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第二章 求婚
3. 孤児院
アルバ公爵家で、ロレンシオと話したあと、公爵と公爵夫人にも挨拶した。彼らは息子の恋を応援している、昔から知っているフロレンシアちゃんが、うちにお嫁に来てくれたらうれしいと、私の訪問を歓迎してくれた。正直少しは反対しているかと思ったのに――全くそれらしい気配はなかった。
一応、答えは保留にさせてもらったし、その点は良かった。お土産と言って持たされた、大量の花に囲まれて、帰りの馬車に乗りこんだ。ロレンシオは、私のことを花の妖精かなにかだと思っているのだろうか。
「ロレンシオ様って……やっぱり獣人なんですよね」
「そうよ、それが?」
「あ、いえ、その……尻尾も耳も生えていないので。そういえば、獣人って夜はちょっと激しいって聞きますよね。」
思わず、尻尾とか角を生やして、抱きついてくるロレンシオを想像した。
「――なんだか気分が悪くなってきたわ。」
「フロレンシア様、青ざめていますよ。大丈夫ですか!?」
家に帰るとドレス脱いで、そのまま寝室のベッドに飛び込んだ。どうしても自分が置かれた状況が整理できない。感情もぐちゃぐちゃだ。その日は、気分が落ち着くというカモミールティーを淹れてもらった。
翌日はむりやり気持ちを落ち着かせて、予定通り、孤児院に視察にいった。実はほそぼそだが、孤児院に童話や児童書を寄贈する慈善活動を行っているのだ。今日行く孤児院は初めて訪問する場所。予め手紙でやり取りした印象だと、シスターは教育熱心で子ども思いのやさしそうな女性だった。
「フロレンシア嬢、お初にお目にかかります。シスターのカンデにございます。」
「シスター・カンデ、スアレス子爵家のフロレンシアです。どうぞよろしく。」
こじんまりとした孤児院だが、子どもたちは元気に外を駆け回っていた。カンデに孤児院の中を案内された。
「何もないところでごめんなさい。でも、少しでもお金があったら、子どもたちの教育に使ってやりたくて。」
カンデは薄めの紅茶を出してくれた。聞くとカンデも孤児院出身なんだそう。孤児院のシスターが熱心に読み書きを教えてくれたおかげで、今の自分があると感謝していた。
「だから、私も次の子どもたちに、自分が受けた恩をつなげたくて。」
「そうだったんですね。素晴らしいお考えだと思います。」
すると、部屋に8歳くらいの男の子が入ってきた。
「シスター・カンデ、このご本読んで。」
「アントニオ、今は大事な話をしているの。部屋にもどって。」
アントニオと呼ばれた少年が、こちらを凝視して、顔をぽっと赤くした。
「このきれいなお姉さん、だれ?」
「スアレス子爵家のフロレンシア様よ。ご本をたくさん寄付してくださったの。」
「ねえねえ、フロレンシアさま、あとでこのご本読んで。」
かわいらしい子だ。なんとなく、小さい頃のロレンシオを思い出した。
「分かったわ。大人の話が終わってからね。」
カンデからこの孤児院の設立や、現在の財政状況などの説明を受けた。児童書とともに、少しでも運営の足しになればと小切手を切った。
そのまま、孤児たちが生活する部屋に通された。先ほど話しかけてきたアントニオがうれしそうに駆け寄ってきた。
「フロレンシアさま~」
アントニオが抱きついた瞬間、耳の後ろに、チクリと針で刺すような痛みが走った。
「痛っ……何これ。」
気づくと、目の前にアントニオが倒れていた。急な出来事にカンデも気が動転している。
「アントニオ、どうしたの?」
アントニオは気持ちよさそうに、ぐっすり眠っているように見えた。まだ幼いし、急に眠くなっちゃったのかな?カンデに抱きかかえられて、アントニオは寝室に連れていかれた。
「すみません、アントニオには持病はないはずなのですが。」
「いいえ、アントニオ君、お大事に。」
まあちょっとしたトラブルもあったけど、概ねいい視察だった。満足して、馬車で家に戻ると、ブランカが血相を変えて駆け寄ってきた。
「大変です。これからロレンシオ様が今からお見えになると、先ほど早馬がありました。」
「え、なんでロレンシオが?昨日の今日で、いったい何の用……?」
あわててドレスに着替えながら、私は呼吸を整えようと、深呼吸をした。
一応、答えは保留にさせてもらったし、その点は良かった。お土産と言って持たされた、大量の花に囲まれて、帰りの馬車に乗りこんだ。ロレンシオは、私のことを花の妖精かなにかだと思っているのだろうか。
「ロレンシオ様って……やっぱり獣人なんですよね」
「そうよ、それが?」
「あ、いえ、その……尻尾も耳も生えていないので。そういえば、獣人って夜はちょっと激しいって聞きますよね。」
思わず、尻尾とか角を生やして、抱きついてくるロレンシオを想像した。
「――なんだか気分が悪くなってきたわ。」
「フロレンシア様、青ざめていますよ。大丈夫ですか!?」
家に帰るとドレス脱いで、そのまま寝室のベッドに飛び込んだ。どうしても自分が置かれた状況が整理できない。感情もぐちゃぐちゃだ。その日は、気分が落ち着くというカモミールティーを淹れてもらった。
翌日はむりやり気持ちを落ち着かせて、予定通り、孤児院に視察にいった。実はほそぼそだが、孤児院に童話や児童書を寄贈する慈善活動を行っているのだ。今日行く孤児院は初めて訪問する場所。予め手紙でやり取りした印象だと、シスターは教育熱心で子ども思いのやさしそうな女性だった。
「フロレンシア嬢、お初にお目にかかります。シスターのカンデにございます。」
「シスター・カンデ、スアレス子爵家のフロレンシアです。どうぞよろしく。」
こじんまりとした孤児院だが、子どもたちは元気に外を駆け回っていた。カンデに孤児院の中を案内された。
「何もないところでごめんなさい。でも、少しでもお金があったら、子どもたちの教育に使ってやりたくて。」
カンデは薄めの紅茶を出してくれた。聞くとカンデも孤児院出身なんだそう。孤児院のシスターが熱心に読み書きを教えてくれたおかげで、今の自分があると感謝していた。
「だから、私も次の子どもたちに、自分が受けた恩をつなげたくて。」
「そうだったんですね。素晴らしいお考えだと思います。」
すると、部屋に8歳くらいの男の子が入ってきた。
「シスター・カンデ、このご本読んで。」
「アントニオ、今は大事な話をしているの。部屋にもどって。」
アントニオと呼ばれた少年が、こちらを凝視して、顔をぽっと赤くした。
「このきれいなお姉さん、だれ?」
「スアレス子爵家のフロレンシア様よ。ご本をたくさん寄付してくださったの。」
「ねえねえ、フロレンシアさま、あとでこのご本読んで。」
かわいらしい子だ。なんとなく、小さい頃のロレンシオを思い出した。
「分かったわ。大人の話が終わってからね。」
カンデからこの孤児院の設立や、現在の財政状況などの説明を受けた。児童書とともに、少しでも運営の足しになればと小切手を切った。
そのまま、孤児たちが生活する部屋に通された。先ほど話しかけてきたアントニオがうれしそうに駆け寄ってきた。
「フロレンシアさま~」
アントニオが抱きついた瞬間、耳の後ろに、チクリと針で刺すような痛みが走った。
「痛っ……何これ。」
気づくと、目の前にアントニオが倒れていた。急な出来事にカンデも気が動転している。
「アントニオ、どうしたの?」
アントニオは気持ちよさそうに、ぐっすり眠っているように見えた。まだ幼いし、急に眠くなっちゃったのかな?カンデに抱きかかえられて、アントニオは寝室に連れていかれた。
「すみません、アントニオには持病はないはずなのですが。」
「いいえ、アントニオ君、お大事に。」
まあちょっとしたトラブルもあったけど、概ねいい視察だった。満足して、馬車で家に戻ると、ブランカが血相を変えて駆け寄ってきた。
「大変です。これからロレンシオ様が今からお見えになると、先ほど早馬がありました。」
「え、なんでロレンシオが?昨日の今日で、いったい何の用……?」
あわててドレスに着替えながら、私は呼吸を整えようと、深呼吸をした。
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