スノードロップの約束

海亜

文字の大きさ
36 / 49
7章:ルーシャ、決意の婚約

しおりを挟む
“魔法”なんてものは、ルーシャは見たことも無い。

けれど、この世界には魔法が存在する。

「ソルト様は、ヴァイオレット大帝国に行かれたことがあるんですの?」

どこか確信があるように言ったソルトに、疑問を感じたルーシャは聞いた。

ルーシャの知識として、“ヴァイオレット大帝国には魔法が存在する”という認識はしている。

しかし、実際にあるかどうかなんて見たことがないので半信半疑でもあった。

ルーシャの疑問にソルトは微笑んで答えた。

「ああ。父上の仕事の関係で一緒に行ったことがあるんだ。国中に魔法というものが溢れていた。自在に水を操っていたり、火を操っていたりと凄かった。その時に会った大帝国の王子もとてもすごい魔法を見せてくれた。」

ソルトの瞳はその時のことを思い出しているからなのか、とてもキラキラと輝いていた。

ソルトの今まで見た事ない様子にルーシャは驚いた。

それと同時にその瞳の輝きが、ふとリアと重なってルーシャは微笑ましくなった。

「ソルト様。お茶会のご用意ができました。」

ルーシャが微笑ましく思っていると、突如ソルトの隣からお茶会の準備をするよう頼まれた従者がソルトに声をかけた。

「ああ、ありがとう。・・・では、ルーシャ嬢。お茶会を始めようか。」

ソルトは侍従にお礼を言ったあと、ルーシャに手を差し出した。

「ええ。」

ルーシャもソルトの手に手を重ねた。

(ついに・・・お茶会が始まるのね。)

ルーシャの心臓はドキドキと音を立てる。

ルーシャは、緊張で逃げ出したくなるが、ポケットのある部分を撫でて気合を入れる。

(あの子だって、頑張っているんですのよ!わたくしが頑張らなくては、帰った時にあの子に顔向けできませんわ!)

ソルトに手を引かれながら、支度されたテーブルへとルーシャは連れられる。

ソルトが引いた椅子に座り、その後向かい側にソルトが座ったのを見て、さりげなくルーシャは、息を吐き出す。

そして、支度されたお茶に手を伸ばし1口飲む。

「ふぅ・・・さすが、王宮のお茶ですわね。格別ですわ。」

にこりとルーシャは微笑んで言う。

「ありがとう。その茶葉はこの国1番の茶葉なんだ。」

ソルトは嬉しそうに自慢げに言った。

「そうなんですわね。」

ルーシャは愛想笑いを浮かべそう言った。

・・・そこで、会話が終了した。

(か、会話が終わってしまいましたわ!!ど、どうしましょう。な、なにか話題を!婚約者候補として、なにか、なにか・・・。)

ルーシャは頭の中でグルグルと考えて、婚約者候補としての役目を果たさなければ!と、思っていたが、ふと、王の言葉を思い出した。

ソルトを紹介されたあと、王は、『ソルトとの婚約を私も許可をする。今日はゆっくり親睦を深めてくれ。いいか?』

と、言っていた。

ルーシャは思い出して、一気に思考が停止した。

王はたしかに言った。

と。

それは、つまり、婚約者候補ではなくなったということだ。

そう理解した瞬間、ルーシャの中でゴングが鳴った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...