スノードロップの約束

6章：リアは元気づけたい

Ⅰ

ルーシャ様と質問のしあいっこをして、楽しいひと時を過ごした後は、ルーシャ様を部屋まで送り届けた。

扉が閉まるまで見届けて、私は急いであてがわれた部屋へと戻った。

今日はもともと、かるく屋敷を見て周り、説明を受けただけで、本格的なことは明日からやることになっている。

まあ、そんなことは置いておいて・・・私は部屋の隅に置いてあった自分のバッグの中から、本と羊皮紙の束を取り出す。

机の上に本を広げて、登場人物のページを開く。

登場人物の最初に出てくるヒロインとヒーロー。

ヒーローの名前には・・・ソルト・ウォリカステ・フローリアと長い名前が書かれている。

ソルト殿下はこの国の第二王子。

明るくて元気な人。

曲がったことは許せないタイプ。

そして・・・ルーシャ様の婚約者だけど、ヒロインであるサクラと最終的にくっつく。

そもそも2人が仲良くなったキッカケは、いじめられていたサクラにソルトが話しかけた事なんだけど、関わっていくうちに自分たちの心の傷が癒されていくことで、友人関係を深めていくんだよね。

漫画上では、数々の凄まじい嫌がらせとパーティーのことをきっかけに、ルーシャは牢獄に入れられてしまう。

少なくともソルト殿下は、ルーシャ様の処刑というか死亡フラグ？には携わっているから、あまり関わってはいけないと・・・思う、けど・・・。

私は本の最後のページを見る。

そこには、フローリア様からのメッセージが書かれている。

“リアへ

ルーシャを助けることを決意してくれてありがとう。

リアには忠告をしておくことがあるわ～。それは、物語を変えすぎないことよ～。

何故かっていうと、物語を変えすぎちゃうと世界そのものが消えてしまう可能性が出てくるのよ～！

たとえ消えてしまっても、私なら世界は作り直せられるわ～。

でも、生きてきた人たちの人生ひとつひとつを消してしまうのは、違うじゃない？私としても、見守ってきた人達が消えちゃうのは悲しいもの～。

重いことを頼んでしまったけれど、貴女がどんな風に世界を、物語の強制力を変えていくか、見守らせてもらうわ。

私とリアは物語を変える共同体よ～！！

貴女なりに、頑張ってね。

いい？絶対に物語を変えすぎてはいけないわよ～！！
                                             
                                                     フローリアより”

フローリア様の姿が浮かんでくるような文章に、笑みがこぼれつつ、わたしは忠告の部分を見つめて考える。

物語を変えすぎてはいけない・・・最初見た時は、あんまり実感わかなかったから、物語と一緒に頭に入れとくだけだったけど・・・。

実際にルーシャ様からソルト殿下と婚約するって話を聞いて、物語通りすぎて、少しわかった気がする。

言葉だけだと、婚約は確定した感じじゃなかったけど・・・ルーシャ様の表情と声音は婚約は確定してるって感じだった。

もう、なんていうか、こうなることは仕方ないって諦めてる感じだった。

そんな姿を見て、なんだか、辛くなった。