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第一幕 断罪の夢
1. 未来視
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十三歳の誕生日、私は自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
舞台はフィーラ帝都貴族学院の卒業舞踏会。砂糖菓子のように甘い容姿の女子生徒が倒れる。ピンクブロンドの見たことがない子だ。私の婚約者であるはずのマティアス殿下が駆け寄り介抱している。私は殿下から身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡される。一生懸命反論する私を見て、女子生徒は薄気味悪く微笑んだ。
「やめて!」
叫んでも誰も振り返らない。衛兵に両腕を掴まれ、冷たい石畳を引きずられる。そのまま馬車に乗せられた。これから貴族牢のある北の古城に連れていかれるという。闇夜を乱暴に走る馬車。そして――ガタンと大きな音がした。馬車ごと谷底へと投げ出された。死の谷だ。風を切る轟音と、地面に叩きつけられる瞬間の恐怖が鮮明に残った。
「はぁ……はあ……。夢か。」
私・エディットはフィーラ帝国ユングリング侯爵家の長女として生まれた。侯爵家特有の銀髪に菫色の瞳。自分で言うのもなんだが、整った顔立ちで、幼い時から美少女だと褒めそやされた。でも両親は私を甘やかさなかった。貴族のマナーに一般教養、ダンス、魔法学、領地経営まで叩き込まれた。その結果、私はこの国の第一皇子マティアス殿下の婚約者に選ばれた。
金髪碧眼のマティアス殿下は美しく、賢く、そして優しかった。私のことをいつも気にかけてくれた。好きな色、好きな動物、好きな菓子、好きな紅茶……、全て覚えていてくれる。定期のお茶会では、いつもこの国の未来を考え、意見を交わした。私の意見も馬鹿にせずに聞いてくれる彼だから、賢王になると信じていた。だから私も彼の傍でお支えしたい。そう思っていた。
翌朝、家族に"夢"の話をすると、「悪い夢をみたのね」と笑われた。それはそうだ。マティアス殿下は昨日も、忙しい時間を縫って、誕生日のお祝いをしてくれた。テディベアをプレゼントされて、二人でマシューという名前も付けた。そんな彼が、私に冤罪を吹っかけて、婚約破棄するなんて考えられない。でも、妙に現実味を帯びた"夢"に私は狼狽えた。
それからも、まるで未来のどこかの一瞬を切り抜いたような、妙に生々しい"夢"を視るようになった。夜だけではない日中も。――そしてその"夢"が現実になることにも気づいた。
ある晩、私は兄・アードルフが怪我をする場面を"夢"に視た。剣技の稽古中、兄の銀髪が剣さばきと共に揺れる。受け身を取ろうとした瞬間、兄はバランスを崩し倒れ、その左腕がぐにゃりと歪んだ。慌てて、この"夢"のことを兄に報告した。けれど兄は聞く耳を持たなかった。翌々日、私の預言通りに兄は負傷した。
ある日は、真っ白でふわふわの愛猫・コニーを膝に乗せ、庭のガゼボで紅茶を飲んでいた。そしていつの間にか"夢"の中にいた。コニーが屋敷内からいなくなり、コニーの行方を使用人総出で捜していると、薔薇の植え込みの近くの窪みで、コニーの亡骸が見つかる。家族、皆でコニーの死を悼んだ。
「にゃー!」
コニーの鳴き声にはっとする。気が付くと、コニーの青い瞳がこちらを見つめていた。
「あ、まただわ。」
――これも現実になるのかもしれない。
胸がざわめき、思わずコニーを抱きしめた。けれど当の本人は、そんな私の動揺など知らぬ顔で、するりと腕を抜けて走り去っていった。こちらの気も知らず、猫とは気まぐれな生き物だ。
また兄に相談した。今度はコニーが死ぬかもしれないと。
「えっ、コニーが!? ……そりゃ心配だな。」
兄は一瞬、苦笑したが、すぐに顔を曇らせた。
「この前もエディットが"夢"を視た後に、俺が怪我をしたし、そういえば執事のドンとメイドのカミラの結婚も言い当てたよな。あの二人、恋仲であることを誰にも言っていなかったのに。――念のため、コニーは獣医に診てもらおう。俺から両親に話してみるよ。」
「兄上、ありがとうございます。」
獣医の診察の結果、コニーは心臓が悪いと言われた。そしてもう残りわずかな命だと。少しでも長生きするように、使用人に心臓に負担のかからない餌を作らせ、侯爵家総出で世話をした。
それから一か月後の朝、コニーは忽然と姿を消した。庭中を探し回り、最後にたどり着いたのは"夢"で視た薔薇の植え込みの近くの窪み。"夢"で視た姿で、静かに眠るコニーに、膝から崩れ落ちた。
舞台はフィーラ帝都貴族学院の卒業舞踏会。砂糖菓子のように甘い容姿の女子生徒が倒れる。ピンクブロンドの見たことがない子だ。私の婚約者であるはずのマティアス殿下が駆け寄り介抱している。私は殿下から身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡される。一生懸命反論する私を見て、女子生徒は薄気味悪く微笑んだ。
「やめて!」
叫んでも誰も振り返らない。衛兵に両腕を掴まれ、冷たい石畳を引きずられる。そのまま馬車に乗せられた。これから貴族牢のある北の古城に連れていかれるという。闇夜を乱暴に走る馬車。そして――ガタンと大きな音がした。馬車ごと谷底へと投げ出された。死の谷だ。風を切る轟音と、地面に叩きつけられる瞬間の恐怖が鮮明に残った。
「はぁ……はあ……。夢か。」
私・エディットはフィーラ帝国ユングリング侯爵家の長女として生まれた。侯爵家特有の銀髪に菫色の瞳。自分で言うのもなんだが、整った顔立ちで、幼い時から美少女だと褒めそやされた。でも両親は私を甘やかさなかった。貴族のマナーに一般教養、ダンス、魔法学、領地経営まで叩き込まれた。その結果、私はこの国の第一皇子マティアス殿下の婚約者に選ばれた。
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翌朝、家族に"夢"の話をすると、「悪い夢をみたのね」と笑われた。それはそうだ。マティアス殿下は昨日も、忙しい時間を縫って、誕生日のお祝いをしてくれた。テディベアをプレゼントされて、二人でマシューという名前も付けた。そんな彼が、私に冤罪を吹っかけて、婚約破棄するなんて考えられない。でも、妙に現実味を帯びた"夢"に私は狼狽えた。
それからも、まるで未来のどこかの一瞬を切り抜いたような、妙に生々しい"夢"を視るようになった。夜だけではない日中も。――そしてその"夢"が現実になることにも気づいた。
ある晩、私は兄・アードルフが怪我をする場面を"夢"に視た。剣技の稽古中、兄の銀髪が剣さばきと共に揺れる。受け身を取ろうとした瞬間、兄はバランスを崩し倒れ、その左腕がぐにゃりと歪んだ。慌てて、この"夢"のことを兄に報告した。けれど兄は聞く耳を持たなかった。翌々日、私の預言通りに兄は負傷した。
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コニーの鳴き声にはっとする。気が付くと、コニーの青い瞳がこちらを見つめていた。
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胸がざわめき、思わずコニーを抱きしめた。けれど当の本人は、そんな私の動揺など知らぬ顔で、するりと腕を抜けて走り去っていった。こちらの気も知らず、猫とは気まぐれな生き物だ。
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