食べ残しなんてありえない

三池

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「ヨナガに初めて出会ったとき、俺は生命の回収に来ていた。
もうすぐ余命が尽きる人を病院まで迎えに来ていた。でも、そこには俺より先に、あいつがいた。
俺たちのような存在は、相手の魔力をある程度測ることができる。ヨナガの魔力はほぼ0に等しかったから、すぐにわかったよ。
彼が一度も魂をとったことも、取り込んだこともないこと。
ただ、彼は不思議だった。初めてのはずなのに、なんの戸惑いも、遠慮もない。
ただ、魂を奪える、その隙を見極めようと、冷めた目で見ていた。
その横顔が、とても、綺麗だった。
しばらくして、ヨナガはこちらに気がついた。
そのとき、ヨナガに話を聞いて、俺はヨナガに興味を持った。
感情の見えなかった顔が、悪魔になった目的を話すうちに、少しだけ歪んだんだ。
怒りか、それとも、悲しみか。
わからなかった。
そして、俺は、ヨナガにとって最初の魂をあげたんだ。
ま、それがバレて天使辞めさせられたってわけ。」

セラは話が終わると、真剣な声色から一転、軽快な口調に戻った。
「んで、行くとこなくなっちゃったし、それ以降、俺はヨナガについて回ってるって感じ。」
「そうだったんですね。」
そう呟くと、粋は少し考えているようだった。
そして、口を開く。
「あの、悪魔って、なりたくてなるものなんですか?」
「んー、もともと悪魔として生み出される個体もいるけど、あいつは違うね。」
「じゃあ、ヨナガさんは?」
少年が聞くと、天使はなんでもないような顔で答えた。
「人間だよ。元人間。」
「え?ヨナガさんも?」
少年が驚きを隠さないでいると、天使は続ける。
「あいつから聞いてないんだ…。
ヨナガはね、人間のときからすごい奴でさ、まさに天から授かったような才能の持ち主だったんだ。
でも、地上の人間には、それを受け入れられるほどの知能がない。自分たちのために利用すればいいものを、人間たちは彼を排除しようとした。
結局、地上からの開放を願って、あいつは自ら死を選んだ。
死んでも強い意志を持つ魂には、悪魔からのお誘いがあるんだ。
んで、ヨナガは悪魔になってそいつらを懲らしめようって思った、みたいな?」
セラから聞かされた話を、少年は理解しようと沈黙が続いた。
「懲らしめるって?」
ようやく出た、一言だった。
「あー、悪魔が魂を集める理由って知ってる?」
セラは続ける。
「悪魔は基本的に、人間の願い事しか叶えることができない。でも、悪魔は666の魂を体内に吸収することで、全てを叶えられるほどの力を手に入れることができるんだよ。その力があれば、自分の願いを叶えることが出来る。しかし、それは一度だけ、1つの願いだけ。
その集める魂も、その悪魔の身体に対応する数少ない魂でないといけない。
それでね、粋くんは、記念すべき666人目なんだよ!」
セラの彫刻や絵画のような端正な顔は、おめでとう、とでも言わんばかりの、とても綺麗で、歪な笑顔をしていた。
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