」
俺の言葉に、妖魔二人は何かを言おうとして一度口をつぐんだ。
そんな二人に、俺は今日あった出来事について説明する。
すると、しばし台詞を選ぶそぶりを見せた後でようやく二人は言葉を口にした。
「なるほど、それでエルフというわけか。
確かに、連中は時々コソコソと何かしておったのぉ」
「年に何度か、死んだはずの神の祭礼をこっそり行っていましたしねぇ。
あの女神が生きていたというのならば納得です」
「……まぁ、そういう事で、二人にも森の女神を復活させる手伝いをしてほしいんだけど、どうかな?」
「我はかまわぬ。
かの女神とはそれなりに付き合いもあったし、何よりも今の森の神は気に食わぬからな」
その隣で、アンバジャックも頷く。
よし、思ったよりもいい感触だ。
「じゃあ、話を進めるけど……。
エルフたちと話をしたいんだ」
だが、その話題を切り出したとたん、妖魔たちの顔が曇る。
「それは難しいかもしれませんよ?
彼らはとても閉鎖的です」
「分かってる。
なので、食料を手土産にして交渉をしたい」
今のエルフたちは、確実に食料不足で困っている。
そこを抑えて交渉すれば、協力を得られる確率はぐっと大きくなるだろう。
「それは良い手じゃのぉ。
じゃが、くれぐれも連中の面子を潰したりせんようにな。
あ奴等は、とてもくだらない生き物じゃからして、自分の面子を潰されれば意固地になって話し合いにはならぬであろうよ。
いざとなったら、我かアンバジャックの名を出すがよい」
「前に私たちが祝福した枝があったでしょう?
アレを見せれば、エルフたちも手荒な事はしないはずです」
あぁ、そういえばそんな物もあったな。
大事にしすぎて、ずっと道具袋の中だったよ。
「ありがとう。 せっかくだから、あの枝は使わせてもらうよ。
……で、エルフたちの協力を取り付けるために食料を贈るのはいいけど、どんなものがいいと思う?
森の守護者だったフローラたちなら、何か知ってるんじゃないかとおもったんだけど」
俺がそう尋ねると、フローラはしばし何かを考えた後で掌を上にして俺の前に突き出した。
ん? 何かよこせということか?
だが、彼女は何かをたくらんでいるような不適な笑みを浮かべながらこう告げたのである。
「ふむ。 そうさな、果物がよいかもしれぬ」
その言葉と同時に、彼女の掌から次々に果実が生まれてテーブルの上に山を作る。
それでも収まりきれぬ果物が机からこぼれ、なだれのように床へと転がっていった。
「おいおい、こんなところで出すなよ。
せっかくの果物が、床にこぼれてもったいないだろ」
その前に何かするなら先にことわってからにしてほしい。
足元に転がってきたオレンジ色の果実を拾い上げ、俺はそれをテーブルに積みなおす。
すると、ドランケンフローラは口元だけを笑みの形にして俺に告げた。
「取引じゃ」
「取引?」
俺が問い返すと、彼女は笑みを深めながらずいと身を乗り出す。
うぉっ、なんだこの迫力は?
嫌な予感を覚えて、俺は少しのけぞる。
すると、彼女は口からヨダレが垂れそうなほど欲に取り付かれた顔で告げた。
「この果物一山につき、ニンニク一株を所望する」
「……本気かよ」
すっかり忘れていた。
こいつら、ニンニク中毒患者だっけ。
「取引はできない。
どれだけの量の果物が必要かわからないからな」
俺としては、できるだけあのニンニクモドキを作りたくない。
あれは、きっと良くないものだ。
それに……仮に彼女の言うとおりに契約をするとしよう。
俺ならば、エルフとの交渉をわざと裏で邪魔して必要な果物の量が多くなるように画策するだろうな。
そして、彼女もそのぐらいの腹黒さは持ち合わせている。
分かってるんだぞ?
俺を見くびるんじゃない。
そんな意味をこめて彼女の目を見つめ返す。
すると、ドランケンフローラは苦笑いをしながら体を引いた。
「ほんに、見た目の幼さと中身がかけ離れておるわ。
契約の内容を変えよう。
ニンニク十株で、今回の手伝いを引き受ける。
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