神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、最強の功力を発揮するの巻

其の参

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 ………………………………………………………………………

――パン、パン、パン、パン、パンッ!
 …………うぅ、痛い、痛い、痛い……物凄く、ほっぺたが……、
「い、た……」
――バシン、バシン、バシン、バシン、バシンッ!
 ……ひぎぎっ、さっきより、力強く、情け容赦なくなってる! 痛い、痛い!
「いっ……痛いってばぁあっ!」
 僕は、あまりの痛みに堪えかねて、ガバッと身を起こし、自分の両頬を押さえた。
「「「「「…………!!」」」」」
 アレレ……なんか、妙な感じ……なんなの、これは? どうしたの、みんな?
 そんな目で、見ないでよ……まるで、化け物か鬼でも、見るような目つきでさ。
「シロちゃん!」と、蛇那じゃなは何故か、僕の手をにぎり、感泪にむせんでいる。
「おぉ、シロ!」と、蒐影しゅうえいは何故か、僕の背をさすり、声音を震わせている。
「生き返った!」と、呀鳥あとりは何故か、僕の頭を撫でて、鼻水をすすっている。
「よかったな!」と、醸玩じょうがんは何故か、僕の肩をつかみ、深くうなずいている。
 だから、なんなのさ!? どうしちゃったのさ!?
「せ……先生!」と、えん隊長まで、何故か、僕の前にひざまずき、深々ふかぶかと頭を下げる。
 そんな指揮官に触発され、周囲に居並ぶ討伐隊員たちも、一斉に拱手こうしゅで礼を尽くす。
「「「無事のご帰還、心よりお喜び申し上げます!!」」」
 でぇぇえっ!? ちょっと! 誰か、この状況を説明してくれよ!
 いやいやいや……それ以前に、まずは、はっきりさせとかなきゃ! この点を!
「ところで……誰ですか、僕の頬、思いっきり殴ったのは! おお、痛かった!」
 憤る僕の、すぐ真後ろから、聞き覚えのある声が、投げかけられた。
「ほらな。師父しふの命令は、絶対なんだよ。判ったろ、彪麼ひょうま
 何故かそっぽを向き、グスッと鼻をすすりながら、うそぶく神々廻ししば道士。
 うそぶく神々廻道士……って、ありゃあ? 人間だ……鬼じゃない!?
「……え? 師父? えぇえっ!? いつの間に、元の姿に!?」
 目を丸くする僕。
 神々廻道士は、笑っている。
「あれれ、【鬼宿木おにのやどりぎ】がない! 地面も、赤腐土あかふどじゃなくなってる!」
 声を裏返す僕。
 燕隊長も、副長も笑っている。
「……ってか、ここはどこなの!? 上忌地じょういみちを、いつ脱出したの!?」
 キョロキョロする僕。
 討伐隊も、笑っている。
「そういえば、蛇那も、蒐影も、呀鳥も、以前の人間の姿に戻ってる!」
 混乱いちじるしい僕。
 三妖怪も、笑っている。
「なにより、女性たちは誰が助けたの!?」
 状況が呑みこめない僕。
 醸玩も、笑っている。
「うわっ! 楊榮寧ようえいねいまで生きてるよ!」
 顔を強張らせる僕。
 誰もがみんな、笑っている。
 しかも、どういうわけか、目に泪を一杯ためて……だから、なんなんだよぉ、一体!
 僕はすっかり混乱し、頭の中は疑問符だらけになった。
 そんな僕の顔を、しげしげとのぞきこみ、燕隊長が問いかけた。
「先生……あなた、なにも覚えていないんで?」
「はぁ……なんか、ヤケに体が軽くなったような気はしますが……一体全体、どうなったんです? ねぇ、誰か説明してくださいよ! ちょっと! なにが可笑しいんです、燕隊長! 蛇那も、蒐影も、呀鳥も……ああ! 師父まで一緒になって、僕を嘲笑ってますね!」
 とにかく、誰でもいいから、事情を説明してよ!
 僕、途中で気絶しちゃったのか、記憶が吹っ飛んじゃってて、肝心な部分を、なにひとつ見聞きしてないんだよ!?
 このままじゃあ、気になって、気になって……不眠症になりそうだよ! みんなして、僕を莫迦ばかにして、笑ってないでさ……早く教えてってばぁ!
「……ふ、ふ、哈哈ハハ、哈哈哈、まったく……敵わんな。おい、シロ……」
 そう云いながら、神々廻道士は、唐突に僕の体へもたれかかって来た。
「えっ……師父、大丈夫ですか! うわっ……酷い傷! 誰か、早く手当てを!」
 よく見れば、半裸の彼は裂傷だらけで、逆に無傷な場所を探す方が、難儀なほどだった。
 僕は、なんて間抜けなんだ!
 こんな瀕死の怪我人に、今まで気づかなかったなんて!
 すると神々廻道士、僕の思惑を察知したのか、嫌味で皮肉めいたセリフをつぶやき……、
「その、間抜けっぷりに……まんまと、騙されたぜ。てめぇは、もう……破門、だ」
「それは、前にも聞きましたよ! ねぇ、師父! しっかりしてください! 師父!」
 気絶した。
 出血こそ止まっているが、なんにせよ、このままでは危険だ!
 そう感じたのは、燕隊長や討伐隊員も同じだった。
 すぐさま多くの被害女性たちや、楊榮寧ともども、救護班に運ばれて往った。
 僕もあとを追い、立ち上がろうとしたが、何故か腰砕け、虚脱してしまい動けない。
 そんな僕を、疲労困憊のはずの三妖怪と醸玩が、代わる代わる担ぎ、運び出してくれた。
 花模様をちりばめた緑青色ろくしょういろの絨毯に、こんこんと湧き出る清水、艶やかな果実、蝶が舞い踊り、小鳥がさえずり、さまざまな虫の大合唱が響き、若木を揺らす爽やかな風が心地よく、この世のものとは思えぬほど美しい緑の森から……ところで、ここはどこなのよ?
 やっぱり、疑問符だらけだ……なんで? なんで? なんで? (????????)
 結局、僕がすべての謎を、知ることになるのは、もう少しあとのことなのでした。
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