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第二幕 トヴォー王国
10. パーティー
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義父は誰かを伴ってパーティーに出るのはだいぶ久しぶりのはずだが、きちんとエスコートしてくれた。会場に入ると、割れんばかりの拍手で迎えられる。国中の貴族が、魔法大会の優勝者がどんな令嬢か、好奇の眼差しを向けてくる。義父と初めの一曲のダンスを終えると、若い男性が私の周りを取り囲んだ。
「じゃあ、エディー楽しんでらっしゃいね。」
「え、義父上ちょっと待って。」
義父はニコニコしながら、人ごみに消えていった。さっきはついて回るって言っていただろうと、心の中でツッコミを入れる。
「美しきご令嬢、今宵あなたとダンスを踊る栄誉を。」
「こういう会は初めてでしょうか?大会でのご活躍には驚きましたが、こうして見るとかわいらしい方だ。」
「ワルツを舞うお姿、とても美しかったです。勝利の女神が王宮に迷い込んだかと思いました。」
今の私はユカライネン伯爵の一人娘。どうやら相手は、貴族の次男、三男のようだ。多分、私が田舎の子爵家から引き取られたと聞いて、歯に浮いた美辞麗句を並び立てているのだろう。正直マティアス殿下とああいうことがあって、まだ日が浅い。いずれは婿を取ることも考えねばならないが、しばらくはそういった話とは距離を置きたい。へらへらと愛想笑いを浮かべていると、クマのような男がドンっと背後から現れた。決勝戦を争ったシェルストレーム辺境伯だ。
「お嬢ちゃん、困った顔しているけど、そんな連中、地獄の業火で焼き払ってやればいいだろう。ハハハ。」
地獄の業火と聞いて、恐ろしくなったのか令息たちは散っていった。そこから、辺境伯と今日の大会の話になった。いかにも脳筋、武術バカ。戦法も戦術も自分とは180度違うから、話していて面白い。
「負けた俺がいう話でもないが、お嬢ちゃんはもともとの魔力が強すぎる。もっと基礎体力つけた方がいい。あの量の魔力を操るにはどうにも線が細すぎる。見ていてこっちが不安になる。」
そう言って、勝手に私のトレーニングメニューを考えてくれた。あと辺境領に遊びに来いと。その時は朝から晩まで稽古をしようと約束した。辺境伯は、ダンスもせずにその場を後にした。
その後は、魔法研究所に勤めているという男性から声をかけられた。準決勝で戦ったサリーン男爵の後輩らしい。どこで魔法を学んだのか、誰に師事しているのか、恍惚とした表情で、根掘り葉掘り聞いてくる。ごまかすのが大変だった。
何とかサリーン男爵の後輩をまいて、会場の端っこに行く。リアスがいないかと思って会場をつぶさに見渡すが、黒髪に赤眼の青年は見つからなかった。
「やっぱりいないか~。」
少し疲れてバルコニーに出ると、そこには先客がいた。真っ赤な髪。初戦の相手、リューブラント侯爵令息だ。
「お隣よろしいですか。」
「――よろしくない。」
顔を覗くと、頬が張れているし、目の上にたんこぶができている。私、そこまでボコボコにしたっけ?よく見るとまつ毛も長くて、翠色のきれいな瞳をしている。せっかくのきれいな顔が台無しだ。
「頬どうしたんですか?」
「どうもこうも、お前のせいで親父に殴られたんだ!危うく勘当されるところだったんだぞ!!」
話を聞くと、初戦でしかも女に負けたということで、騎士団を束ねるリューブラント侯爵にボコボコにされたらしい。私が優勝したことと、炎の不死鳥を召喚したことで、最後は相手が悪かったと丸く収まったんだそう。
「召喚師なら、初めに言え。それとも俺相手じゃ不死鳥を召喚するまでもなかった、と!」
図星だが、これ以上言うとさらに相手をさらに怒らせそうである。
「精霊は召喚するより、使役するほうが魔力を使いますから、初戦からそんな消耗できませんわ。」
「……くっ!次は負けねえ。俺だって精霊を召喚してやる!」
そう言うと、踵を返すように会場に戻っていった。これはあまり知られていないことだが、精霊の召喚には属性の一致以外に、術者の魂の共鳴が必要だ。氷の精霊は私の"知性"、炎の精霊は私の"勇敢さ"に共鳴して召喚されている。彼が炎の精霊を召喚しようとしてもできないのは、単純に"勇敢さ"が足りていないのだ。今の彼は何のために戦っているのだろう?父親に認められたいから?とりあえず、炎の精霊とは相性が悪そうに見えた。
――この様子じゃ、永遠に炎の精霊は召喚できないでしょうね。
静かになったバルコニーに、夜風が吹いて、茶髪のストレートがふわりと揺れた。結局、大会でも、夜会でも、リアスは見つけられなかった。満月に照らされて、私の影が伸びている。名前を変えて、髪と瞳の色を変えても、影の形は変わらない。変えようと思っても、変えられないものがこの世にはある。断罪を回避して亡命に成功したけれど、私はちゃんともう一つの未来にたどり着けるのだろうか。
「じゃあ、エディー楽しんでらっしゃいね。」
「え、義父上ちょっと待って。」
義父はニコニコしながら、人ごみに消えていった。さっきはついて回るって言っていただろうと、心の中でツッコミを入れる。
「美しきご令嬢、今宵あなたとダンスを踊る栄誉を。」
「こういう会は初めてでしょうか?大会でのご活躍には驚きましたが、こうして見るとかわいらしい方だ。」
「ワルツを舞うお姿、とても美しかったです。勝利の女神が王宮に迷い込んだかと思いました。」
今の私はユカライネン伯爵の一人娘。どうやら相手は、貴族の次男、三男のようだ。多分、私が田舎の子爵家から引き取られたと聞いて、歯に浮いた美辞麗句を並び立てているのだろう。正直マティアス殿下とああいうことがあって、まだ日が浅い。いずれは婿を取ることも考えねばならないが、しばらくはそういった話とは距離を置きたい。へらへらと愛想笑いを浮かべていると、クマのような男がドンっと背後から現れた。決勝戦を争ったシェルストレーム辺境伯だ。
「お嬢ちゃん、困った顔しているけど、そんな連中、地獄の業火で焼き払ってやればいいだろう。ハハハ。」
地獄の業火と聞いて、恐ろしくなったのか令息たちは散っていった。そこから、辺境伯と今日の大会の話になった。いかにも脳筋、武術バカ。戦法も戦術も自分とは180度違うから、話していて面白い。
「負けた俺がいう話でもないが、お嬢ちゃんはもともとの魔力が強すぎる。もっと基礎体力つけた方がいい。あの量の魔力を操るにはどうにも線が細すぎる。見ていてこっちが不安になる。」
そう言って、勝手に私のトレーニングメニューを考えてくれた。あと辺境領に遊びに来いと。その時は朝から晩まで稽古をしようと約束した。辺境伯は、ダンスもせずにその場を後にした。
その後は、魔法研究所に勤めているという男性から声をかけられた。準決勝で戦ったサリーン男爵の後輩らしい。どこで魔法を学んだのか、誰に師事しているのか、恍惚とした表情で、根掘り葉掘り聞いてくる。ごまかすのが大変だった。
何とかサリーン男爵の後輩をまいて、会場の端っこに行く。リアスがいないかと思って会場をつぶさに見渡すが、黒髪に赤眼の青年は見つからなかった。
「やっぱりいないか~。」
少し疲れてバルコニーに出ると、そこには先客がいた。真っ赤な髪。初戦の相手、リューブラント侯爵令息だ。
「お隣よろしいですか。」
「――よろしくない。」
顔を覗くと、頬が張れているし、目の上にたんこぶができている。私、そこまでボコボコにしたっけ?よく見るとまつ毛も長くて、翠色のきれいな瞳をしている。せっかくのきれいな顔が台無しだ。
「頬どうしたんですか?」
「どうもこうも、お前のせいで親父に殴られたんだ!危うく勘当されるところだったんだぞ!!」
話を聞くと、初戦でしかも女に負けたということで、騎士団を束ねるリューブラント侯爵にボコボコにされたらしい。私が優勝したことと、炎の不死鳥を召喚したことで、最後は相手が悪かったと丸く収まったんだそう。
「召喚師なら、初めに言え。それとも俺相手じゃ不死鳥を召喚するまでもなかった、と!」
図星だが、これ以上言うとさらに相手をさらに怒らせそうである。
「精霊は召喚するより、使役するほうが魔力を使いますから、初戦からそんな消耗できませんわ。」
「……くっ!次は負けねえ。俺だって精霊を召喚してやる!」
そう言うと、踵を返すように会場に戻っていった。これはあまり知られていないことだが、精霊の召喚には属性の一致以外に、術者の魂の共鳴が必要だ。氷の精霊は私の"知性"、炎の精霊は私の"勇敢さ"に共鳴して召喚されている。彼が炎の精霊を召喚しようとしてもできないのは、単純に"勇敢さ"が足りていないのだ。今の彼は何のために戦っているのだろう?父親に認められたいから?とりあえず、炎の精霊とは相性が悪そうに見えた。
――この様子じゃ、永遠に炎の精霊は召喚できないでしょうね。
静かになったバルコニーに、夜風が吹いて、茶髪のストレートがふわりと揺れた。結局、大会でも、夜会でも、リアスは見つけられなかった。満月に照らされて、私の影が伸びている。名前を変えて、髪と瞳の色を変えても、影の形は変わらない。変えようと思っても、変えられないものがこの世にはある。断罪を回避して亡命に成功したけれど、私はちゃんともう一つの未来にたどり着けるのだろうか。
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