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謝罪と雪解け
2. 謝罪と雪解け
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「まず君に謝罪をしたい。すまなかった。学生時代、ロベリアの魅了にかかったのは本当に愚かだった。彼女は俺たちが喧嘩した隙をついて、忍び寄った。俺はもともと精神魔法への耐性が低い。言い訳にしか聞こえないと思うが『魅了の呪い』が強く効いてしまったのはそのためだと思う。」
精神魔法への耐性ってあるのか。そういえばゲーム上のアベルは攻略対象者として難易度が低い設定だった。
「呪いが解けてからずっと後悔していた。ずっとリリに謝りたかった、申し訳なかったと。リリにとてもひどいことを言ったし、ひどい態度をとった。本当にすまなかった。」
なるほど、騎士隊の中でも危険が多い任地ばかり志願するって以前王太子妃のアマリリスがこぼしていたことがある。もしかして、私が死んだと思って死に急いでいたのだろうか。
「リリが失踪したのは妊娠したからだと聞いた。あの時、俺はリリの話を聞こうともせず、本当に本当に申し訳なかった。シモンを生んでくれてありがとう、ここまで育ててくれてありがとう。君からあの子を奪うような真似は絶対しないと約束する。…だから、俺もあの子の親になりたい。父親にならせてくれないか?」
「シモンは私の子です。私だけの子。第一、あなたは一時的な任務でこちらに派遣されていると聞きました。その任務が終わったら王都に戻るのでしょう。私にはここで商売がありますし、今後は伯父からこの領地を継ぐことを考えています。」
「こう言ってはなんだが、シモンは魔力が異様に高いし、君とは違う属性だ。学園に入るまでずっと魔力封じの腕輪をつけさせ続ける気か。既に体の方に影響が出てきているだろう。俺が近くにいれば、定期的に魔力を吸収して安定させることができるし、仮に暴走が起きたとしても止めることができる。今回の特命は派遣期間が決まっていない。任務終了後は異動届けを出してここに留まるつもりだ。あの子の父親として君に認めてもらえるように尽力する。」
正直アベルの反応は意外だった。一般的に父親と母親で子への関心の持ち方は大きく異なる。特に自分のあずかり知らぬところで勝手に生まれた子のことなんて、特別な事情がない限りよく思わないことがほとんどだ。せっかく第四騎士隊の副隊長になったのに、それを捨ててでもシモンと関わりたいだなんて。
「副隊長のあなたがそんな簡単に異動なんて..」
その時、応接間の扉が開いた。
「やっぱり、やっぱり、アベルさまは、ちちうえなの?」
シモンだ。様子が気になって聞き耳を立てていたのだろうか。
「ああ、そうだ。君は俺の子だ。シモン。」
「ははうえ!さっきね、ちちうえに魔力吸い取ってもらったの。とても体が楽になったよ!ちちうえは魔獣と闘う強い騎士さまなんだよ。ちちうえなら、ははうえのことも守ってくれるよ!だからね、だからね。」
シモンがアベルの膝の上に飛び乗った。こんなにうれしそうなシモンを久しぶりにみた。
「…シモン、アベル、分かったわ。今後の関わり方について協議しましょう。」
私たちは協議の上、シモンの親権、アベルの面会条件について魔法誓約書を書くことにした。
・シモンの親権はリリアーヌが持つこと。
・アベルとシモンの面会回数に制限は設けないが、原則面会は屋敷内とし許可なく連れ出さないこと。
・今後魔力封じの腕輪を装着する場合には、アベル側の許可も取ること。
・上記を変更する場合は、双方の話し合いを行い決定すること。一方的な破棄は認めないこと。
この辺がお互いの現時点での妥協点といったところか。アベルとシモンの面会頻度に制限を設けなかったのは、魔力暴走を抑えるためにどのくらいの頻度で魔力を吸収する必要があるか分からなかったからだ。シモンの認知に関しては、私がリリアーヌ ブロワと名乗り出たときに一緒に行いたいと言われた。
「シモン!これからは俺がしっかり魔法と剣術は教えるから。」
「よろしくおねがいします、ちちうえ!」
それから週に必ず一、二度は、アベルがシモンに会いに邸に訪れるようになった。
精神魔法への耐性ってあるのか。そういえばゲーム上のアベルは攻略対象者として難易度が低い設定だった。
「呪いが解けてからずっと後悔していた。ずっとリリに謝りたかった、申し訳なかったと。リリにとてもひどいことを言ったし、ひどい態度をとった。本当にすまなかった。」
なるほど、騎士隊の中でも危険が多い任地ばかり志願するって以前王太子妃のアマリリスがこぼしていたことがある。もしかして、私が死んだと思って死に急いでいたのだろうか。
「リリが失踪したのは妊娠したからだと聞いた。あの時、俺はリリの話を聞こうともせず、本当に本当に申し訳なかった。シモンを生んでくれてありがとう、ここまで育ててくれてありがとう。君からあの子を奪うような真似は絶対しないと約束する。…だから、俺もあの子の親になりたい。父親にならせてくれないか?」
「シモンは私の子です。私だけの子。第一、あなたは一時的な任務でこちらに派遣されていると聞きました。その任務が終わったら王都に戻るのでしょう。私にはここで商売がありますし、今後は伯父からこの領地を継ぐことを考えています。」
「こう言ってはなんだが、シモンは魔力が異様に高いし、君とは違う属性だ。学園に入るまでずっと魔力封じの腕輪をつけさせ続ける気か。既に体の方に影響が出てきているだろう。俺が近くにいれば、定期的に魔力を吸収して安定させることができるし、仮に暴走が起きたとしても止めることができる。今回の特命は派遣期間が決まっていない。任務終了後は異動届けを出してここに留まるつもりだ。あの子の父親として君に認めてもらえるように尽力する。」
正直アベルの反応は意外だった。一般的に父親と母親で子への関心の持ち方は大きく異なる。特に自分のあずかり知らぬところで勝手に生まれた子のことなんて、特別な事情がない限りよく思わないことがほとんどだ。せっかく第四騎士隊の副隊長になったのに、それを捨ててでもシモンと関わりたいだなんて。
「副隊長のあなたがそんな簡単に異動なんて..」
その時、応接間の扉が開いた。
「やっぱり、やっぱり、アベルさまは、ちちうえなの?」
シモンだ。様子が気になって聞き耳を立てていたのだろうか。
「ああ、そうだ。君は俺の子だ。シモン。」
「ははうえ!さっきね、ちちうえに魔力吸い取ってもらったの。とても体が楽になったよ!ちちうえは魔獣と闘う強い騎士さまなんだよ。ちちうえなら、ははうえのことも守ってくれるよ!だからね、だからね。」
シモンがアベルの膝の上に飛び乗った。こんなにうれしそうなシモンを久しぶりにみた。
「…シモン、アベル、分かったわ。今後の関わり方について協議しましょう。」
私たちは協議の上、シモンの親権、アベルの面会条件について魔法誓約書を書くことにした。
・シモンの親権はリリアーヌが持つこと。
・アベルとシモンの面会回数に制限は設けないが、原則面会は屋敷内とし許可なく連れ出さないこと。
・今後魔力封じの腕輪を装着する場合には、アベル側の許可も取ること。
・上記を変更する場合は、双方の話し合いを行い決定すること。一方的な破棄は認めないこと。
この辺がお互いの現時点での妥協点といったところか。アベルとシモンの面会頻度に制限を設けなかったのは、魔力暴走を抑えるためにどのくらいの頻度で魔力を吸収する必要があるか分からなかったからだ。シモンの認知に関しては、私がリリアーヌ ブロワと名乗り出たときに一緒に行いたいと言われた。
「シモン!これからは俺がしっかり魔法と剣術は教えるから。」
「よろしくおねがいします、ちちうえ!」
それから週に必ず一、二度は、アベルがシモンに会いに邸に訪れるようになった。
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