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新学期編

真立理奈は安全に帰りたい

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「ねぇねぇ、時斗君と、咲ちゃんって付き合ったり

してるのかなぁ?」

帰宅が言い渡され放課後雰囲気になったクラスの

面々は一斉に俺と咲に寄ってきた。話題の内容はお

そらく全員俺と咲の関係だ。

後ろの真立も目をキラキラさせていらっしゃる。

「い、いやそんなわけないだろ?俺と咲はあくまで

中学校が一緒の同級生だって!」

「何をおっしゃるんですか!?時斗様!私たちはお

やも、、」

咲の口を押さえ、被害を抑える。

「じゃあ私時斗君狙おっかなぁー」

「えー、ずるいよぉ。私もー」

わぁい、なんか青春してるって感じだぜ!

咲がものすごい形相で睨んでいるのは見なかったこ

とにしておこう。

「行っておきますけど!時斗さ、、、」

「じ、じゃあ俺たち帰るからまた明日な!」

「またねー」

「バイバーイ」

そういうと俺は咲を連れて教室を後にした。目の片

隅には、男子に息荒らそうに近寄られ、涙目になっ

ている先生と、俺たちの次にターゲットにされてい

る雪が入った。

かわいそうに。

時斗の家は学校から、一応近くのお屋敷であり、通

学路には、通っていた中学校、笹山中学校がある。

帰り道は咲についていくから大丈夫そうだ。

だが、路地を帰っていた俺は、ある光景を見て、足

を止める。笹山高校の先輩三人と笹山中学校の生徒

一人がいた。

「ねぇねぇちょっとでいいからさぁ。俺たちときて

くれね?」

ナンパだ。

この手のナンパは中学生の時に咲がよくされたもの

だ。今回ターゲットになっている女の子も雪のよう

な白髪を垂れ流して、さらに透き通った綺麗な白い

瞳を持った美少女であった。なぜかどこかで会った

気がするのは気のせいだろう。

と、見ているのはここまでにして、

「時斗様、、」

「あぁ、分かってる」

俺は先輩と、その美少女の間に入ると、

「こんなとこにいたのかよ、探したんだぜ!」

と言って、連れ出そうとした。我ながら、ダサい助

け方だが、平和が一番である。咲の時も、この手で

全て切り抜けてきた、究極奥義である。

「おっと、なにかっさらってくれてんだぁ?ああ

ん?」

「はぁ」

こいつら、一筋縄ではいかないようだ。かなりしつ
 
こい奴らみたいだな。こうなったらやることは一

つ。

「いや、もともと俺の彼女ですから」

言ってしまった。あいつらすんげぇ形相でこっちみ

てるし。

「おいおい後輩ごときが粋がってヒーロー気取り

か?家に帰ってお母さんに抱かれてこい」

「まじそれな!空気読めや!」

「まあ後輩君ひとりだしぃ?ボコってもちくられな
 
いっしょ。てか後ろの君も可愛いねぇ!相手してや

んよ」

流石にイラっときた。だが、こいつらを倒せるほど

俺は強くないのが現実。こうなったら、

「おいお前らあれ見てみろよ」

先輩達の後ろを指差す。

「あ?」

「ん?」

「おん?」

かかった!

俺は出せる全力を出して美少女をお姫様抱っこしな

がら走り出した。当然すぐに奴らも気づき、つかも

うとしてきた。

が、そうはさせない。学ランを投げつける。これで

視界を遮れればいいのだが、うまくいった。そして

そのまま赤面する美少女を抱えてしばらくの間、走

ったのであった。

「あの!助けていただいてありがとうございまし

た!」

「いやいや、別にそこまで感謝されても」

近くの神社で、美少女を下ろすといきなりお礼を言

われた。

「えっと、猫を追いかけていたら、あそこまで行っ

てしまって、、本当に助かりました」

「今度から気をつけろよ?あと、気をつけて帰れ

よ?」

そう言って俺は咲を連れて、神社を出ようとする。

「ま、待ってください!お名前聞いてもいいです

か!?」

うーんどうしたものやら。雪の時を思い出して、思

わず顔を曇らせる。

「はっ!すいません私も名乗っていなかったです

ね?私の名前は、、、真立理奈です!」

気を使った真立さんは、先に自己紹介をしてくれ

た。ふぅぅぅぅん真立理奈か、真立理奈、真立、ま

だちぃ!?

「「ま、真立!?」」

思わず咲とはもってしまった。

「はい!真立!真立理奈、笹山中学三年生です

っ!」
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