年下のユニコーン獣人が私の婚活の邪魔をしていたって本当ですか?!

志熊みゅう

文字の大きさ
9 / 35
第二章 求婚

3. 孤児院

 アルバ公爵家で、ロレンシオと話したあと、公爵と公爵夫人にも挨拶した。彼らは息子の恋を応援している、昔から知っているフロレンシアちゃんが、うちにお嫁に来てくれたらうれしいと、私の訪問を歓迎してくれた。正直少しは反対しているかと思ったのに――全くそれらしい気配はなかった。

 一応、答えは保留にさせてもらったし、その点は良かった。お土産と言って持たされた、大量の花に囲まれて、帰りの馬車に乗りこんだ。ロレンシオは、私のことを花の妖精かなにかだと思っているのだろうか。

「ロレンシオ様って……やっぱり獣人なんですよね」

「そうよ、それが?」

「あ、いえ、その……尻尾も耳も生えていないので。そういえば、獣人って夜はちょっと激しいって聞きますよね。」

 思わず、尻尾とか角を生やして、抱きついてくるロレンシオを想像した。

「――なんだか気分が悪くなってきたわ。」

「フロレンシア様、青ざめていますよ。大丈夫ですか!?」

 家に帰るとドレス脱いで、そのまま寝室のベッドに飛び込んだ。どうしても自分が置かれた状況が整理できない。感情もぐちゃぐちゃだ。その日は、気分が落ち着くというカモミールティーを淹れてもらった。

 翌日はむりやり気持ちを落ち着かせて、予定通り、孤児院に視察にいった。実はほそぼそだが、孤児院に童話や児童書を寄贈する慈善活動を行っているのだ。今日行く孤児院は初めて訪問する場所。予め手紙でやり取りした印象だと、シスターは教育熱心で子ども思いのやさしそうな女性だった。

「フロレンシア嬢、お初にお目にかかります。シスターのカンデにございます。」

「シスター・カンデ、スアレス子爵家のフロレンシアです。どうぞよろしく。」

 こじんまりとした孤児院だが、子どもたちは元気に外を駆け回っていた。カンデに孤児院の中を案内された。

「何もないところでごめんなさい。でも、少しでもお金があったら、子どもたちの教育に使ってやりたくて。」

 カンデは薄めの紅茶を出してくれた。聞くとカンデも孤児院出身なんだそう。孤児院のシスターが熱心に読み書きを教えてくれたおかげで、今の自分があると感謝していた。

「だから、私も次の子どもたちに、自分が受けた恩をつなげたくて。」

「そうだったんですね。素晴らしいお考えだと思います。」

 すると、部屋に8歳くらいの男の子が入ってきた。

「シスター・カンデ、このご本読んで。」

「アントニオ、今は大事な話をしているの。部屋にもどって。」

 アントニオと呼ばれた少年が、こちらを凝視して、顔をぽっと赤くした。

「このきれいなお姉さん、だれ?」

「スアレス子爵家のフロレンシア様よ。ご本をたくさん寄付してくださったの。」

「ねえねえ、フロレンシアさま、あとでこのご本読んで。」

 かわいらしい子だ。なんとなく、小さい頃のロレンシオを思い出した。

「分かったわ。大人の話が終わってからね。」

 カンデからこの孤児院の設立や、現在の財政状況などの説明を受けた。児童書とともに、少しでも運営の足しになればと小切手を切った。

 そのまま、孤児たちが生活する部屋に通された。先ほど話しかけてきたアントニオがうれしそうに駆け寄ってきた。

「フロレンシアさま~」

 アントニオが抱きついた瞬間、耳の後ろに、チクリと針で刺すような痛みが走った。

「痛っ……何これ。」

 気づくと、目の前にアントニオが倒れていた。急な出来事にカンデも気が動転している。

「アントニオ、どうしたの?」

 アントニオは気持ちよさそうに、ぐっすり眠っているように見えた。まだ幼いし、急に眠くなっちゃったのかな?カンデに抱きかかえられて、アントニオは寝室に連れていかれた。

「すみません、アントニオには持病はないはずなのですが。」

「いいえ、アントニオ君、お大事に。」

 まあちょっとしたトラブルもあったけど、概ねいい視察だった。満足して、馬車で家に戻ると、ブランカが血相を変えて駆け寄ってきた。

「大変です。これからロレンシオ様が今からお見えになると、先ほど早馬がありました。」

「え、なんでロレンシオが?昨日の今日で、いったい何の用……?」

 あわててドレスに着替えながら、私は呼吸を整えようと、深呼吸をした。
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない

木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。 生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。 ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。 その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。  義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。  それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。  こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…  セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。  短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——