神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、鬼憑き芝居に加担するの巻

其の参

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 ……と、云うのも、だ。ジリジリと照りつける太陽。ジロジロと見つめる視線。
 どうやら、柩の蓋が開けられ、何者かは知らないが、大勢の人々に凝視されてるらしい。
 さらに――、
「……つまり、この死骸に、鬼を依せ憑け、村長むらおさを救うと云うのですね?」
「……それで父は、本当に助かるんですか? 元の優しい父に、戻るんですか?」
「……相手は、ただの邪鬼じゃない! 怪鳥を操る、鬼神級の強敵ですぞ!」
「……いいや、みなの衆! ここは、高名な神々廻ししば道士さまを、信じようではないか!」
「……そうですよ! なにせ神々廻道士さまの功力くりきは、都随一との評判ですからね!」
「……どうか、神々廻道士さま! 村長の鬼祓い、よろしくお願い致します!」
 えぇと……この声は誰の声? どうも、様子がおかしいぞ?
 そもそも、体が萎靡いびして、まったく動かない! 指先ひとつどころか、まぶたを開けることもできない!
 一体全体、どうなってるんだ!?
 僕の失神中、なにが起こったんだ!?
 ここは、どこなんだ!?
「すべて私にまかせなさい。計画は、こうです。まず村長に憑いた鬼を、『樒酒しきみざけ』でいぶり出します。そして本日墓場へ向かう途中だった、この罪人の死骸を上手く囮として使い、新たな憑坐よりましにします。その上で、この【鬼篭柩おにごめひつぎ】へ完全に封印し、私の廟にそなえつけの窯で焼き祓い、現世から完全消滅させます。怪鳥の方は私の愛弟子が片づけますので、その点もご心配なく……できるな、茅娜ちな。但し戦況が厳しくなって来たら、私を呼びなさい」
「はい、師父しふ。私も、もう一人前です。必ずや師父の……そしてみなさまの、ご期待に応えてみせます。どうぞ怪鳥退治は、大船に乗ったつもりで、この茅娜にまかせてください」
「うむ。頑張れよ。では早速……始めるとするか」
 ちょ、ちょ、ちょ……ちょっと待ってよ!
 罪人の死骸って、僕のこと!?
 新たな憑坐って、それも僕のこと!?
 現世から完全消滅って、それまた僕のこと!?
 嘘だろ! まさか、悪い冗談だろ!
 哈哈ハハ……みなさん、聞いてください! こいつの云ってることは、全部・ゼンブ・ぜぇんぶ、嘘八百ですよ! 僕は生きてるし、罪人じゃないし、これは【鬼篭柩】なんかじゃないし、こいつの廟に窯なんかなかったし……そもそもこいつらは、道士も、妖怪も、邪鬼も、全員がグルなんですよ! ……って、声を限りに叫びたい! 叫びたいのにぃい!
「しかし、まだ若いのに……逆磔さかさはりつけの上、火あぶりになるほどの罪を犯すとは、一体……」
「当然ですな。強盗殺人婦女暴行に誘拐放火、前科六犯の凶悪な男ですから」
「はぁ――っ! 真面目そうな顔して、人は見かけによらんのう!」
「なんて野郎だ! こいつこそ、邪鬼の餌にされるのが、似合いだぜ! ペッ!」
 うっ! もしかして、顔に唾吐かれた!? 知らない人に!?
 さ、最悪だ……こんな屈辱、生まれて初めてだ! しかも、エセ道士め!
 僕のことを、前科六犯の凶状持ちに仕立てやがって……許せん、絶対に許せぇん!
 それにしても、どうして体が云うことを利かないんだ!
 いや、これもきっと、神々廻道士が弄した詭計にちがいない! 奴が僕の体に、なにか特殊な細工をしたんだ! 呪詛をかけたとか、あるいは操術系そうじゅつけいの伎を用いたとか……ああ
 そうか、この首輪……多分、これのせいなんだ! クッソ――ッ! どうせ、自分本位に操るつもりなら、いっそのこと意識も奪ってくれればいいのに、根腐れた性悪道士め!
 こいつこそ、最低のクズ野郎だ!
「しかし……この男、死人とは思えん肌艶だ。まるで、生きているようですなぁ……」
「いやいや、まさか。この通り、確実に死んでおります」
――グサッ!
 ひっ……ぎゃあぁぁぁあっ!
 右側の腿に、なにか刺しやがった!
 死ぬほどいてぇえぇぇぇえっ!
 いっそ、気絶したいよぉおぉおっ!
「ね?」
「なるほど、血も出ない」
「道士さまの、仰る通りですな」
「確かに、なんの反応もありませんね」
「いや、あるワケがないですよ。死人なんですから」
 どこぞの村の、誰かも判らん住民たちは、これでようやく得心し、僕を納めた柩から離れた。その瞬間を見計らってか、神々廻道士は朗々たる大音声だいおんじょうで、こう宣言した。
「では早速、作戦開始です! 住民のみなさんは、この結界線から先に、決して入らないように! 絶対に、なにがあってもです! 万一、足を踏み入れた場合、命の保証はできかねますぞ! どうか、我々のことは心配なさらず……さぁ、早く下がってください!」
「「「は、はいっ!!」」」
 幾分、緊張した声音で、返事をそろえる住民たち……啊、僕の運命や、如何いかに!
 と、その刹那――どこからともなく、耳をつんざくけたたましい奇声が聞こえて来た。
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