勇者パーティーから追放されたけど金髪巨乳にTSしたのでざまあしてやります

かわうそ

文字の大きさ
12 / 14

12.また見守る俺

しおりを挟む
 通路の暗がりから這い出てきたのは、甲殻に覆われた巨大なトカゲだった。ゴブリンとは比較にならないサイズで、体長は三メートルはある。暗赤色の鱗がぬらぬらと光り、黄色い瞳が鋭くこちらを捉えている。その口元からは涎とともに白い蒸気が漏れていた。
 バシリスクだ。視線を合わせれば即座に石化する、とまではいかないが、その吐息には麻痺毒が含まれている厄介な中級魔物。

「二匹か。散開して挟むぞ。リーゼ、火属性が通る。頼めるか?」
「愚問ね」

 リーゼが杖を構えた。今度の詠唱は先ほどより長い。

「《燃え盛る業火の蛇よ、地を這い敵を喰い尽くせ》!」

 杖の先端から放たれたのは、生き物のように蛇行しながら地面を走る火炎の帯だった。先ほどの火球とは威力も制御技術も段違いだ。炎の蛇は一匹目のバシリスクに巻きつき、鱗を焦がして絶叫させる。
 だがバシリスクも頑強だった。炎を振り払うように体をくねらせ、大きく口を開けて白い息を吹きかけてくる。

「リーゼ、避けろ!」

 アルたんが叫ぶと同時に、リーゼは転がるようにして吐息をかわした。麻痺毒の白煙が通過した石壁が、みるみる白く変色していく。あれを浴びたら即座に行動不能だ。

「やっかいな息してやがるな!」

 カールが横から突進して、戦斧でバシリスクの脇腹を殴りつけた。鱗が砕け、赤い肉が覗く。だが致命傷には至らない。バシリスクは苦悶しながらも尾を振ってカールを跳ね飛ばした。

「ぐはっ!」
「カール!」

 壁に叩きつけられたカールだったが、すぐに起き上がる。

「ははっ、効いたぜ。ははっ」

 笑ってるけど、結構痛かったんじゃないのか。

 二匹目のバシリスクが広間の柱を盾にしてこちらに迫ってきた。柱の影から影へ移動しながら間合いを詰めてくる。賢い。本能なのか、ゴブリンより余程嫌らしい行動をしてくる。
 アルたんが一匹目に斬りかかっている隙に、二匹目の狙いは──俺だ。
 後方にいる俺とゲオルクに向かって、二匹目が突進してきた。

「下がってくだされ、エミ殿」

 ゲオルクが一歩前に出て、両手を掲げた。

「《聖なる障壁よ、我が信仰を楯としてここに顕現せよ》!」

 金色の光壁が出現し、突進してきたバシリスクを弾き返した。ゲオルクの防護術式だ。衝撃で空気が震え、俺の髪がばさばさと揺れる。

「なかなかの強敵ですな。拙僧の障壁もそう何度も持ちませぬぞ」

 ゲオルクの額にも汗が滲んでいるが、その声は落ち着いていた。戦闘中のゲオルクは、普段のむっつりスケベとは別人のように頼もしい。こういう時だけは、この僧侶を心から信頼できる。

 弾かれた二匹目が体勢を立て直す前に、影から矢が三連射された。喉、左目、右の前脚の付け根──クルトの狙撃が続けざまに急所を貫く。二匹目のバシリスクが激しく身悶えし、動きが鈍る。

「今だ!」

 アルたんが一匹目を深手を負わせて牽制し、二匹目に跳躍して上段から剣を叩き込んだ。頭と胴を繋ぐ甲殻の継ぎ目、わずかな隙間を正確に突いて、聖剣が深く突き刺さる。
 二匹目のバシリスクが最後の痙攣を見せて、崩れ落ちた。

 残る一匹に、リーゼが二発目の火炎蛇を叩き込む。今度は先ほどの傷口を正確に狙って──鱗が剥がれて露出した肉に、炎が直接食い込んだ。

「ギャアアアァッ!」

 断末魔の叫びが広間に反響して、一匹目も倒れた。

「……ふぅ」

 リーゼが額の汗を拭って、深呼吸した。杖を支えにしている。連続の大型魔術で消耗しているのだ。

「お疲れ様です。癒しましょう」

 ゲオルクか近づいて──リーゼの肩に手を伸ばした。

「触んないで」
「いや拙僧は回復を──」
「手が肩より下に行こうとしてたでしょ。見えてたわよ」

 ゲオルクの手がぴたりと止まった。さすがリーゼ、目ざとい。

「……仕方ありませぬ。では、非接触で」

 少し離れた位置からゲオルクが回復術式を放ち、リーゼの疲労が緩和される。できるじゃないか、最初からそうしろ。

 俺はと言えば、戦闘中ずっと後ろで見ているだけだった。また、足手まといの位置だ。封印の解除はできたのに、戦闘になると体が竦んでしまう。魔力の出し方もまだわからない。あの封印の時は無意識にできたのに、意識すると途端にわからなくなる。
 自分が情けなかった。この体にはスキルがある。力がある。でも、使いこなせない。それは──ある意味、村人だった頃と変わらないんじゃないか。持っているのに使えない。宝の持ち腐れ。

「エミ」

 アルたんが声をかけてきた。

「大丈夫だったか?」
「うん。わたしはなにもしてないし」

 自嘲が滲んでしまう。アルたんが少し眉を曇らせた。

「焦ることはない。さっき封印を解いた力は本物だ。いずれ戦闘でも使えるようになるさ」
「……ありがとう」

 励ましの言葉が嬉しいのか悔しいのか、自分でもわからなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...