神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、羞恥心の限界を超えるの巻

其の五

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「僕を置き去りにして、逃げちゃった!? そりゃあ、あんまり非道すぎでしょお!」
 僕は慄然とし、周囲の闇に目を凝らしたが……やっぱり、いない。なんてこった!
 そういえば、さっき神々廻ししば道士が、こんなことを云ってたな……『これから起こる事態を、上手く一人で解決してみせろ』……それが、解放の交換条件だと! つまり僕一人で、こいつらを、倒せってことなの!? 
 そりゃあ……無理だ! 絶対に、絶対に無理だよ!
 大体、僕……服も着ていないし、丸っきりの丸腰なんだよ!? どうしろってのさ!?
「とぼけるんじゃないよ! お前が如き小悪党の浅知恵なんて、お見通しなんだよ!」
「しょうだ! おねぇたまは、なんでもお見通しなんだぞ――っ!」
 ズイッ……と、大八車に近づいた女賞金稼ぎ二人は、怒り心頭、戦意万端だった。
 だけどさ……ちょっと待ってくれよ!
「いや……そもそも、あなたたち、隙だらけだったじゃないですか! 二人だけの世界に入りこんじゃって、恥ずかしいったら……大体ね! 賞金稼ぎのクセに、なに捕り逃がしてんですか! あんな大悪党、のさばらせておいたら、今後どれだけ弱者が泣く破目に」
「黙れ! 薄汚い罪人の仲間が、えらそうな口利きやがって……この琉樺耶姐るかやねえさんに、意見すんじゃないよ! さっさとそこから出て来い! まずはお前を、お仕置きしてやる!」
「しょうだ! 早く出て来ぉ――い! おちおきちちゃうぞ――っ!」
 出て来いったって、それは、さすがに……まずいっしょお! 僕は頬を紅潮させ、まるで浴槽に浸かるように、柩の中へ身を沈めては、ふちにつかまったまま、女二人を睨んだ。
「い、嫌です! 遠慮します!」
「ほぉ……つまり、その柩の中に、永眠させて欲しいのかい!」
 そ、そんな……こっちの事情も知らないで、怖いこと、云わないでくれよぉ!
「それも、嫌です! 遠慮します!」
「だったら、こうちちゃうぞ! てぇえ――いっ!」
「ま、待って! 僕は、あいつらとは無関係……うぎゃぁあぁぁぁあっ!」
 すかさず駆け寄った茉李まつりが、僕入り柩の乗った大八車を、その怪腕で思いきり振り回し、ついには派手にひっくり返してしまった。僕は柩から投げ出され、琉樺耶の前にドスン!
 地面に頭をめりこませ、丁度、逆さまで大事な部分を丸出し状態……って、ひ――っ!
 恥ずかしすぎる! 羞恥心の限界越えだ!
 だって、僕……服を着てないんだぞ!?
「きゃん! こいちゅ、しゅっぽんぽん!」
「ひっ……」
 案の定……というか、それ以上の過剰反応を示したのは、琉樺耶の方だった。小さな悲鳴とともに顔をおおい、背中を向け、ワナワナと震え出し……直後、烈火の如く激昂した。
 どうやら彼女、猛烈な男嫌いらしい。いや、嫌いを通り越して、憎悪してるかも?
「き、貴様……この、私の視界に、よくも、そんな、薄汚いモン、入れてくれたねぇ!」
 なんとか半身を起こした僕は、慌てて恥部を手で隠そうとした。
「そんな、ムチャクチャな……云いがかりも、はなはだ」
 刹那、ヒュンッ……と、空を斬り飛来した金環が、僕の股間に突き刺さった。
「どっしぇえぇぇぇえっ! あっ、あっ、あっ……あぶっ、危なっ……」
 も、もう少し! あと一寸で、大事なモノが、斬り落とされるトコだった! 金環の鋭利な刃は、僕自身とスレスレのところで、ギュンギュンと音を立て、猛回転しているぞ!
「こらぁ! 茉李のおねぇたまに、よくも恥をかかちてくれたわねぇ!」
「恥をかいたのは、こっちですよ! しかも、あんたのせいで!」
「最早、問答無用!」
 琉樺耶は、僕(の裸)を、見るのもうとましいといった感じで、再び天法輪てんぽうりんを投じて来た。
 しかも、さっきより確実な殺意をこめて!
 今度は、僕の顔面めがけて!
しゃぁあぁぁぁあっ!」
 すると僕は奇声を発し、近くに落ちていた木の枝で金環をはじくと、凄まじい勢いで地面を蹴った。信じられないような脚力で、孟宗竹もうそうちくを駆け登り、笹の葉を散らしては、女賞金稼ぎたちの視界をさえぎる。
 笹の葉は、それ自体がまるで小刀の如く鋭利になり、彼女たちの衣服を、あられもなく斬り裂いた。途端に、けたたましい悲鳴が、竹林に響き渡る。
「きゃあぁあぁぁぁぁあっ!」
 ここでも、やはり胸元や腰回りを露呈され、倉皇そうこうしたのは、琉樺耶の方だった。年上で冷静なように見えても、彼女の方がスレてないらしい。対して茉李の方は、というと……爆乳がボロンとこぼれても、短袍たんぽうの裾がズタズタになっても、肢のつけ根がきわどく見えちゃっても、まったく動じない……どころか、いよいよ躍起になって僕を追って来る。
「よくもぉ、おねぇたまをぉ、傷ちゅけたわねぇ――っ!」
哈哈哈ハハハ! 実にいいながめだ! いっそ、俺同様に、素っ裸にしてやろうか!」
 ちがう! ちがうってば! 判ってくれるよね! これは、僕じゃないってこと!
 まちがいなく、僕は蒐影しゅうえいに操られているのだ! 僕を置き去りにし、さっさと逃げ出したはずの三妖怪は、一時的に近場へ身を隠しただけで、こういう反撃の好機をうかがっていたのだ! つまり……ってことは、だ! 神々廻道士も、すぐそばにいるってこと!?
 よく見れば、竹笹かと思ったものは、呀鳥あとりの風切り刃(羽)だし、その上――、
「嫌ぁあぁぁぁあっ!」
 巨大な白蛇……いや、蛇那じゃなだ!
 本性を現した蛇那が、ひるんで動けずにいた琉樺耶の肢体へ、がんじがらめに巻きついている! うひゃあ――っ! 物凄く、凄艶な光景!
 さらに、駄目を押すかのように、大翼をひるがえした呀鳥が、とんでもないことをやらかした! 僕を振り落とそうと、大鉞おおまさかりで竹幹を斬り刻んでいた茉李に、背後からおおいかぶさり、二度三度、両翼をすり合わせた途端、茉李の衣服は一糸も残さず消滅していた。
 要するに……、
「きゃ――んっ! ヤダ、ヤダ、ヤダァ――ッ!」
 これには、さすがの露出狂(?)茉李も、可愛らしい悲鳴を上げ、その場にうずくまってしまった。なんてこった……いくらなんでも、女の子相手に、非道すぎるよ、これは!
「哈哈哈! いいザマだな! この俺に、楯突いた罰だ!」
 だからぁ――っ! ちがうって! 僕じゃないの! 絶対に、ちがうんだよぉ――っ!
「ひゃあっ……嫌ぁあっ……んぐ」
 そうこうする間に蛇那がチロチロと舌先で琉樺耶のうなじをなめ、勝気な女賞金稼ぎに、妙に色っぽい嬌声を上げさせている。しかも、細く伸びた蛇那の四肢は、それ自体が子蛇と化し、琉樺耶のパッツンパッツンの黒革戦袍くろかわせんぽうの中へすべりこみ、妖しくうごめいている。
 うぅむ……これは確かに、なかなか見ごたえが……じゃない!
 非常事態だ! なんとか、助けてやらなくちゃ! ……と、決意も新たにした瞬間、僕の思考を読んだのか、蒐影が、またしても、僕の意に反し、突飛な行動を起こしたのだ。
「よぉし、とどめだ! その可愛い顔を、恥辱まみれにしてやるぜ! 哈哈哈哈哈!」
 そう云って、僕のアレをつかんだ蒐影……ま、まさか! とどめって、まさか!
 僕は猛烈な尿意を覚え、顔面蒼白となった。(見た目は、笑ってるんだけどね)
 そんな、嘘……悪い夢だ……こいつってば、他人の体内器官まで、操れるのぉお!?
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