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汪楓白、最愛の妻に逃げられるの巻
其の四
しおりを挟む周回を取り囲む白蛇……男が店の中央で、ひときわ強く床を蹴り、体を回転させながら、真上へ飛翔した途端、やはり蛇腹を回転させながら、あとを追う白蛇が、なんと一瞬の隙を突き、男の体をグルグル巻きに締め上げてしまったのだ。男は苦痛に顔をゆがめ、一直線に石床へ落下。ドスンッと、物凄い地響きを鳴らす。今や、とぐろを巻く巨大白蛇の体からは、男の頭部しか見えなくなっている。白蛇は毒牙をむき、男の頭を喰い千切ろうとする。まさに絶体絶命……そう思われた時、またしても男は、驚くべき功力を魅せたのだ。
額に汗を浮かべつつも、ニヤリと笑って、男は云った。
「白蛇ちゃん! この瞬間を、待ってたぜ!」
直後、男は渾身の力で、両手持ちの大刀を振り上げ、幾重にも巻きついた白蛇の胴体を、斬り裂いてしまったのだ。丁度、四分割された白蛇は、けたたましい奇声を放ち、いよいよ激しく暴れ回る。店内は、上を下への大騒動だ。それでも男は、白蛇の口の奥にひそむ、玲那の美貌を睨むと、躊躇なくそこへ大刀の切っ先を突きこんだ。真二つに割られる顔面。
そして――、
『キヒイィィィギュイィィィイッ!』
金属音に似た耳障りな雄叫びこそ、白蛇の口内の玲那が発した、断末魔の悲鳴であった。
男が白蛇の口から大刀を引き出すと、そこには玲那の無惨な生首がつらぬかれていた。
だが、それも束の間……玲那の生首も、体同様に砂塵と化し、消滅したのだ。
そして、あとを追うように白蛇の体も、ドス黒い瘴気につつまれ、融解して消えた。
あとには、石床の血のシミと、鼻を突く異臭だけが残された。
「……白蛇が、消えた……?」
「お、おおっ……玲那、いや……妖怪が、死んだぞ!」
「凄ぇ……凄ぇや! なんて凄ぇ御人なんだ!」
「たった一人で、あの巨大な白蛇を、倒しちまうなんて!」
店の奥の物陰に隠れ、一部始終を目撃していた客たちは、最初の内こそおののき、呆然自失といった感じだったが、やがては狂喜乱舞し、一人……また一人と、歓声を上げ始めた。
それから恐る恐る広間へ出て来ては、黒ずんだ床を忌々しげにながめ、口々に男への賞賛の言葉をつむぐ。二階から見ていた店主も早速、転がるように男の元へ駆け寄り、拱手で礼を尽くし、深々と頭を下げた。店内の様子は、あちこち散々に破壊され、再建費用も莫迦にならなそうな有様だったが、妖怪を退治してもらった喜びの方が、勝るものらしい。
「神々廻道士さま! ありがとうございます! お陰で、店は多少の痛手をこうむりましたが……大切なお客さまがたには、被害を出さずすみました! これは、約束の手間賃です! 本当に、ありがとうございました! それにしても……まさか玲那が、蛇精だったなんて、驚きです……しかも、あんな妖怪に豹変するとは……啊、恐ろしや、恐ろしや!」
悪寒に震え、念仏を唱える店主の蒼白顔を見て、男は……《神々廻道士》は、かすかに笑ったように見えた。むむ……僕の気のせいだろうか? 神々廻道士は、すぐまた神妙な顔つきになり、大刀を鞘へ納め、店主から手間賃を受け取りながら、こんなことを云った。
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