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シンゴニウム・28
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〇〇〇
「気持ちよかったね」
山頂のベンチの上で、俺と相原は肩を寄せ合い、青空を眺めていた。
二人とも、服が乱れてあちこちが泥に汚れてしまっていた。初めての野外での行為だったが、乱暴にし過ぎたかもしれない。互いに疲れ果て、相手の肩で支え合っている。肩で息をしながら呼吸を整える。かなり真剣なセックスは、心が溶ける程に強烈だった。
菖蒲園へ行った後、俺は突然の申し出で山登りを願い出た。ほぼ手ぶらの状態で無理矢理上った山の中で、俺と相原は、人が居ないのをいいことに、青空の下で繋がりあった。
「頭飛びそうだった」
「山の上だと酸素が薄いのかもね。ふらふらする」
相原が可愛く笑い、俺の肩に頭を乗せてくる。山頂でした生でのセックスはインパクトが強すぎて、なかなか射精まで行き付けなかった。途中で相原がそれに気付いて、騎乗位になってくれた。おかげで妙な緊張感が消えて、気持ちが入り、最後は俺が押し倒して正常位で果てた。
そんな行為に、最初のセックスを思い出した。
「水分が足りないだけかもな」
「特に葛城は出したしね。ティッシュがなかったから危なかったね」
初めての日、口内射精で泣きそうだった彼女は、いつの間にか俺の精液を平然と飲み込めるようになっていた。美味しいわけではなくて、気にならなくなったらしい。曰く、俺のだから、と言われてそれ以上は聞けなかった。
そういえば先月、数日していない状態から、口でしてくれて、強烈に濃いのを咽ることなく飲み込んだ。そんな彼女は恐ろしく嬉しそうな顔で『精液飲めるようになった記念ケーキでも食べようか』とまで言い出したくらいだ。
慣れって凄い。
「私は貰った側だけど。でも口の中がイカ臭いぞ。はー」
「ごめんっ、う」
相原に息を吐き掛けられ、確かに臭いと苦悩。相原がうっしっしと子供のように笑っている。仲良くなった。俺と相原は、どんどん親密になっていく。
これからも、これ以上に。
「膣内射精されるかと思ったんだけどなぁ」
「さすがにしませんよ」
乱れた服を正しながら、俺は静かに首を振った。本当の事を言えばしてみたかったのだけれど、そんな軽はずみでしていい事では断じてない。これでもし、子供が出来ていたらその時は覚悟を決めようと思う。しかしだ。
「いやあ、あのまま妊娠して結婚もありかなーとか思ったから、出してもらって良かったんだけど」
「さすがに後先考えなさすぎ」
このイケイケの状態の相原に全てを委ねてはいけないのだ。彼女と共に居て解っている。彼女の無鉄砲ぷりは、どこかで押さえないといけない時がある。暴走し始めた時、隣に居る俺が、窘めなきゃいけないんだ。
それが俺の居る理由だと、今なら言える。
「この後、降りたらどこかいく?」
「さすがに部屋でゆっくりしたいな。晩御飯、何にしようか」
ベンチから降りて、手を繋ぎながら会話する。
さて、今から問題の下山だ。最大限の注意が必要なので、気を引き締めないといけない。俺は彼女の手を引き、一歩前に出る。彼女は来た時と同様に、俺の後ろに付いてくれた。俺に手を引かれて、ゆっくりと歩いてくれる。
「外食とかでもいいよ?」
「ううん、私が作る。何が食べたい? 葛城が食べたいものを私も食べたい。一緒に」
相原が俺に続き、坂のような階段を下りて行く。ゆっくりと、けれど着実に、俺と一緒に歩いていく。二人とも、実はふらふらである。それでも絶対に、相原は守るんだ。
そう思いながら、一歩一歩を着実に踏み出していく。相原の手を引きながら、肩に手を置かれながら、俺は遠くに見える自分の町をもう一度見直した。
最初狭いと感じた町は、角度を変えるとそこそこに広かった。
「俺、相原と同じ景色を見る為に付き合いたいって言ったっけな」
「そうよ。もっとも最近は、順序がちょっと変わってきてるけどね。し過ぎて予定変更とかざらだもの」
彼女の言葉に、俺は肩を竦める事しかできない。確かに最初は、二人仲良くなる為だけにセックスをしていたはずだ。途中から、それも一つの楽しみとして嗜むようになっていて、気が付けば二人、その為に行動する事もある。
彼女は変わってきているのだろうか。
俺は変わってきているのだろうか。
「嫌か?」
「まさか」
俺の問いは、彼女の失笑で掻き消された霧散した。
俺はもっと変われるのだろうか。強くなれるだろうか。自分を磨くために、俺も彼女と共に、いろいろと挑戦してみてもいいのだろうか。
「今度、免許取ろうかな」
「うん? バイクの話?」
唐突に行った山登りを終え、何とか下山しきった俺ら二人は、泥だらけで車に乗り込んだ。もう疲労困憊、車に乗り込んだ時点で周囲は暗くなり始めていた。危険だったな。俺らはそのまま、一時間ほど仮眠を取った。
そうして互いに少しの疲れを取り、俺の部屋へ移動していた。そんな最中に呟いた俺の『免許取ろう』発言だ。疲れた後に運転させて悪い、という気持ちで呟いたのだが。
「何? 大型二輪免許取るの?」
彼女が目を輝かせてそう返してきた。俺は自動車のつもりだったけれど、相原の中ではバイクになっていた、というか大型?
「葛城って自動二輪持ってるよね。ってことは大型だよね? ナナハンとか乗るの?」
ふいに出てきた言葉に、目が点になった。相原の笑顔はほくほくだった。俺が新しい事に挑戦するという行為を喜んでいるのだろうが、それにしてはテンションが高い。
もともと今日の相原は、テンションが高い方だが。
「何で俺がバイクの免許持ってるの知ってるんだ?」
「いや彼氏の免許事情ぐらい知ってるでしょ、普通。わあ、いいな。バイクで二人乗りの旅行とか素敵。一度してみたかったけど、私はバイク、重くて挫折したから」
それこそ聞いた覚えがない。俺らはまだまだ、知らない事が多々あるのだろう。彼女の横顔を眺めながら、俺は静かに決意する。もっと、知りたい。相原の喜ぶ姿を。
「言った覚えないんだけどな」
「どっかで免許証を見たんだと思うけど、どうやって知ったかは忘れた。で、取るの?」
軽はずみな発言をした。
けれど俺のそんな言葉に、相原の瞳は恋する乙女のようにきらきらと輝いていた。
<続く>
「気持ちよかったね」
山頂のベンチの上で、俺と相原は肩を寄せ合い、青空を眺めていた。
二人とも、服が乱れてあちこちが泥に汚れてしまっていた。初めての野外での行為だったが、乱暴にし過ぎたかもしれない。互いに疲れ果て、相手の肩で支え合っている。肩で息をしながら呼吸を整える。かなり真剣なセックスは、心が溶ける程に強烈だった。
菖蒲園へ行った後、俺は突然の申し出で山登りを願い出た。ほぼ手ぶらの状態で無理矢理上った山の中で、俺と相原は、人が居ないのをいいことに、青空の下で繋がりあった。
「頭飛びそうだった」
「山の上だと酸素が薄いのかもね。ふらふらする」
相原が可愛く笑い、俺の肩に頭を乗せてくる。山頂でした生でのセックスはインパクトが強すぎて、なかなか射精まで行き付けなかった。途中で相原がそれに気付いて、騎乗位になってくれた。おかげで妙な緊張感が消えて、気持ちが入り、最後は俺が押し倒して正常位で果てた。
そんな行為に、最初のセックスを思い出した。
「水分が足りないだけかもな」
「特に葛城は出したしね。ティッシュがなかったから危なかったね」
初めての日、口内射精で泣きそうだった彼女は、いつの間にか俺の精液を平然と飲み込めるようになっていた。美味しいわけではなくて、気にならなくなったらしい。曰く、俺のだから、と言われてそれ以上は聞けなかった。
そういえば先月、数日していない状態から、口でしてくれて、強烈に濃いのを咽ることなく飲み込んだ。そんな彼女は恐ろしく嬉しそうな顔で『精液飲めるようになった記念ケーキでも食べようか』とまで言い出したくらいだ。
慣れって凄い。
「私は貰った側だけど。でも口の中がイカ臭いぞ。はー」
「ごめんっ、う」
相原に息を吐き掛けられ、確かに臭いと苦悩。相原がうっしっしと子供のように笑っている。仲良くなった。俺と相原は、どんどん親密になっていく。
これからも、これ以上に。
「膣内射精されるかと思ったんだけどなぁ」
「さすがにしませんよ」
乱れた服を正しながら、俺は静かに首を振った。本当の事を言えばしてみたかったのだけれど、そんな軽はずみでしていい事では断じてない。これでもし、子供が出来ていたらその時は覚悟を決めようと思う。しかしだ。
「いやあ、あのまま妊娠して結婚もありかなーとか思ったから、出してもらって良かったんだけど」
「さすがに後先考えなさすぎ」
このイケイケの状態の相原に全てを委ねてはいけないのだ。彼女と共に居て解っている。彼女の無鉄砲ぷりは、どこかで押さえないといけない時がある。暴走し始めた時、隣に居る俺が、窘めなきゃいけないんだ。
それが俺の居る理由だと、今なら言える。
「この後、降りたらどこかいく?」
「さすがに部屋でゆっくりしたいな。晩御飯、何にしようか」
ベンチから降りて、手を繋ぎながら会話する。
さて、今から問題の下山だ。最大限の注意が必要なので、気を引き締めないといけない。俺は彼女の手を引き、一歩前に出る。彼女は来た時と同様に、俺の後ろに付いてくれた。俺に手を引かれて、ゆっくりと歩いてくれる。
「外食とかでもいいよ?」
「ううん、私が作る。何が食べたい? 葛城が食べたいものを私も食べたい。一緒に」
相原が俺に続き、坂のような階段を下りて行く。ゆっくりと、けれど着実に、俺と一緒に歩いていく。二人とも、実はふらふらである。それでも絶対に、相原は守るんだ。
そう思いながら、一歩一歩を着実に踏み出していく。相原の手を引きながら、肩に手を置かれながら、俺は遠くに見える自分の町をもう一度見直した。
最初狭いと感じた町は、角度を変えるとそこそこに広かった。
「俺、相原と同じ景色を見る為に付き合いたいって言ったっけな」
「そうよ。もっとも最近は、順序がちょっと変わってきてるけどね。し過ぎて予定変更とかざらだもの」
彼女の言葉に、俺は肩を竦める事しかできない。確かに最初は、二人仲良くなる為だけにセックスをしていたはずだ。途中から、それも一つの楽しみとして嗜むようになっていて、気が付けば二人、その為に行動する事もある。
彼女は変わってきているのだろうか。
俺は変わってきているのだろうか。
「嫌か?」
「まさか」
俺の問いは、彼女の失笑で掻き消された霧散した。
俺はもっと変われるのだろうか。強くなれるだろうか。自分を磨くために、俺も彼女と共に、いろいろと挑戦してみてもいいのだろうか。
「今度、免許取ろうかな」
「うん? バイクの話?」
唐突に行った山登りを終え、何とか下山しきった俺ら二人は、泥だらけで車に乗り込んだ。もう疲労困憊、車に乗り込んだ時点で周囲は暗くなり始めていた。危険だったな。俺らはそのまま、一時間ほど仮眠を取った。
そうして互いに少しの疲れを取り、俺の部屋へ移動していた。そんな最中に呟いた俺の『免許取ろう』発言だ。疲れた後に運転させて悪い、という気持ちで呟いたのだが。
「何? 大型二輪免許取るの?」
彼女が目を輝かせてそう返してきた。俺は自動車のつもりだったけれど、相原の中ではバイクになっていた、というか大型?
「葛城って自動二輪持ってるよね。ってことは大型だよね? ナナハンとか乗るの?」
ふいに出てきた言葉に、目が点になった。相原の笑顔はほくほくだった。俺が新しい事に挑戦するという行為を喜んでいるのだろうが、それにしてはテンションが高い。
もともと今日の相原は、テンションが高い方だが。
「何で俺がバイクの免許持ってるの知ってるんだ?」
「いや彼氏の免許事情ぐらい知ってるでしょ、普通。わあ、いいな。バイクで二人乗りの旅行とか素敵。一度してみたかったけど、私はバイク、重くて挫折したから」
それこそ聞いた覚えがない。俺らはまだまだ、知らない事が多々あるのだろう。彼女の横顔を眺めながら、俺は静かに決意する。もっと、知りたい。相原の喜ぶ姿を。
「言った覚えないんだけどな」
「どっかで免許証を見たんだと思うけど、どうやって知ったかは忘れた。で、取るの?」
軽はずみな発言をした。
けれど俺のそんな言葉に、相原の瞳は恋する乙女のようにきらきらと輝いていた。
<続く>
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