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7章:ルーシャ、決意の婚約
Ⅴ
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“魔法”なんてものは、ルーシャは見たことも無い。
けれど、この世界には魔法が存在する。
「ソルト様は、ヴァイオレット大帝国に行かれたことがあるんですの?」
どこか確信があるように言ったソルトに、疑問を感じたルーシャは聞いた。
ルーシャの知識として、“ヴァイオレット大帝国には魔法が存在する”という認識はしている。
しかし、実際にあるかどうかなんて見たことがないので半信半疑でもあった。
ルーシャの疑問にソルトは微笑んで答えた。
「ああ。父上の仕事の関係で一緒に行ったことがあるんだ。国中に魔法というものが溢れていた。自在に水を操っていたり、火を操っていたりと凄かった。その時に会った大帝国の王子もとてもすごい魔法を見せてくれた。」
ソルトの瞳はその時のことを思い出しているからなのか、とてもキラキラと輝いていた。
ソルトの今まで見た事ない様子にルーシャは驚いた。
それと同時にその瞳の輝きが、ふとリアと重なってルーシャは微笑ましくなった。
「ソルト様。お茶会のご用意ができました。」
ルーシャが微笑ましく思っていると、突如ソルトの隣からお茶会の準備をするよう頼まれた従者がソルトに声をかけた。
「ああ、ありがとう。・・・では、ルーシャ嬢。お茶会を始めようか。」
ソルトは侍従にお礼を言ったあと、ルーシャに手を差し出した。
「ええ。」
ルーシャもソルトの手に手を重ねた。
(ついに・・・お茶会が始まるのね。)
ルーシャの心臓はドキドキと音を立てる。
ルーシャは、緊張で逃げ出したくなるが、ポケットのある部分を撫でて気合を入れる。
(あの子だって、頑張っているんですのよ!私が頑張らなくては、帰った時にあの子に顔向けできませんわ!)
ソルトに手を引かれながら、支度されたテーブルへとルーシャは連れられる。
ソルトが引いた椅子に座り、その後向かい側にソルトが座ったのを見て、さりげなくルーシャは、息を吐き出す。
そして、支度されたお茶に手を伸ばし1口飲む。
「ふぅ・・・さすが、王宮のお茶ですわね。格別ですわ。」
にこりとルーシャは微笑んで言う。
「ありがとう。その茶葉はこの国1番の茶葉なんだ。」
ソルトは嬉しそうに自慢げに言った。
「そうなんですわね。」
ルーシャは愛想笑いを浮かべそう言った。
・・・そこで、会話が終了した。
(か、会話が終わってしまいましたわ!!ど、どうしましょう。な、なにか話題を!婚約者候補として、なにか、なにか・・・。)
ルーシャは頭の中でグルグルと考えて、婚約者候補としての役目を果たさなければ!と、思っていたが、ふと、王の言葉を思い出した。
ソルトを紹介されたあと、王は、『ソルトとの婚約を私も許可をする。今日はゆっくり親睦を深めてくれ。いいか?』
と、言っていた。
ルーシャは思い出して、一気に思考が停止した。
王はたしかに言った。
ソルトとの婚約を許可すると。
それは、つまり、婚約者候補ではなくなったということだ。
そう理解した瞬間、ルーシャの中でゴングが鳴った。
けれど、この世界には魔法が存在する。
「ソルト様は、ヴァイオレット大帝国に行かれたことがあるんですの?」
どこか確信があるように言ったソルトに、疑問を感じたルーシャは聞いた。
ルーシャの知識として、“ヴァイオレット大帝国には魔法が存在する”という認識はしている。
しかし、実際にあるかどうかなんて見たことがないので半信半疑でもあった。
ルーシャの疑問にソルトは微笑んで答えた。
「ああ。父上の仕事の関係で一緒に行ったことがあるんだ。国中に魔法というものが溢れていた。自在に水を操っていたり、火を操っていたりと凄かった。その時に会った大帝国の王子もとてもすごい魔法を見せてくれた。」
ソルトの瞳はその時のことを思い出しているからなのか、とてもキラキラと輝いていた。
ソルトの今まで見た事ない様子にルーシャは驚いた。
それと同時にその瞳の輝きが、ふとリアと重なってルーシャは微笑ましくなった。
「ソルト様。お茶会のご用意ができました。」
ルーシャが微笑ましく思っていると、突如ソルトの隣からお茶会の準備をするよう頼まれた従者がソルトに声をかけた。
「ああ、ありがとう。・・・では、ルーシャ嬢。お茶会を始めようか。」
ソルトは侍従にお礼を言ったあと、ルーシャに手を差し出した。
「ええ。」
ルーシャもソルトの手に手を重ねた。
(ついに・・・お茶会が始まるのね。)
ルーシャの心臓はドキドキと音を立てる。
ルーシャは、緊張で逃げ出したくなるが、ポケットのある部分を撫でて気合を入れる。
(あの子だって、頑張っているんですのよ!私が頑張らなくては、帰った時にあの子に顔向けできませんわ!)
ソルトに手を引かれながら、支度されたテーブルへとルーシャは連れられる。
ソルトが引いた椅子に座り、その後向かい側にソルトが座ったのを見て、さりげなくルーシャは、息を吐き出す。
そして、支度されたお茶に手を伸ばし1口飲む。
「ふぅ・・・さすが、王宮のお茶ですわね。格別ですわ。」
にこりとルーシャは微笑んで言う。
「ありがとう。その茶葉はこの国1番の茶葉なんだ。」
ソルトは嬉しそうに自慢げに言った。
「そうなんですわね。」
ルーシャは愛想笑いを浮かべそう言った。
・・・そこで、会話が終了した。
(か、会話が終わってしまいましたわ!!ど、どうしましょう。な、なにか話題を!婚約者候補として、なにか、なにか・・・。)
ルーシャは頭の中でグルグルと考えて、婚約者候補としての役目を果たさなければ!と、思っていたが、ふと、王の言葉を思い出した。
ソルトを紹介されたあと、王は、『ソルトとの婚約を私も許可をする。今日はゆっくり親睦を深めてくれ。いいか?』
と、言っていた。
ルーシャは思い出して、一気に思考が停止した。
王はたしかに言った。
ソルトとの婚約を許可すると。
それは、つまり、婚約者候補ではなくなったということだ。
そう理解した瞬間、ルーシャの中でゴングが鳴った。
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