40 / 125
『決別・後編』
其の拾
しおりを挟む
「そんなに七生のところへ往きたいのか、如風! お前のせいで長年自由を束縛され、父親まで喪った彼女が、お前を喜んで歓待するとでも思ってんのかよ! 大莫迦野郎がぁ!」
朴澣の伸ばした【手根刀】が、鋭利な針先と化して、如風の胸を刺しつらぬいていた。
瑞茅におおいかぶさった凶賽は、足元で交差する二本の屍毒針を見つけ、愕然となった。
誰かが、もう一本の五寸針を投げ、殺人鬼の狂針を、上手く打ち落としてくれたらしい。
「助かったぜ……喂、大丈夫か? 怪我はないか?」と、問いかけながら、身を起こした途端――、
「凶賽親分っ……凶賽!」
瑞茅は泣きじゃくり、夢中で凶賽を抱きしめた。
凶賽も瑞茅の無事を喜び、愛しさあまって華奢な門附人の細身を、力一杯抱きしめた。
敦莫と庚仙和尚も二人の姿に心底安堵し、またしてもその場で腰砕けになってしまった。
一方で如風も、五人が囲む円陣の中、血を噴きくずおれた。
朴澣の鬼業触手は、瞬時に引き抜かれ、元通り継半纏の左袖へと納まった。雪を深紅に染めながら、瀕死でガクリと膝をつく如風は、なおもいじましい妄言をうそぶいた。
「かまわん、さ……た、たとえ、どんなに、嫌われようと……な、七生は、俺の、い、命だ……離れることは、できない……これで、ようやく……」
死門の前へ夢見心地で立つ如風……次の瞬間、パァンと煙管の雁首叩き、如風を夢から引き戻した朴澣。彼は、泥梨へ沈み逝く空蝉に対し、残酷きわまりない真実を告げた。
「残念だが、死んじまっちゃあ二度と七生さんには逢えないぜ。早まらず思い止まってくれたら、七生さんの居場所を教えてやっても、よかったんだがねぇ……莫迦だよ、あんた」
如風は、カッと目を見開いた。怪士の云ったセリフが、すぐには呑みこめなかったのだ。
「い、今、なんと……!? 七生が、生きてるって……そ、んな……うっ、嘘だぁあっ!」
如風の陰惨な瞳に、燃えるような狂気が宿った。
憐れ、吐血まじりの怨言わめく男に、怪士一味が示した調査報告は、冷酷非情だった。
「いいえ、本当です。彼女は大河で溺死寸前のところを、夜盗市の老船頭に救われた。親切なその老爺と、天凱府各地を転居しながら、隠れ暮らしていたのです。鬼畜の如き門附人と、あなたの過激な愛執から逃れるためにね」と、夜叉面冠者。
「嘘だと思うなら、地蔵門町八生宿の【玉輪屋】って蕎麦屋を訪ねてみろよ」と、那咤霧。
『夫唱婦随の手打ち蕎麦が、美味いと評判の店だ。美人女将目当ての客も多い』と、宿喪。
「尤も、その傷じゃあ、とてもたどり着けねぇよなぁ。あんたがこれから逝けるところは、黄泉路くれぇのモンだろうぜ……憐れな男だねぇ」
「座長! もうよせ!」
珍しく一角坊が、朴澣の悪性をたしなめた。
「玉輪屋……夫唱婦随、だと……そんな、本当に、生きているのか……七生、七生ぉ!」
如風は最期の力を振りしぼり、立ち上がった。
朴澣の【手根刀】は、微妙に心臓を避けて射たが、無理に動けば血脈が破れ、如風は確実に死ぬだろう。それでも如風は歩き出した。
「如風! 逝くな! 貴様っ……死ぬぞ!」
一角坊は、如風をなんとか止めようとした。
脇腹の傷も開いたらしく、出血量もおびただしい。
如風の足跡が、雪を赤々と汚していく。
だが彼を止められる者は、どこにもいない。
彼は彼の、ゆがんだ信念にもとづき、自ら命を削り始めたのだ。
悲愴な死に向けた旅立ちだった。
勢至門、別名『不如帰門』をくぐり抜け、如風は命を賭してでも、愛する女の元へ逝く。
「七生、七生ぉ……せめて一目だけでも、お前に……逢いたい! お前の恋路を邪魔したこと……親父を、殺したこと……その葬式で、お前を傷つけてしまったこと……すべて謝りたいのだ! 神よ……どうか俺に、ほんの少しだけ、時間を与えてくれぇ! 七生ぉ!」
門下で見送る【鬼凪座】五人のそばに、瑞茅と凶賽、敦莫と庚仙和尚も駆け寄って来た。
「喂、待てよ! 逃がさねぇぞ、畜生っ!」
門附人殺害犯を捕えようと、意気込む赤毛侠客を、同じ緋幣族の夜叉面が押し止めた。
「やめなさい、凶賽殿。彼は、遠からず死ぬ身です。最期は、好きにさせてあげなさい」
「けど奴は、門附人を次々と殺した、凶悪犯なんだぜ!? このまま逃がすワケには……」
「そうだよ、哥さんがたぁ! いくらなんでも、見逃すなんてまずいぜ! せめて役人に通報して、身柄を引き渡しちまえばいいんだよ!」
如風の後ろ姿を睨みつつ、焦れて喰い下がる凶賽と敦莫の意見に、一角坊が首を振った。
「先刻も説明したが、奴は復讐のかたわら、朝廷の密命通り動いていたのじゃ。十二門附人の犯した所業は、それほど許しがたい大罪だったというワケじゃよ。奴が殺らずとも連中はいずれ、他の暗殺方に消される運命だったのじゃ」
「そうよ! これもすべて、身から出た錆! 自業自得じゃねぇか! クソ役人が死んで、喜ぶ奴らがわんさといやがんだ! 文句ねぇだろ!」
『黒姫狂女』を演じた美男喝食の舌鋒に、凶賽と敦莫は言葉を失った。
だが、恐ろしい裏事情を知った上は、彼らとて如何ともしがたい。
『瑞茅、吾らを恨むなよ。【劫初内】が、抹殺命令を下した連中ゆえ、救命は不可能と判断したのだ。ならば、せめて憐れな男の復讐劇を見届けた上で、お前だけは守る。これが、真相を知った吾らの窮策。まちがってはいないはずだ』
獰悪な異形に似ず、優しい口調の宿喪だった。
隣の瑞茅は怖気を忘れ、泪目でうなずいた。
「唵縛鶏淡納莫」と、庚仙和尚が、遠ざかる如風に六字陀羅尼を捧げる。
白道をひた向きに逝く、男の孤影。
心揺さぶられ、泣き出しそうな瑞茅の懸念は、今やまったく別のところにあった。
「朴澣殿、あの怪我で……彼は、妹君のところへ、たどり着けるのでしょうか? 理由はどうあれ、今は一目だけでも、逢わせてあげたい……」
瑞茅の深い慈悲心に感化され、悪逆非道な監督兼演出家も、わずかな胸の痛みを覚えた。
「さてな……たとえ、いかなる事情があったにせよ、これこそが奴に科せられた罰なのさ」
瑞茅の青白い頬を、一筋の泪が伝った。朴澣は、美しい泪だと思った。
凶賽も同じように感じ、瑞茅の肩を支えた。一同は、《忌告げの如風》がさまよい出した、永い贖罪の旅路を、『不如帰門』から、静かに見送ったのだ。
……鬼灯揺らぐ、六斎日、
泥梨へ誘う十二使鬼……
――目指すは南方増長区、地蔵門町『八生』宿。
「七生……今、往くぞ……お前の、ところに……」
……神々廻を糾う阿弥陀門、
一夜の夢と思し召せ……
――雪白の往来を赤く染め、男の命を削る血滴。
「お前に、逢うまでは……死んで、たまるか!」
……勃嚕唵と鳴らす観音門、
二夜の夢は未だ遠い……
――容赦なく吹き荒ぶ寒風に、儚く揺らぐ灯命。
「一目だけでも、いい……七生に、逢いたい!」
……荼吉尼を描く如意輪門、
三夜の夢は尚醒めぬ……
――六花が手向ける有終の美、霞む視界は夢幻。
「神よ、お願いだ! 俺に……今少しの猶予を!」
……魄布施捧ぐ大威徳門、
四夜は泡沫かぎろふ命……
――死に赴いてまた一歩、空ろな瞳に面影よぎる。
「七生ぉ……どうか、俺を……許してくれ!」
……不知火揺れる普賢門、
五夜には送り火明け烏……
――熱の失せた体、雪片を散らして転がる路傍。
「もう少し……ほんの、少しで……うぐっ!」
……閼伽凪酔わす大日門、
六夜に鵺は啼きもせず……
――血を吐き、立ち上がり、心だけが先んじる。
「この、十年間は……生き地獄だった……」
……血飛白染める虚空蔵門、
七夜は赤い玉飾り……
――男の孤影を照らす鬼灯、黄泉路へ続く白道。
「お前を、独占したかった……たとえ、妹でも」
……闇供華散らす地蔵門、
八夜に見るは黒暗女……
――人気のない夜道を、深々と非情な闇がおおう。
「だから……親父や、恋人、邪魔者を消した」
……屍神楽踊る文殊門、
九夜に往くが善かれかし……
――厳冬の深夜は冷酷だ、赤い泪を凍てつかす。
「そして、お前の、ためだけに……人殺しを!」
……牙舎利を弔う旧釈迦門、
十夜に及ぶ鬼騒動……
――血染めの小袖につつんだ身は、青白い亡魂だ。
「愛していた……だから葬儀の夜、お前を……」
……卒塔婆を手折る弥勒門、
十一夜続けば夢現……
――ひときわ強く燃え上がった情念は、最期の光か。
「お前に、逢いたい、七生……七生ぉ……!」
……黄泉月浮かぶ勢至門、
十二夜の夢は不如帰……
――雪上へ赤いシミを広げ、男はついに力尽きた。
朴澣の伸ばした【手根刀】が、鋭利な針先と化して、如風の胸を刺しつらぬいていた。
瑞茅におおいかぶさった凶賽は、足元で交差する二本の屍毒針を見つけ、愕然となった。
誰かが、もう一本の五寸針を投げ、殺人鬼の狂針を、上手く打ち落としてくれたらしい。
「助かったぜ……喂、大丈夫か? 怪我はないか?」と、問いかけながら、身を起こした途端――、
「凶賽親分っ……凶賽!」
瑞茅は泣きじゃくり、夢中で凶賽を抱きしめた。
凶賽も瑞茅の無事を喜び、愛しさあまって華奢な門附人の細身を、力一杯抱きしめた。
敦莫と庚仙和尚も二人の姿に心底安堵し、またしてもその場で腰砕けになってしまった。
一方で如風も、五人が囲む円陣の中、血を噴きくずおれた。
朴澣の鬼業触手は、瞬時に引き抜かれ、元通り継半纏の左袖へと納まった。雪を深紅に染めながら、瀕死でガクリと膝をつく如風は、なおもいじましい妄言をうそぶいた。
「かまわん、さ……た、たとえ、どんなに、嫌われようと……な、七生は、俺の、い、命だ……離れることは、できない……これで、ようやく……」
死門の前へ夢見心地で立つ如風……次の瞬間、パァンと煙管の雁首叩き、如風を夢から引き戻した朴澣。彼は、泥梨へ沈み逝く空蝉に対し、残酷きわまりない真実を告げた。
「残念だが、死んじまっちゃあ二度と七生さんには逢えないぜ。早まらず思い止まってくれたら、七生さんの居場所を教えてやっても、よかったんだがねぇ……莫迦だよ、あんた」
如風は、カッと目を見開いた。怪士の云ったセリフが、すぐには呑みこめなかったのだ。
「い、今、なんと……!? 七生が、生きてるって……そ、んな……うっ、嘘だぁあっ!」
如風の陰惨な瞳に、燃えるような狂気が宿った。
憐れ、吐血まじりの怨言わめく男に、怪士一味が示した調査報告は、冷酷非情だった。
「いいえ、本当です。彼女は大河で溺死寸前のところを、夜盗市の老船頭に救われた。親切なその老爺と、天凱府各地を転居しながら、隠れ暮らしていたのです。鬼畜の如き門附人と、あなたの過激な愛執から逃れるためにね」と、夜叉面冠者。
「嘘だと思うなら、地蔵門町八生宿の【玉輪屋】って蕎麦屋を訪ねてみろよ」と、那咤霧。
『夫唱婦随の手打ち蕎麦が、美味いと評判の店だ。美人女将目当ての客も多い』と、宿喪。
「尤も、その傷じゃあ、とてもたどり着けねぇよなぁ。あんたがこれから逝けるところは、黄泉路くれぇのモンだろうぜ……憐れな男だねぇ」
「座長! もうよせ!」
珍しく一角坊が、朴澣の悪性をたしなめた。
「玉輪屋……夫唱婦随、だと……そんな、本当に、生きているのか……七生、七生ぉ!」
如風は最期の力を振りしぼり、立ち上がった。
朴澣の【手根刀】は、微妙に心臓を避けて射たが、無理に動けば血脈が破れ、如風は確実に死ぬだろう。それでも如風は歩き出した。
「如風! 逝くな! 貴様っ……死ぬぞ!」
一角坊は、如風をなんとか止めようとした。
脇腹の傷も開いたらしく、出血量もおびただしい。
如風の足跡が、雪を赤々と汚していく。
だが彼を止められる者は、どこにもいない。
彼は彼の、ゆがんだ信念にもとづき、自ら命を削り始めたのだ。
悲愴な死に向けた旅立ちだった。
勢至門、別名『不如帰門』をくぐり抜け、如風は命を賭してでも、愛する女の元へ逝く。
「七生、七生ぉ……せめて一目だけでも、お前に……逢いたい! お前の恋路を邪魔したこと……親父を、殺したこと……その葬式で、お前を傷つけてしまったこと……すべて謝りたいのだ! 神よ……どうか俺に、ほんの少しだけ、時間を与えてくれぇ! 七生ぉ!」
門下で見送る【鬼凪座】五人のそばに、瑞茅と凶賽、敦莫と庚仙和尚も駆け寄って来た。
「喂、待てよ! 逃がさねぇぞ、畜生っ!」
門附人殺害犯を捕えようと、意気込む赤毛侠客を、同じ緋幣族の夜叉面が押し止めた。
「やめなさい、凶賽殿。彼は、遠からず死ぬ身です。最期は、好きにさせてあげなさい」
「けど奴は、門附人を次々と殺した、凶悪犯なんだぜ!? このまま逃がすワケには……」
「そうだよ、哥さんがたぁ! いくらなんでも、見逃すなんてまずいぜ! せめて役人に通報して、身柄を引き渡しちまえばいいんだよ!」
如風の後ろ姿を睨みつつ、焦れて喰い下がる凶賽と敦莫の意見に、一角坊が首を振った。
「先刻も説明したが、奴は復讐のかたわら、朝廷の密命通り動いていたのじゃ。十二門附人の犯した所業は、それほど許しがたい大罪だったというワケじゃよ。奴が殺らずとも連中はいずれ、他の暗殺方に消される運命だったのじゃ」
「そうよ! これもすべて、身から出た錆! 自業自得じゃねぇか! クソ役人が死んで、喜ぶ奴らがわんさといやがんだ! 文句ねぇだろ!」
『黒姫狂女』を演じた美男喝食の舌鋒に、凶賽と敦莫は言葉を失った。
だが、恐ろしい裏事情を知った上は、彼らとて如何ともしがたい。
『瑞茅、吾らを恨むなよ。【劫初内】が、抹殺命令を下した連中ゆえ、救命は不可能と判断したのだ。ならば、せめて憐れな男の復讐劇を見届けた上で、お前だけは守る。これが、真相を知った吾らの窮策。まちがってはいないはずだ』
獰悪な異形に似ず、優しい口調の宿喪だった。
隣の瑞茅は怖気を忘れ、泪目でうなずいた。
「唵縛鶏淡納莫」と、庚仙和尚が、遠ざかる如風に六字陀羅尼を捧げる。
白道をひた向きに逝く、男の孤影。
心揺さぶられ、泣き出しそうな瑞茅の懸念は、今やまったく別のところにあった。
「朴澣殿、あの怪我で……彼は、妹君のところへ、たどり着けるのでしょうか? 理由はどうあれ、今は一目だけでも、逢わせてあげたい……」
瑞茅の深い慈悲心に感化され、悪逆非道な監督兼演出家も、わずかな胸の痛みを覚えた。
「さてな……たとえ、いかなる事情があったにせよ、これこそが奴に科せられた罰なのさ」
瑞茅の青白い頬を、一筋の泪が伝った。朴澣は、美しい泪だと思った。
凶賽も同じように感じ、瑞茅の肩を支えた。一同は、《忌告げの如風》がさまよい出した、永い贖罪の旅路を、『不如帰門』から、静かに見送ったのだ。
……鬼灯揺らぐ、六斎日、
泥梨へ誘う十二使鬼……
――目指すは南方増長区、地蔵門町『八生』宿。
「七生……今、往くぞ……お前の、ところに……」
……神々廻を糾う阿弥陀門、
一夜の夢と思し召せ……
――雪白の往来を赤く染め、男の命を削る血滴。
「お前に、逢うまでは……死んで、たまるか!」
……勃嚕唵と鳴らす観音門、
二夜の夢は未だ遠い……
――容赦なく吹き荒ぶ寒風に、儚く揺らぐ灯命。
「一目だけでも、いい……七生に、逢いたい!」
……荼吉尼を描く如意輪門、
三夜の夢は尚醒めぬ……
――六花が手向ける有終の美、霞む視界は夢幻。
「神よ、お願いだ! 俺に……今少しの猶予を!」
……魄布施捧ぐ大威徳門、
四夜は泡沫かぎろふ命……
――死に赴いてまた一歩、空ろな瞳に面影よぎる。
「七生ぉ……どうか、俺を……許してくれ!」
……不知火揺れる普賢門、
五夜には送り火明け烏……
――熱の失せた体、雪片を散らして転がる路傍。
「もう少し……ほんの、少しで……うぐっ!」
……閼伽凪酔わす大日門、
六夜に鵺は啼きもせず……
――血を吐き、立ち上がり、心だけが先んじる。
「この、十年間は……生き地獄だった……」
……血飛白染める虚空蔵門、
七夜は赤い玉飾り……
――男の孤影を照らす鬼灯、黄泉路へ続く白道。
「お前を、独占したかった……たとえ、妹でも」
……闇供華散らす地蔵門、
八夜に見るは黒暗女……
――人気のない夜道を、深々と非情な闇がおおう。
「だから……親父や、恋人、邪魔者を消した」
……屍神楽踊る文殊門、
九夜に往くが善かれかし……
――厳冬の深夜は冷酷だ、赤い泪を凍てつかす。
「そして、お前の、ためだけに……人殺しを!」
……牙舎利を弔う旧釈迦門、
十夜に及ぶ鬼騒動……
――血染めの小袖につつんだ身は、青白い亡魂だ。
「愛していた……だから葬儀の夜、お前を……」
……卒塔婆を手折る弥勒門、
十一夜続けば夢現……
――ひときわ強く燃え上がった情念は、最期の光か。
「お前に、逢いたい、七生……七生ぉ……!」
……黄泉月浮かぶ勢至門、
十二夜の夢は不如帰……
――雪上へ赤いシミを広げ、男はついに力尽きた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる