ねえ殿下、私に堕ちてきて~ポンコツと噂の廃嫡王子を籠絡したい

志熊みゅう

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私に堕ちて来て

5. 美しき兄妹愛?

ネモフィラ様が元の部隊に戻られるということで、別の治癒魔導士が助っ人としてやってきた。なんとマーガレット様のお兄様のバジル様だ。兄と言っても、実は従兄で嫡男としてルクレール家の養子になっている。マーガレット様と同じ黒髪で真面目そうな雰囲気だが顔面はよく整っている、控えめに言ってイケメンだ。隠れファンも多いらしい。ミカエル様の件ですっかり傷心のマーガレット様も、お兄様が来られて幾分か心が休まるだろう。

開戦後半年を過ぎたというのに戦況は相変わらずだ。絶えず王都の騎士団は援軍を送ってくれる。最近は予備兵に登録されている騎士たちにも声をかけ始めているという噂だ。隣国の現皇帝はかなり好戦的で野心的だ。ここで侵入を許せば、どんどん南に兵を進めてくることが目に見えている。

そんな状況でも女子テントの治癒魔導士たちは相変わらずで、また恋バナをしている。

「ねえねえ、マーガレット様。バジル様を紹介してくださいまし!」

「ずるい!私に紹介してくださいまし!」

「……兄はもう既婚者ですわ。」

「でも、跡継ぎが三年間できていない、離婚秒読みと聞きましたわ。それなら私にもチャンスがあるんじゃないかしら?」

マーガレット様が眉間にしわを寄せ、かなり嫌そうな顔をした。そりゃ、暗に親族の不倫を斡旋しろって言ってるんだから、怒るのも無理はない。

「もう兄の話はやめてください!」

ああ、怒らせてしまった。なんかバジル様の話になると、マーガレット様の殺気がすごい。もはやミカエル様の浮気なんて彼女にとってはどうでもよかったんじゃないかと思うほどに。


***
最近は殿下はプレッシャーのかかる業務が少ないためか、性欲も控えめである。ただ物資の配給が終わると、テントから少し離れたところに連れていかれ、結界と防音壁を張り、お忍びデートを楽しんでいる。

殿下と最近の戦況について話し合っていると、何者かの話声がした。話し声のする茂みに目をやると、黒髪の二人、バジル様とマーガレット様がいた。

「メグ、愛してる。ミカエルに変なことされていない?」

「ええ、だってあの人、地味な女に興味なくってよ。」

マーガレット様が、右側の三つ編みをつまみ上げた。

「本当のメグはこんなかわいいのに、言いつけ通りちゃんと地味な格好をしていて偉いね。まだあのポーションをあの男にあげているの?」

マーガレット様の眼鏡を外しながら、バジル様が言う。

「ええ、たまに。性的興奮を高めるタイプの媚薬が入っているとは露知らず、ありがたがって飲んでますわ。」

「メグは本当に性悪だね。そうやって娼館通いや浮気をけしかけてるんだろう?俺の知っているメグは小さくていつも後ろからお兄様って追いかけてくるかわいい子だったのに、いつの間にそんな悪女になったの?」

「お兄様こそ。お義姉様、結婚翌日に泣き腫らしてらしたわ。『君を愛することはない』なんていうから。」

「だって事実だろう。俺はずっとずっとメグが欲しかった。メグ以外いらない。」

「もうお兄様ったら。」

そう言うと二人は熱い抱擁をし接吻をした。衝撃の事実と目の前で繰り広げられる男女のまぐわいに唖然としてしまった。殿下も固まっている。つい二人してその光景に見入ってしまった。

「なんかすごいものを見てしまったな。」

「そうですわね…。治癒魔導士の皆さん、マーガレット様のこと、婚約者のミカエル様に浮気されてかわいそうって心配していたんですよ。」

「私は、あの娘の婚約者殿が気の毒だ。」

『魅了の呪い』で人生を棒に振った殿下らしい意見だった。
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