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夏布団ぴょんと跳び越す猫二匹
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なつぶとん ぴょんととびこす ねこにひき
前々回の「いざ行かん猫跳び出せば風光る」の形が定まった後のこと。
寝室で布団が丸まって盛り上がっているところを、猫がぴょこんと跳び越してくれました。
こういうとき、猫は、前肢から胴体、後肢にかけて、綺麗なアーチ型を作ってくれます。それでいて、尻尾は天井に向けてピンと立てていてくれます。
その姿を見てやはり猫が小さくジャンプする姿を句にしなければ、と思って挑戦したのが今回の句です。前回に引き続き今回も前々回の副産物のようになってしまいましたが、それもやむなし。
そこでまず、次の形を作ってみました。
布団の皺子猫の跳び越す放物線
「放物線」が最初に出てきているあたり、前々回の影響が強く出ています。
ちなみに「布団」は冬の季語になり、「夏布団」は夏の季語になるのですが、この時点ではそのことを知らずにいました。
このため、春の季語である「子猫」に頼ることに。そして、これが今回の悩みどころになっていきます。
というのは、俳句だから季語を入れなきゃいけない、という理由だけで無理矢理季語を入れた形になってしまったから。こういうのは季語を尊重していないことになります。「布団の皺」を季語となる草花に変える手も考えましたが、それも同じ理由で却下。
さらに、この形だと3か所も字余りになってしまうというのも問題。2句字余りならともかく、これは余り過ぎです。
本来成猫であったものを「子猫」と変えてしまったのも気になりました。事実を変えること自体は、詩の印象のためとかであれば許容範囲なのですが、今回はルールに合わせるためだけだったというのが自分で分かってしまっているため、敗北感があります。
そういうこともあって、推敲過程は難航しました。
ちなみに、「布団」が季語であることを知らない段階で作ったものが、次の通り。
布団の皺子猫のぴょこんと跳び越して
布団の皺子猫のぴょこんと跳ぶ姿
布団の皺跳び越す子猫は「わ」の形
布団の皺跳び越す子猫は放物線
布団の皺跳び越す子猫のしっぽ立つ
排水溝跳び越す子猫のしっぽ立つ
ぴょんと跳ぶ子猫の手足は放物線
ぴょんと跳ぶ子猫の手足はアーチ型
ぴょんと跳ぶ子猫の手足は虹の形
跳ぶ子猫アーチに反り立つ尻尾かな
跳ぶ子猫手足のアーチにしっぽ立つ
きょうだいを跳び越す子猫の放物線
跳び越すものを変えたり、猫の形の表現を変えたりして色々試しています。
この時考えていたのが、季語に「子猫」を使うのだから「子猫」であることが意味を持つような句にしなければならない、ということでした。
例えば、小さくて可愛い子猫らしく可愛らしいジャンプを見せてくれた、とか、反対に、子猫だけど跳ぶ姿勢はしっかりしている、とか、あるいは、これからの成長を期待させる姿だった、といったことです。こうしたことがあれば、先ほど書いた敗北感も拭えます。
その意味では凛々しさのある「しっぽ立つ」が入る形が一番でした。ただ、それを入れると音数的に「放物線」を諦めざるを得なくなり、そこが悩みどころに。
「放物線」という学術用語が出てくれば「子猫」との対比で引き立つかな、と自分を納得させようとしてました。
ちなみに、このとき、「水たまり跳び越す猫は虹の形」というのも考えたのですが、これは没に。
「水たまり」が季語になるかと思ったのですが、調べてみたら季語ではないようです。
一方、「虹」は季語ですが、ここには過去に何度か挙げてきた、他の物事の比喩として登場する季語は季語の扱いになるのか、という問題があります。私の中では、他の人が詠んだ句をその問題で否定することはしないけれど自分が詠むときは季語の扱いにしない、という自分ルールがあるので、この「虹」は季語の扱いにならないことになります。
と、こんな風に考えて、この段階では「ぴょんと跳ぶ子猫の手足は放物線」が一番かな、と思っていました。
ですが、その後、歳時記で「布団」を調べてみてびっくり。見事に冬の季語として載っていました。もしや、と思って調べてみて正解でした。
そんなわけで、季語「布団」あるいは「夏布団」で再挑戦。
布団の皺猫のぴょこんと跳び越して
布団の皺猫のぴょこんと跳ぶ姿
布団の皺跳び越す猫は「わ」の形
布団の皺跳び越す猫は放物線
布団の皺跳び越す猫のしっぽ立つ
夏布団猫のぴょこんと跳び越して
夏布団跳び越す猫は放物線
夏布団ぴょんと跳び越す〇〇〇猫
……まあ、ほとんど「子猫」を「猫」に変えただけです。
このときも最初は「放物線」を活かそうと思ったのですが、なんだかしっくり来ず。
その中で思いついたのが、一番下の形。「〇〇〇」の部分は「丸い」等の猫を修飾する言葉を入れるつもりだったのですが、肝心なのはこの形で3音余っている、ということ。
そして、音数が余ったときに使える手法が一つ。数を入れて具体性を持たせてみる、という手法です。
こうして余った3音に「二匹」を入れ、「猫二匹」に。こうすると、2匹の猫が夏布団を挟んで遊んでいるようにも見えます。意図せず、実際に家の中で見かける情景になりました。
そんなわけで今回も歳時記に助けられたわけですが、本当、調べるって大事ですね。そういうの面倒だと思っていたのですが、意外な着想の元になってくれることを実感。
前々回の「いざ行かん猫跳び出せば風光る」の形が定まった後のこと。
寝室で布団が丸まって盛り上がっているところを、猫がぴょこんと跳び越してくれました。
こういうとき、猫は、前肢から胴体、後肢にかけて、綺麗なアーチ型を作ってくれます。それでいて、尻尾は天井に向けてピンと立てていてくれます。
その姿を見てやはり猫が小さくジャンプする姿を句にしなければ、と思って挑戦したのが今回の句です。前回に引き続き今回も前々回の副産物のようになってしまいましたが、それもやむなし。
そこでまず、次の形を作ってみました。
布団の皺子猫の跳び越す放物線
「放物線」が最初に出てきているあたり、前々回の影響が強く出ています。
ちなみに「布団」は冬の季語になり、「夏布団」は夏の季語になるのですが、この時点ではそのことを知らずにいました。
このため、春の季語である「子猫」に頼ることに。そして、これが今回の悩みどころになっていきます。
というのは、俳句だから季語を入れなきゃいけない、という理由だけで無理矢理季語を入れた形になってしまったから。こういうのは季語を尊重していないことになります。「布団の皺」を季語となる草花に変える手も考えましたが、それも同じ理由で却下。
さらに、この形だと3か所も字余りになってしまうというのも問題。2句字余りならともかく、これは余り過ぎです。
本来成猫であったものを「子猫」と変えてしまったのも気になりました。事実を変えること自体は、詩の印象のためとかであれば許容範囲なのですが、今回はルールに合わせるためだけだったというのが自分で分かってしまっているため、敗北感があります。
そういうこともあって、推敲過程は難航しました。
ちなみに、「布団」が季語であることを知らない段階で作ったものが、次の通り。
布団の皺子猫のぴょこんと跳び越して
布団の皺子猫のぴょこんと跳ぶ姿
布団の皺跳び越す子猫は「わ」の形
布団の皺跳び越す子猫は放物線
布団の皺跳び越す子猫のしっぽ立つ
排水溝跳び越す子猫のしっぽ立つ
ぴょんと跳ぶ子猫の手足は放物線
ぴょんと跳ぶ子猫の手足はアーチ型
ぴょんと跳ぶ子猫の手足は虹の形
跳ぶ子猫アーチに反り立つ尻尾かな
跳ぶ子猫手足のアーチにしっぽ立つ
きょうだいを跳び越す子猫の放物線
跳び越すものを変えたり、猫の形の表現を変えたりして色々試しています。
この時考えていたのが、季語に「子猫」を使うのだから「子猫」であることが意味を持つような句にしなければならない、ということでした。
例えば、小さくて可愛い子猫らしく可愛らしいジャンプを見せてくれた、とか、反対に、子猫だけど跳ぶ姿勢はしっかりしている、とか、あるいは、これからの成長を期待させる姿だった、といったことです。こうしたことがあれば、先ほど書いた敗北感も拭えます。
その意味では凛々しさのある「しっぽ立つ」が入る形が一番でした。ただ、それを入れると音数的に「放物線」を諦めざるを得なくなり、そこが悩みどころに。
「放物線」という学術用語が出てくれば「子猫」との対比で引き立つかな、と自分を納得させようとしてました。
ちなみに、このとき、「水たまり跳び越す猫は虹の形」というのも考えたのですが、これは没に。
「水たまり」が季語になるかと思ったのですが、調べてみたら季語ではないようです。
一方、「虹」は季語ですが、ここには過去に何度か挙げてきた、他の物事の比喩として登場する季語は季語の扱いになるのか、という問題があります。私の中では、他の人が詠んだ句をその問題で否定することはしないけれど自分が詠むときは季語の扱いにしない、という自分ルールがあるので、この「虹」は季語の扱いにならないことになります。
と、こんな風に考えて、この段階では「ぴょんと跳ぶ子猫の手足は放物線」が一番かな、と思っていました。
ですが、その後、歳時記で「布団」を調べてみてびっくり。見事に冬の季語として載っていました。もしや、と思って調べてみて正解でした。
そんなわけで、季語「布団」あるいは「夏布団」で再挑戦。
布団の皺猫のぴょこんと跳び越して
布団の皺猫のぴょこんと跳ぶ姿
布団の皺跳び越す猫は「わ」の形
布団の皺跳び越す猫は放物線
布団の皺跳び越す猫のしっぽ立つ
夏布団猫のぴょこんと跳び越して
夏布団跳び越す猫は放物線
夏布団ぴょんと跳び越す〇〇〇猫
……まあ、ほとんど「子猫」を「猫」に変えただけです。
このときも最初は「放物線」を活かそうと思ったのですが、なんだかしっくり来ず。
その中で思いついたのが、一番下の形。「〇〇〇」の部分は「丸い」等の猫を修飾する言葉を入れるつもりだったのですが、肝心なのはこの形で3音余っている、ということ。
そして、音数が余ったときに使える手法が一つ。数を入れて具体性を持たせてみる、という手法です。
こうして余った3音に「二匹」を入れ、「猫二匹」に。こうすると、2匹の猫が夏布団を挟んで遊んでいるようにも見えます。意図せず、実際に家の中で見かける情景になりました。
そんなわけで今回も歳時記に助けられたわけですが、本当、調べるって大事ですね。そういうの面倒だと思っていたのですが、意外な着想の元になってくれることを実感。
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