神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、羞恥心の限界を超えるの巻

其の六

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「クソッ……冗談だろ! や、やめろ!」
 やめたいよ! やめたいけど、どうしようもないんだよ! お願いだから、そんな目で、僕を見ないでくれ! これじゃあ、僕……丸っきり、ド変態じゃないか! 畜生っ……こいつら、どこまで人をもてあそべば気がすむんだ!
 ハッ……そうだ! まだ、茉李まつりがいたっけ! おい! 早く助けに来てくれ! 大好きな〝おねぇたま〟が、一大事だぞ! 多少の痛い思いなら、この際、目をつぶるから! 蒐影しゅうえいと、蛇那じゃなの暴走を、止めてくれぇ!
 ところが、頼りの綱の茉李は……と、云うと、こっちも大変なことになっていた。
「あぁん! おねぇたまぁ! たちゅけてぇえ! こんなの嫌ぁあぁぁあ!」
 なんと、調子に乗った呀鳥あとりは、肌も露な茉李の膝裏へ翼……でなく、人間のものに戻した腕を差し入れ、開脚状態で、かかえ上げたのだ。判るかな……つまり、それって、小さな子供に、おしっこをさせるような格好ってこと! それが意味するところとは、多分!
「さぁ、お前も出すんだ! さもねぇと、大好きな〝おねぇたま〟の美貌を、俺たちの元締めである、《汪楓白おうふうはく》さまの黄金汁しょんべんで、ビッチャビチャに清めちまうぞ! いいのか!」
 なんちゅう恥ずかしいセリフ! なんちゅう赤面ものの格好! 可哀そすぎる!
 しかも、呀鳥の野郎! ここに来て、僕の本名、明かしやがった! 莫迦ばか――っ!
「えぇ――ん! おねぇたま! 茉李、はじゅかしくて、死んじゃう! 見ないでぇ!」
 茉李は、手足をバタつかせ、必死に抵抗していたが、やがて泣きべそをかいて、紅潮した顔を両手で隠した……って、隠すトコ、そっち!? だって彼女、なにも身に着けてないんだよ!? 素っ裸(僕もだけど)なんだよ!? 
 大事な部分が、パックリ御開帳……ヤバい、思わず直視しちゃった! 鼻血が噴き出しそう……いや、今はそんなこと云ってる場合じゃない! なのに当の僕は、蒐影のせいで、またまた爆弾発言をしてしまった!
「どうだ、琉樺耶るかや。ここは素直に、己の負けを認めるか? そうすれば、小便責めだけは勘弁してやる。可愛い妹分の前で恥はかきたくないし、妹分に恥もかかせたくないだろ?」
 極・悪・非・道……しかも、エグい! エグすぎるってば!
 これが僕だなんて、絶対に誤解されたくない! 頼むから、誤解しないでくれよ!
 まぁ、無理な相談だろうけど。
「うっ……な、なんて、卑劣な、男なんだ! 神々廻ししば道士以上の、悪党だね! 元締めってことは、お前が諸悪の根源かい! 畜生っ……その、汚いモンを、私に近づけるなぁ!」
 僕だってね、出会ってまだ半時も経っていない女性に、見せたくなんかないよ!
 汚いとか、云わないでよ! だって、これは……凛樺りんかのモノだモン!
「ほら、急げ。あと五秒しか待てねぇぞ。返答如何いかんで、放出開始だ」
 ぐひ――っ! いよいよ、強烈にもよおして来たぁ――っ! 誰か、助けてぇ――っ!
「だ、誰が……くっ、お前なんかに……」
 僕は、自分のアレを、琉樺耶の目前に突きつけて、到頭、秒読みを始める。
「五、四……」
 この時の僕は、恐ろしいほど、邪悪に、冷淡に、笑っていたらしい。(蛇那の後日談)
 すると、後方で呀鳥の魔手に囚われていた茉李が、泣きながら僕に哀訴して来た。
「ぐすっ、えぐっ、茉李、しゅるから……お願い、おねぇたまには、かけないでぇ!」
 妹分の犠牲的精神に心打たれ、琉樺耶は激しく身をよじった。
「ば、莫迦! なに云ってるんだい! 嫁入り前の女の子が、そんな真似しちゃあ、絶対にダメだ! 畜生っ……離せぇ! あんっ、嫌ぁ……そ、そこは、触っちゃダメぇえ!」
 けれど蛇那の緊縛は執拗で、しかも革戦袍かわせんぽうの下をまさぐる蛇触手が、彼女の敏感な部分をいじったようで、琉樺耶はゾクゾクッと身震いし、甘い声音で懇願した。その表情の艶やかさ、なまめかしさったら……そこって、どこ!? 蛇那、一体どこを触ったのよ!?
「三、二……」
 おっと、まずい! 悪夢の秒読みは、容赦なく進んでいる!
 どうしよ! どうしよ! だぁ――っ! もう、頭が真っ白だよぉ――っ!
 と、まさにその時だった。勝気な女賞金稼ぎが、ついに根を上げたのは……。
「クッソ――ッ! 判ったぁ! 負けを認めるからぁ! もうやめてぇえ!」
 琉樺耶の悲痛な叫び声が、僕の心を凍りつかせた。
 そんな僕の足元では、影がわずかに隆起し、不自然にゆがんでいる。
「なんだよ、もう少しで……ま、いいか。許してやる」
 そうつぶやいた途端、僕の体は、糸が切れたように脱力し、その場にへたりこんでしまった。影が……蒐影が、僕を傀儡術かいらいじゅつから、解き放ってくれたらしい……た、助かった!
 真正の変態に、ならずにすんだようだ。
ああっ……や、やっと、体が自由に……よかった! 大丈夫ですか、お嬢さんがた!」
 僕は、ようやく僕自身の言葉で、泪ぐみ、うつむく女賞金稼ぎたちを、心底気づかった。
 蛇那も、引き際は心得ているようで、すぐさま琉樺耶の体から離れ、蛇触手も抜き取る。
 背後では呀鳥が、つまらなそうに舌打ちし、茉李の体を地面に投げ出す。彼女も、琉樺耶同様、放心状態だ。足元に転がる大鉞おおまさかりに視線を落としつつ、身動きひとつできずにいる。
 僕は、先刻とちがい、やけに弱々しく、痛々しくなった琉樺耶と、後方の茉李にも聞えるよう、懸命に慰め……そして、同時に後難を恐れ、女々しく、苦々しく、弁解を始めた。
「どうか、泣かないで……いえ、泣きたいのは、僕も同じなんですよ。こんな話、とても信じられないでしょうが、今までの悪逆非道な行為、実は僕の本意ではなくて、ですね」
 あちこち破れて、いい具合……いやいや、危なっかしく、肌が露出した革戦袍姿の琉樺耶は、僕の言葉を聞いて、フイと泣き顔を上げた。
 こうして近くで見てみると、彼女は美しい……凛樺以上に……いやいやいや! 凛樺と、タメを張るくらいに、美しい女性だ。
 しかも琉樺耶は、泪に濡れた青藍の瞳で、じっと僕の顔を見すえている。
 なにか云いたげに、あざやかな朱唇を半開きにしている。
 その表情がまた、実に色っぽいったら……僕はついつい、彼女に見惚みとれてしまった。
 だけど、いつまでもこうしてはいられない。
 彼女は絶対、僕を恨んでるだろうし……それにしては、奇妙なほど静かだし……僕はその内、不安になって来て、怖々と問いかけた。
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