スノードロップの約束

3章：ルーシャの一筋の希望

Ⅱ

ルーシャの１日は、ほとんど勉強や習い事で時間が埋め尽くされている。

陽が昇り始める頃に目覚め、騎士たちと共に護身術の訓練を受ける。

その後に、家族と共に食卓で無言の朝食を摂る。

朝食を摂ったあとは、陽が真上に昇るまで勉強をする。

その後は1時間ごとにピアノ・礼儀作法・バイオリン・テーブルマナー・ダンスレッスンなどを習う。

なので、心が休まる休息時間といったら就寝するまでの時間となる。

そんな日々は体調が完全回復した次の日から始まった。

ルーシャはベッドの上に勢いよく寝転がった。

｢はああ。疲れましたわ・・・何もかも今まで習ったことと変わりませんもの！退屈で仕方ありませんわ！！｣

何度も同じ場所・同じ時を歩んでいれば嫌でも覚えてしまう。

しかも、ルーシャは一度教えられたことや見たりしたものは覚えてしまうという記憶力の良さがあるため、尚更今習っていることは何度も転生したルーシャにとっては分かりきったことなのでとてもつまらないのだった。

｢こんなに変わらない日々を送っていると虚しくなりますわね・・・。歴史も変わらなければ人も変わらない世界なんてつまらないですわ。・・・・・・そして、私わたくしと殿下が出会う日まであと3日。嫌な時ほど時の流れが早すぎますわあああ！！｣

ボスボスと枕を叩いて嘆くルーシャ。

ルーシャはソルトのことは尊敬しているが、もう恋慕の感情は何もない。

そもそも自分の人生の終わりに接点のある人物に恋慕をまた抱けるかと聞かれたら、微妙なところである。

だが、1度は惚れた男・・・しかもルーシャにとっては初恋の相手である。

そう簡単には手放せないものがある・・・が、何しろ死への道標とも言える人物でもあるので、ルーシャ的にはとても避けたい人物第3位に位置していた。

なんとしても婚約はしたくない！が、しかし、これはいままでの人生でどう頑張っても無駄に終わってしまった。

一度、父親にソルトとの婚約はしたくないと言ったが、父親は乗り気だったらしく早々にソルトの父である王に婚約話をもちかけていた。

あちらが断わればそれでいいのだが、ルーシャの家は王との接点が近い。

そして、名が高く公爵家の中でも最高位の家なので王家としても断る理由がない。

なので、ルーシャは3度目の人生になればそうそうに諦めた。

｢けれど、婚約なんてしたくありませんわっ！人生において本当に本当に本当に本当にっ死へ近づく第一歩みたいなものなのですわっ！『私わたくしのわがままで言ったものなのですから、それを取りやめてくれ』と言ってもお父様は乗り気になったら、何をしてもダメなことは何度も学びましたわ・・・・・・何か問題行動を起こすとしても、マリアンローズ家の名を汚したくはありませんし・・・そんなこともう一生したくありませんもの。｣

ルーシャは自分が幸せになることを最優先にしているが、何より1度目の人生で自分の家の名を汚して家族に迷惑をかけたことを後悔していた。

なので、今世でも自分が幸せになることと共に名を汚さないことを心に決めていた。

ルーシャはどうしたものか悩みに悩んだが、結局何も案は思いつかないままそのまま眠りについた。