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1章
令嬢の噂
しおりを挟む白糸でつくられた純白な衣服を纏い
銀色の十字架を首にさげる聖者
左手には聖水
右手には聖書
右手の聖書を空に浮かせて唱え続ける
そして、ハナの口に聖水を含ませ
十字架をハナの額にかざす
「可哀想に、この子はとんでもない悪魔に取り憑かれてます。」
「そんな、」
「やっぱりか、ハナ」
両親は頬に大粒の雫をながし
静かに泣き、
今は静かに眠るハナの手を掴んだ
「今晩はこれでいいのですが、朝昼晩と聖水を飲ませてください、そして夜は聖書を読み聞かせ、十字架をこの子の首につけてください、」
「それで、それでハナに取り憑く悪魔はいなくなりますか!?」
「ハナは、ハナは元に戻りますか!!」
「えぇ、きっと」
健やかな顔で眠るハナを見て
両親は決心した。
これから欠かさず聖者のおっしゃったことをしようと
母はプリッツを呼び、ハナに毎晩聖書を読み聞かせてと命令
父は料理長に聖水をいつもの水と置き換えることを命令した
皆、ハナを心配した、
「この子には、今日あったこと言ったことは絶対に言わないでください、
分かりましたね、」
「はい」
「もちろんです」
両親は聖者を門まで送り、
聖者の姿が見えなくなるまで頭を下げていた。
「よかった、よかった」
「今日もう寒い、疲れたろう、早く寝ようか」
「はい、」
その日はみんな快眠だったという
次の朝からハナの噂が流れ続けた
「ねぇ、聞いた、ハナ様の話し」
「悪魔に取り憑かれていたそうね」
「えー怖い、ハナ様のおそばにいても大丈夫なのかしら」
「もう追い払ったって噂だけど」
「でも、噂でしょ」
「でも、ある人が夜にハナ様の豪邸から聖者が出てきたって、」
「えー、見た人いるの、」
「まぁ、でも、はな様の前でこの話はするなって、みんな釘打たれてるから、ハナ様の前で話すのはやめましょ」
「そうね、」
噂はすぐ広まったが、終わるのも早かった
ハナにとって記憶のないことを本人の前で話しても、
何にもならないことはみな重々承知だ。
この騒動はすぐに幕を閉じて
噂も都市伝説となっただけだった。
みんなの記憶からはすっぽり抜けた。
ただ真実を知ってるのはハナの両親、聖者
使用人だけであった
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