殺伐ゲームライフ!!

斎宮

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1章「 パーティ集め&第1ステージ 」編

第3話「 酒場でメンバー集め!俺は何でも良いんだけど、テュフォンにはこだわりがあるようで……?」

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「 お姉さん、プレイヤーのオーダーして良い?」
「 良いですよ。どのような方を御志望ですか?」
「 えーと、まずは近距離戦に長けたスーパープレイヤーが欲しいかな。次に僧侶。回復がいないと話にならんね。あっ、でも戦える僧侶が良いなあ。あと –––––– 」
「 やたら細かいオーダーは要らんわッ!!」
ついに俺はツッコミをかました。
いや、開始10秒足らずでツッコミをしたから、ついにという表現方法はおかしいな。
でも、ツッコミを入れなければならなくしたのは此奴、テュフォンの所為だ。
店員の美人なお姉さんが少し困った表情を浮かべて、端末を操作している。
「 もう少しオーダーを大まかにしていただくと有難いのですが……。」
「 えぇッ。何でよ?ここの人揃えは悪いのか?」
テュフォン、お前自分の発言を思い出せ。
「 はあ……。」
俺はつい溜め息がこぼれた。

俺とテュフォンは、今酒場にいる。
酒場でパーティを組むメンバーを集める為だ。
しかし、テュフォンは何やらこだわりがあるようで、「 メンバー集めはボクに任せて!」と俺に言って今この現状だ。
本当に彼奴は案内役か?
阿呆としか言いようがない彼奴を一瞥しながら、俺は酒場を見回す。
酒場は、他のプレイヤーでごった返していた。
やはり、パーティ結成は重要というより基本なようだ。
結成したばかりのプレイヤー達や、まだどこにも所属していないプレイヤー、来たのは良いもののどうすれば良いのか分からないプレイヤーなどなど、色々なプレイヤーで溢れている。
まあ、俺は本当変な奴じゃなきゃ誰でも良いんだけど。
どうせ、ゲーム内だけの浅い関係だし。
「 創。」
「 ん?どうした?」
「 1人、ボク達のパーティに入ってくれる人を見つけたよ。」
「 えっ!マジか!!」
テュフォンの言葉を聞いた途端、俺は心なしかテンションが上がった。
どうやら2階にいるらしく、さっきのお姉さんが連れて来てくれるらしい。
どんな人なんだろう?
面白い人か?それとも生真面目タイプ?いや、意外とテュフォンみたいにマイペースな人かもしれない。
俺の中での勝手な空想が、どんどん膨らむ。
「 この方です。」
お姉さんが、階段を降りてきた。
おっ、どんな人かな?
「 こんにちは。創さん、テュフォンさん。」
俺は、その人を見て固まった。
美しい白銀髪。
冷たい雪湖を彷彿させる、ラピスラズリの瞳。
陶器のように白い肌。
とてもよく整った、眉目秀麗という言葉がよく似合う顔。
その細い体を隠す、黒を基調とした服。
彼が纏っている空気だけ、此処とは全然違かった。
そして違う点がもう1つ。
「 ……あの、何で動物に乗っているんですか?」
一様此処店内だぞ。
「 私の大事な相棒ですから。」
成る程、そういうことか。
彼が乗っている動物は、とても高貴な雰囲気だ。
けど、白いドラゴンのような、ペガサスのような、よく分からない動物だな。
初めて見たぞ、ホント。
「 名前は?」
「 私の名前はウィル。職業はフェンサーです。」
「 ウィルさん、これからよろしく。」
「 よろしくお願いしますね ♪ 」
ウィルさんの輝かしい笑みで、俺は心が浄化された気がした……。
「 よろしく、ウィル君。」
「 よろしくお願いします。」
ウィルさんとテュフォンが軽く握手を交わす。
俺だって握手交わせば良かったなあ。
「 ウィル君が入って、創のパーティは戦力が上がった!」
「 うん。」
それがどうした。
「 でも、まだ足りない!せめて、せめてもう1人ここの酒場で誰か欲しいところ!」
「 私の知り合いに、面白い人がいますけど。」
「 本当か!?其奴の職業は?」
なんか、テュフォン感情出しすぎじゃないか?
目が若干見開いてますよ?
「 彼が職業を変えていなければ、“ アーチャー ”です。」
「 アーチャーか。飛び道具専門で遠距離……。悪くないな。」
ふむ。とテュフォンは顎に手を当て少し考える。
俺はとりあえず2人の話を聞くことにした。
「 彼は今どこにいるんだ?」
「 えっと……確か、ケリトの森にいると思いますよ。」
「 ケリトの森?」
何じゃそりゃ。
俺はウィルさんに鸚鵡返しをする。
ウィルさんは、一旦テュフォンとの会話を中断して、俺との会話を優先してくれた。
「 ケリトの森は、100ステージの中の63ステージに存在する迷いの森です。」
「 え?63?結構上じゃない?」
63って……しかも迷いの森という響きがもう既に嫌だ。
俺の疑問に、ウィルさんは少し悪戯笑みを浮かべた。
小悪魔的なその表情は、妖艶な雰囲気がある。
「 そうですね。昨日、彼はその森に行ってくると言って、ここを退出されました。まだ居るということは、装備関係の何かが欲しいのでしょうか。」
どんな人なんだ?その人は……。
「 成る程。よし、創!ボク達はこれからその森に向かうぞ。」
「 はあ!?本気かよッ!」
テュフォン、流石にふざけ過ぎだろ此奴!
何で1Lvの俺がそんな上の方に行かなきゃいけねえんだ!!
「 さっさと彼に会って、仲間にした方が良い。」
「 そうだけどさ~……。」
「 安心してよ、戦うわけじゃないから。」
「 なら良いや。」
「 …………なんかあっさりしすぎて逆に怖い。」
「 それはこっちのセリフだよッ!!」
テュフォンがあっさりし過ぎた方が怖いと思う!
俺たちの会話を聞いてか、ウィルさんがクスクスと笑いを零した。
「 お二人方、とても仲がよろしいんですね。」
「「 どこが!?」」
まだ会って1時間も経ってねぇよ!!
しかも此奴自分勝手でマイペースで俺の話聞かなくて、でも……でも、何故か懐かしい –––––
「 よし!とりあえずさっさと向かうよ~!」
俺の思考を中断させるかのように、テュフォンが少し大きな声を上げた。
「 待って。俺装備無いんだけど?」
「 後で渡すからさ、一旦63層にレッツゴー!」
そう言って、テュフォンは酒場から出て行った。
相変わらず行動だけは早い。
「 行きましょう、創さん。」
ウィルさんが相変わらず謎い動物に乗りながら、俺を外に促す。
いくらテュフォンに文句を言っても仕方がない。
俺は酒場を後にした。

その後、俺達は城下町の中心部に向かった。
そこにステージ選択が出来る場所があり、そこで別ステージに向かうのだ。
『 行き先は63層でよろしいですか?』
“ はい ”の表示画面を、テュフォンはタップする。
俺はドキドキする鼓動を抑えるように、手を力強く握りしめた。
何故ドキドキするのかって?
そりゃあ、勿論、俺はこれからこの先一度も経験する事もない、ゲーム世界での冒険がスタートするんだ。
誰もが一度は夢に見ただろう、2次元での生活が。
現実世界に戻るのは、結構時間がかかるかもしれない。
『 では、転送いたします。5秒前 –––––– 』
なら、戻るまでの間、このゲームライフを満喫してやろうじゃないか。
『 –––– 3 –––– 』
非日常が存在するっていうこの感覚は、もう2度と味わうことが無いだろうからな。
『 ––– 0。行ってらっしゃい。』
そして、俺の視界は白い光に包まれた ––––––
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