殺伐ゲームライフ!!

斎宮

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1章「 パーティ集め&第1ステージ 」編

2話「 自称案内役のテュフォンはとってもとってもマイペース 」

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俺の前に突然現れた少年、テュフォン。
彼の正体はよく分からない。
その小さな背中を眺め、俺は話しかけるべきか悩んだ。
ほら、静かなのも何だか気まずいじゃん?
俺のフレンドリィスキルでどうにかなんないかなあ。
「 テュフォン。」
「 何?」
テュフォンが首を少しだけ横に向けて、俺を一瞥した。
「 テュフォンってさ、何者なんだ?」
「 ボクは、創の案内役さ。」
「 俺の?」
テュフォンはコクンと頷く。
それも初耳だな。……ってあれ?
「 何で俺の名前知ってんの!?」
俺名前名乗った覚えないんだけど!?
しかも案内役って何だよッ!
何で俺限定に案内役がついてんだッ!
「 ボクは、創のことを知っている。君はボクのことを知らないだろうけど。」
「 どういう事だよ……。訳分かんねえ。」
「 分からなくて良いんだよ、創。」
良いのかよ。
まあ、俺の味方っていう事実だけ分かって良かった。
「 そういえば、これから何処行くんだ?」
「 城下町。まずは色々手続きをしないと。」
「 手続き?」
やっぱり設定が必要なんだなあ。
「 キミはまだ何の職業にも就いていない。つまりは無職!無職だよッ!」
「 何で無職を強調してくるんだよッ!?」
わざわざ振り返り、俺の目を見てハッキリ言ってきた。
何だ、俺が現実でもこの先無職になると言いたげだな。
…………フラグ回収だけはやめてくれよ、ホント。

それから俺達は、数十分くらい歩き続けた。
景色は相変わらず変わらないが、段々城下町のような影がぼんやりと見えてきた。
「 彼処か?」
「 その通り。」
俺がその影を指差すと、テュフォンは頷く。
どうやらあと少しで着くみたいだ。
「 これからが大変だよ。」
「 ……何だよそれ。怖いのだが。」
少しニヤケながら俺に言ってきたテュフォンに、多少の寒気を覚えた。

「 ほら、着いた。」
「 うおー!凄え!!」
俺達はようやく城下町に辿り着いた。
丁度正午くらいだろうか。
このゲームは現実世界と時間感覚が同じに設定されている為、プレイヤーは皆昼食を摂るべき時間帯だ。
その為か、俺が友達に見せてもらった時よりはプレイヤーが少ない気がする。
ここの城下町は、ヨーロッパの風貌をモチーフにした街並みだ。
まるで外国の街に行った気分を俺は味わえている。
「 テュフォンー!ここヤバくないか?めっちゃ綺麗~!」
「 そうだねえ。」
そう言いながら、前を先に歩いてしまっていた俺の横を通り過ぎるテュフォン。
「 あれ?テュフォン、何処行くんだ?」
「 職業を決めれる店に行くんだよ。」
「 ああ、成る程。」
さっさと歩くテュフォンに置いていかれそうになりながら、俺は人混みをかき分けて行く。
「 テュフォン!お前速くないか?」
「 創!創の職業は何が良いと思う?」
「 俺の質問に答えてから質問しろッ!」
テュフォンから離れそうになるので、俺はテュフォンの腕を掴む。
これで離れないだろ。
てか何で俺の話を聞かねえんだ、此奴は。
めっちゃ目輝かせて訊いてくるもんだから、俺が答えなきゃいけない空気じゃないか。
「 ……何が良いって言われてもなあ、例えば何があるんだ?」
「 ウォーリア、フェンサー、ナイト、アーマー、ランサー、アーチャー、ガンナー、スナイパーなどなど。」
「 ……ん?」
何それ。え?待って、呪文に聞こえた。
全く聞き取れん。俺の耳が悪かっただけ?
俺の頬に、冷や汗が垂れる。
テュフォンは、固まってしまった俺を不思議そうに見つめてきた。
「 どうしたの?創。」
「 ……ごめん。テュフォンが何言ってんのか理解出来ない。」
「 ボクが今言ったのは、職業の名称。沢山ある内の一部を抜粋したものさ。」
成る程。で、その説明は無しなのかな?
「 まず、ウォーリアの説明からしよう。」
テュフォンが突然眼鏡をかけて、ドヤ顔を決める。
その要素は必要無いと思うが?
「 ウォーリアは、言うならば闘士だ。主に両手持ちの剣や斧などの重厚系の武器を使う事が多い、パワフルな職業だよ。力がある人にオススメだ。……創はそんな力がある雰囲気じゃないよね。」
「 ストレートに言ってくるな……。」
テュフォンは言葉選びということを知らないようだ。
「 次に、フェンサーの説明をしよう。フェンサーとは、基本軽装備で戦う機動系戦士だ。近接戦闘を得意とし、レイピアやエストック、フルーレを使う事が多いよ。スピードに特化したい人にオススメだ。……ちなみに創の50m走は何秒台?」
「 6秒台だ。」
「 あっ、意外と速い。」
「 意外って何だよッ!?」
本当に意外そうな表情を浮かべるテュフォン。
……ぶっ飛ばしてやりたい。
「 説明するのがそろそろ面倒くなったからとりあえず速く目的地に行こう。」
「 何その投げやり感!?」
さっきより早足で進むテュフォンから離れそうになる。
俺は慌ててテュフォンの腕を掴み直した。

離れないよう、掴む腕に力を込めた所でテュフォンが突然足を止めた。
それに気づかなかった俺はそのまま歩いてしまい、見事に鎖骨辺りをテュフォンの頭がヒットした。
「 どひゃあッ!!」
「 その悲鳴は何なの……?」
テュフォンの呆れ目が、俺に注がれる。
だが、今はあまりテュフォンの目が気にならなかった。
意外と痛かった…………。
そんな俺を無視して、テュフォンは店内に入っていく。
マイペースだなあ。
俺も店内に脚を踏み入れることにした。

「 兄ちゃん達、今日はどうした?」
店内に入ると、カウンターにいる店主のおじさんが気さくに話しかけてきた。
「 この人の職業を決めていただきたくて。」
テュフォンが俺を指差す。
おじさんは顎をさすりながら、俺を見つめた。
俺もおじさんを見つめ返す。
「 う~む……。君、聖騎士パラディンはどうだ?」
「 パラディン……ですか?」
おじさんは頷く。
「 君のステータスを見た所、1番ずば抜けているのは魔力だし、属性上問題無いと思うんだ。」
ん?俺にステータスなんてもん存在してたっけ?
分からないので、テュフォンに訊こうと彼奴のいる方を向いたが……。
「 おいテュフォン!!」
「 ん?何?」
「 何?じゃねえよ!人の話聞けッ!」
彼奴は既に全然関係ない商品を手に取って遊んでいた。
流石に手刀を食らわす。
「 痛ッ!」
「 ステータスとか属性とかそんなの俺に存在してんの?」
「 …………メニュー画面を開いてごらんなさい。」
手刀を食らった頭をさすっているテュフォンを横目に、俺はメニュー画面を開いた。
すると、最初の項目に“ ステータス ”と表示されていた。
押してみると、次にステータスの画面が表示される。
「 ……Level1は悲惨だねえ。」
「 うるせえッ!」
テュフォンに怒りつつ、俺は自分のステータスを見てみる。
『 名前 : 四十住 創
     職業 : 無職
     Level : 1
     HP : 900
     MP : 100
    攻撃 : 565
    防御 : 142
    魔力 : 1508
   スピード : 800    』
「 確かに魔力が1番高い……。」
何でLevel 1でこんな高いんだ?
俺別に現実世界で魔力的な何かを高めた覚えはないんだが?
「 だろ?だから聖騎士パラディンが良いんじゃねえか、と思ってな。」
「 成る程。なら、それでお願いします。」
「 おいよ!任せとけ!」
すると、おじさんは自分のメニュー画面を開き、何やら色々操作し出した。
「 ……はいっと、登録しといたぞ。」
「 ありがとうございます!」
なんか、あっさり決まったぜ。
「 決まった?」
「 うん。」
また興味を別に移していたテュフォンが、俺のメニュー画面を覗いてくる。
「 おお、職業が無職から聖騎士パラディンに変わってるね。」
「 凄え!無職というなんとも言えない職業からめっちゃカッコよくなったあッ!」
「 ……創のテンションも高くなったね。」
あったり前だろッ!
俺のドヤ顔をことごとく無視し、テュフォンはおじさんにお礼を言って店内を出て行った。
仕方なく、俺も出て行く。

「 さて、次は酒場に行こう。」
「 何で?俺未成年だから酒飲めねえぞ?」
「 ……飲むわけじゃないから。」
またテュフォンが呆れ目で見てきた。
俺は正論を言っただけだが?
「 えっとね、パーティを結成する為に人を集めるんだ。」
「 へえ。」
成る程。あの4人とか6人のあれか。
「 そしてメンバーが多くなったら、ギルドに変えて組織にする。良い考えだろう?」
「 うん。けど、そんなことより俺帰りたいんだけど。」
「 その為のこれでしょ?もう、分かってないなあ。」
ごめん、何言ってるか俺よく分かんない。
テュフォンは眠そうな瞼を上げつつ、説明を開始した。
「 まず、ここから出る方法はクリア以外ない!」
「 えぇっ!?そんなあ!!」
「 しかもクリアするのはとても大変だ!ボクと創 2人でどうこうなる問題では無いんだよ。だからこそのパーティ結成!」
人差し指を立てて、テュフォンは続ける。
「 そしていつかここをギルドにして、一緒に戦うメンバーを増やし、創が早く帰れる可能性を上げるってこと!お解り?」
「 うん、分かった。説明ありがちょ。」
「 ふざけてるでしょ。」
断じてふざけておらん。
だが、テュフォンが言いたいことは分かった。
とりあえず、俺がここから出る方法はただ1つ。
ゲームクリアしか無いそうだ。
今の俺のLevelはたったの1。
これからLevelを上げるのは大変だろう。
だからこそのパーティ結成。
色々突飛すぎてよく分からないけど、俺が行くべき方針は分かった。
「 よし!じゃあテュフォン!さっさとメンバー集めてゲームクリアしようぜ!」
この“ 殺伐ゲームライフ ”をクリアする事だ。
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